生贄の村 その1
リゼ「カイルとバルト、昨日は結局どうしたの??」
カイル「野宿だよ。一文無しだったからな」
バルト「まあ暖かかったし、普通に寝れたな」
リゼ「襲われたりしなかった!?」
カイル「誰に!?」
バルト「こんな屈強な男2人を襲う奴がどこにいんだよ(笑)」
カイル「村の中だから、魔物もいないしな」
リゼ「まったくもう…自業自得とはいえ、少し心配したんだから…」
カイル「え!?リゼ、そんなに俺のこと心配してくれてたのか!?」
リゼ「べ、別に!?主にバルトを心配してただけだから!!カイルのことなんて、全然心配なんてしてないんだからね!!!」
カイル「ツンデレキターーーーーー!!」
リゼ「ツンデレじゃねーし!!」
スピカ「でも、本当に大丈夫だったんですか?」
バルト「いや、実は昨日の夜、カジノに寄って大勝ちしたのよ」
スピカ「え、ホントですか!?」
リゼ「じゃあお金をたくさん稼げたってこと!?」
バルト「いや、カイルが大負けしたせいで全部無くなった(笑)」
カイル「おい!!その言い方は語弊があるだろ!!」
バルト「ねえよ!!完全無欠の真実だよ!!」
リゼ「え…?また足を引っ張ったの…?カイル」
カイル「いや全く。バルトの話は全部噓!!」
リゼ「そんなわけないから、まあカイルが全部悪いのね」
バルト「その通り!!流石はリゼ」
カイル「まあ、実際そう(笑)」
リゼ・バルト「「開き直んな!!」」
スピカ「ギャンブルなんてまさしく時の運です。仕方ありませんよ。」
カイル「流石はスピカ!!話がわかる!!」
バルト「騙されちゃダメだスピカ!!コイツは遊びで俺の100万ゴールドを溶かしたクソ野郎だ!!」
カイル「うるせえぞバカバルト!!俺が競馬で得た100万ゴールドを溶かしたのはどこのどいつだ!!」
バルト「お前もあの1回以外負けてたじゃねえか!!」
カイル「お前が1000万ゴールドにしようとか言ったからだし!!」
バルト「お前のせい!!」
カイル「いーやお前のせい!!」
リゼ「ハイハイ…もうどーでもいいから、次の村に行くわよ…」
カイル「やっと森を抜けた!!」
バルト「ようやく次の村に着けたか…」
リゼ「なんだか、あそこに人だかりができてるわよ?」
カイル「なんだ??」
スピカ「見に行ってみましょう」
村長「ではこの娘を、エルザを、今回の生贄として捧げることに決定した!!」
エルザ「私、精一杯頑張ります…本当に、皆様今までありがとうございました…」
「ち、畜生!!また1人犠牲に…まだ若いのに…」
「誰か、この村をお救いください…!!」
「お願いだ!!もうやめてくれ…魔物たちよ!!」
スピカ「あの、どうしたんですか??」
村長「…あなた方、旅の者ですか?」
スピカ「はい?そうですけど…」
村長「では話すことなどありません。お帰りください」
カイル「ちょ、ちょっと!!」
村長「今すぐに、ここから立ち去ってください。それがあなた方の身のためです」
スピカ「どういうことですか??」
村長「…この村では、村が滅ぼされないように、毎日1人ずつ生贄として、命を捧げているのです…」
カイル「な、なんだって!?」
スピカ「それは本当ですか??」
村長「はい。もうかれこれ30人以上が生贄として死にました…」
バルト「なんてことだ…」
スピカ「一体、何があったんです??この村で」
村長「今から1ヶ月くらい前に、この村に突然巨大な魔物が現れ、私達を一瞬で蹴散らして降伏させました。そしてその魔物はあの山のふもとにとどまり、人間が大好物らしいので、1日1人ずつ生贄を寄越すように命令してきたのです…」
カイル「ひでえ…」
バルト「許せねえな…」
スピカ「なぜ逃げたりしないのですか??」
村長「逃げられないんです。この村は、常に魔物に囲まれているんです…」
リゼ「え!?噓でしょ!?」
バルト「だから、森の中でモンスターといっぱい遭遇したのか…」
村長「この村は、森に囲まれているため、外側からではあまりわからないのですが、あの森の中に巨大な魔物の手下たちが常に目を光らせているのです…」
カイル「だから、誰も村を出られないってわけか…」
村長「はい…」
カイル「許せねえ…今すぐ俺が全員叩き切ってやる!!」
バルト「落ち着け、カイル!!」
カイル「でもよお!!じっとしてられねえよ!!」
バルト「それよりも、敵の親玉を倒した方が早い」
カイル「え??」
バルト「どうせその辺の雑魚モンスターは、倒しても倒しても無限に出てくるだろう。それなら、元凶であるその巨大な魔物を真っ先に倒して、魔物たちの統率を乱してやろう!!」
リゼ「流石はバルト!!あったまいい!!カッコいい!!」
バルト「ふふん(ドヤ顔)」
カイル「イライライライライラ」
カイル「でもよお、どうやってその元凶のとこまで行くんだよ!!俺らがいない間に村が魔物に襲われたらどうすんだ!!」
バルト「それに関しても大丈夫だ。俺たちは生贄の護衛として、その巨大モンスターのところまで行く。流石に生贄が到着するまでに、村が襲われるとは考えにくい。そして、生贄を渡すと見せかけて、そのモンスターを倒す!!こういう作戦だ」
カイル「グヌヌヌヌヌ…………」
リゼ「流石はバルト!!あったまいい!!カッコいい!!」
バルト「ふふん(ドヤ顔)」
カイル「いやー、実は俺も同じこと考えてたんだよね!!」
リゼ・バルト「「噓つくな!!」」
スピカ「流石は勇者様!!とんでもない発想力!!」
カイル「えへへへへ(∀`*ゞ)」
バルト「いやいやいや!!こんなの絶対に嘘だって!!」
リゼ「そうよそうよ!!バルトの方が先に言ってたし!!」
スピカ「どーでもいいんですよ。誰が先に言ったかなんて」
リゼ「良くないわよ!!ねえ、バルト!!」
バルト「まあ、確かにどうでもいいな。そんな些細なことは」
リゼ「うん。あたしも実はそう思ってた」
カイル「お前らは、ホントに意見がコロコロ変わるな!!」
バルト「い、いや!?そ、そんなことねえけど…?(笑)」
リゼ「え!?そ、そうだったかしら…?(笑)」
バルト(あっぶねー、スピカが好きってバレてねえよな…?)
