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盗まれたみたいです。

「ミラー様、これはどういうことですか」


「あいつだろう、あいつが盗んだに決まってる」


 私がミラー様に問うと苛立った様子のユーリが悪態を吐く。普段ならそんな彼を咎めるであろうミラー様も黙っている。つまりそういうことだ。

 みんな名前を口にはしないが、犯人はあの人しか居ないと分かっている。


「僕たちも先ほどこの状況を知ったばかりだから詳しいことは分からない。だがこの魔石の管理をし、魔石の力を使うことを許されていたのは神官長だ。彼自身が盗んだか、あるいは脅迫をされて本物の犯人に協力せざるを得なかったというのも可能性としてはある」


 ミラー様の話を聞くとフラフラとその場に座り込んでしまうララさんにリア様が寄り添う。ララさんの顔色は真っ青だ。

 ミラー様達は魔石がなくなっていることに気づいてすぐ私達に通信を入れてくれたらしい。魔石を持った神官長が私達に接触して害をなす可能性があったからだ。

 魔石がなくなっていることは、神官の1人が教えてくれたそうだ。いつも通り祈りに向かったらすでに魔石がなくなっており、緊急事態だと神官長を探しても見つからなかった為にミラー様のところまで知らせに来てくれたとのこと。


 「神殿の魔石が盗まれるなんて前代未聞のことだ。父上にも報告し、王城の魔石を確認してもらったがそちらは問題なかった」


 「そんな簡単に盗めてしまうものなんですか? どんな魔法が掛けられていたんですか」


 以前王城の魔石を鑑定した際に、持ち出し出来ないように様々な魔法を施されていると聞いていたのに疑問を持ち、ミラー様に問いかけてもすぐには答えてくれない。


 「それは今ここでは話すことが出来ない。国家機密に関することになるし、まだどうやって盗めたかも調査が必要だからね。ただ城のものと同じように様々な魔法が掛けられている。その代わり分かったことや話せる段階になればちゃんと伝えるようにするから」


 国家機密となれば答えられないのも仕方ない。ユーリもさすがにそこは踏み込めないと大人しくしている。


 「とにかく今は情報を集めましょう。私の鑑定のスキルで分かることがないか調べます。ユリ殿も協力してくださいね。そして王城の魔石が狙われないよう守りを強化してもらいませんとね」


 「はい、もちろんです!」


 「王城の守りに関しては信頼している者を通して出来る限りの強化を頼んでいるから安心してくれ」


 珍しくまともなテンションのリア様がまとめてくれて、今は調査をするのが先決だということに落ち着いた。私はリア様と一緒に鑑定のスキルで何か手がかりがないか確かめ、ミラー様は神官たちの聞き取り、ユーリはララさんを部屋まで送り届け、そのまま彼女を護衛することになった。

 神官長が犯人ならば、近い人物であったララさんも協力者じゃないのかという可能性も出てくる。そうではないと信じていても無実を証明するためにも調査は必要だ。また彼女の力を利用するために誘拐される恐れもある。その両方の可能性を踏まえ、ユーリが護衛をすることになったのだ。


 それぞれの役割を確認してみんなはその場を離れる。私はリア様と祈りの間に残り、鑑定を使って調査をする。しかし何を鑑定したら良いのやら。リア様に聞こうとしたが、とても真剣な目で祭壇を見つめていて話しかけにくい。どうしたものか……。


 

「彼のスキルは本当に祈りのスキルだったんでしょうか……」


「神官長のスキルですよね? 祈りのスキルがないと神官になれないと聞きましたが違うんですか?」


 おじいさんの時代は祈りのスキルがなくても神官になれたけど、あの神官長になってからは祈りのスキルがないと神官になれないと聞いたばかりだ。神官長だけが祈りのスキルがなくてもなれるということはないだろう。


「私の言い方が悪かったですね。彼は確かに祈りのスキルを持っていました。ただもしかしたら……。ユリ殿は神殿内では認識阻害の魔法をかけていましたよね」


「はい、リア様に言われてからはちゃんと毎回付与していました」


 正確にはララさんとおじいさんの所へお茶をしに行った時は認識阻害の魔法を解除していた。今後話を聞く可能性もあるのに私のことを認識できないのはまずいだろうと思って。しかしそれ以外の場面では必ず魔法が掛かっているはずだ。