リゼ(あっぶな、バルトが好きってバレてないわよね…?)
スピカ「まあ、この女はどーしようもない、腐れ尻軽女ですから」
リゼ「いや、あたしに対してめっちゃ口悪!!」
カイル「そうだぞ、スピカ。流石にリゼが可哀想だ」
カイル(俺、ナイスフォロー!!)
スピカ「はい…ごめんなさい…」
スピカ(勇者様に怒られちゃった…萎えぽよ)
バルト「スピカ、大丈夫か!?元気出せ!!」
スピカ「ありがとうございます…」
バルト(俺、ナイスフォロー!!)
カイル「よっしゃあ!!じゃあ山の巨大モンスターを先に倒すぞ!!」
リゼ「ちょっと。リーダーぶらないでよ」
カイル「ええ!?」
スピカ「リーダーは勇者様です。黙りなさい」
村長「いや、いつまでこのやり取りしてるんですか!?」
スピカ「ゴホン。失礼しました…それで、いつ頃生贄はその山に運ばれるんですか??」
村長「正午です。1時間後ですね」
スピカ「それでは、私たちはその生贄の方と同行して、巨大モンスターのところまで行きます」
村長「はあ…どうか、お気をつけて…」
カイル「任せてくださいよ!!俺達なら、そんなモンスター、屁でもないです!!」
村長「そうですか…どうかよろしくお願いいたします…」
村長(不安しかないなあ…この人達で大丈夫だろうか…?)
~1時間後~
エルザ「では、行って参ります。皆さん」
「なんで、あんな若い子が…」
「しょうがないじゃない…身寄りが無いんだし…」
「あの子が名乗り出てくれたのよ…身寄りのない自分が適任だって…」
「きっと、きっと勇者様たちが助けてくれるわ…」
「ああ…神様、あの子たちをどうかお守りください…」
カイル「なあ。1つ聞いてもいいか?」
エルザ「はい。なんでしょう」
カイル「アンタの両親は、どこにいるんだ?姿が見えねえけど…」
エルザ「……山の魔物に食べられました。生贄となって」
カイル「………………」
リゼ「………………」
カイル「それは、すまなかった…そんなことを聞いてしまって…」
エルザ「いえ、いいんです。自分もすぐに向こうに行くので」
カイル「いや、アンタは行かせねえよ。向こうの世界には」
エルザ「いえ。無理しないでください。最悪、私は楯にでもなんでもなります」
リゼ「そんな…」
カイル「そんなこと、2度と言うな!!」
エルザ「!?!?」
カイル「断言する。アンタの母親や父親は、絶っ対にアンタに生きて欲しいって思ってる!!だから、絶対に生き残らなきゃダメだ!!俺達が絶対にアンタを守る!!」
エルザ「ありがとう…でも私は、もう身寄りもいないし、生き残ったとして、いいことなんて何も…」
カイル「いいや。あるぜ?」
エルザ「え??」
カイル「さっきの、村人たちの反応、見てなかったのか??あんなにもアンタに感謝してた。涙を流して、アンタの帰りを望んでた。そんな人達が、アンタが無事に戻ってきたとして、雑に扱ったりすると思うか…?」
エルザ「それは…」
スピカ「大丈夫です。私達からもちゃんと説得します」
リゼ「信じなさいよ。あたしたちを」
カイル「必ず、この村と、アンタの平和な暮らしを約束するぜ」
エルザ「みなさん…ホントに、ありがとうございます…」
カイル「だからアンタは、絶対に生き残ることだけを考えてくれ!!」
エルザ「はい!!皆さん、どうかよろしくお願いします!!」
カイル「おう!!任せとけ!!」
~続く~