 

「ではその魔法を掛けていたのに、あなただと認識して話しかけて来た人は居ますか?」


「ララさんは特殊なスキルだから認識阻害の魔法を弾くんだったよね? それ以外では居なかった……いや、そういえば神官長っ!」

 

 図書館の帰り道、神官長に話しかけられたじゃないか。何でその時に疑問に思わなかったんだろう。あの時は私のことを私だと認識出来なかったはずなのに。


「やはり気づかれていましたか」


「何か心当たりがあるんですか?」


 そう私が聞くと、無言で台座を見つめるリア様。

 そこに何かヒントがあるんだろう。


 「鑑定スキル発動」


 鑑定のスキルにはまだ慣れていないから自信がないが、台座を鑑定してみる。

 するとその台座の周りに赤色の空気みたいなものが漂っている。


 「この赤い空気は何?」


 そう呟くと、私のチート能力か鑑定のスキルかは分からないが、赤い空気の周りに文字が浮かぶ。()()()――。


 「魔法が無効化されている?」


 「そうです。恐らく彼は無効化のスキル持ちだったんでしょう。滅多に出現しないと言われているスキルです。無効化スキルの最上級はすべての魔法・スキルを弾くことが出来る――。恐らく私が彼をスキル鑑定した時にも、無効化のスキルが発動して、祈りのスキルのみ持っているという鑑定になってしまったということです」


 リア様の鑑定が無効化されたということなの? あのリア様が鑑定できないなんてことあるのか。しかも特殊スキルに目がないあのリア様が。


 「私の鑑定スキルは、最上級です。ただ私はご存じの通り魔力量がそこまで多いわけではありません。無効化スキルを使う相手の魔力量が多かった場合、私の鑑定スキルを打ち破ってしまう可能性があります。普段スキル鑑定に使う魔力は最低限に抑えているので。……私が鑑定出来なかったせいでこのような事態になってしまった」


 「そんな……リア様のせいじゃないですよ。でも私の認識阻害の魔法も無効化出来てたってことは魔力量は関係ないんじゃないですか? ほら、私の魔力量はおかしいですし負けるはずありません」


 普段のリア様では想像できないくらい落ち込んだ様子に励まそうとするが、私の考えもすぐに否定されてしまう。


 「ユリ殿は魔力量を考えて使ってないですよね? 認識阻害もほどほどに付与すれば良いと思っていたのではないですか? そうなると使用魔力量も少なかったため無効化スキルに破られたんだと思います」


 はい、その通りですとしか言いようがない。私はスキを使えるようになったが、魔力というものがいまいち分からない為、魔力量の調整というのは出来ていない。今回もリア様の言う通りそこまで危機感を持っていなかったから認識阻害の魔法も中途半端な魔力しか使っていない可能性の方が高い。


 「異世界チートでもかなわないことがあるんですね」


 今まで万能すぎてそんなこと考えなかった。でもよく考えたらずっとスキルを使って生きて来た人の方がスキルや魔力を上手く使いこなせるはずだ。今回のことで私はもっとスキルや魔力に対してちゃんと向き合っていかなきゃいけないと感じた。そうしないと本来の目的であるユーリや、この世界の未来を守ることが出来ない。

 二人でしんみりした空気になっていると、廊下の方から叫び声が聞こえた。


 「っ!?」


 「あれはララさんの声ですね。行きましょう」


 リア様に手を引かれて声のする方へ走っていく。

 廊下を突き進むと一番奥の部屋のドアが開いており、中を覗くとユーリとララさんが抱き合っていた。


 二人の姿を見て心臓がギュッと痛くなったが、一度目を瞑り深呼吸をし落ち着かせる。今は緊急事態だ。二人がただ仲良く抱き合っていたはずがない。先程もララさんだと思われるキャーっという叫び声が聞こえたじゃないか。


 「二人ともどうしたの。何があったの?」

 

 そう問いかけるとユーリが部屋の奥を指さす。ここはララさんに与えられている部屋のようで、今二人が抱き合っている所は台所やトイレなどがある生活スペースで、二人の後ろの扉がわずかに開いている。その扉の奥に何か異変があるらしい。


 「これは……」


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