今度こそ結婚する
「結婚してください。今すぐ」
さっきからこればかりを俺に言うのは佐伯さんだ。
6月7日が来る前に何としても結婚しろと。
「いいんですか、その俺らが結婚したらその、ジェラシーとか......」
「ははははは」
盛大に笑う佐伯さんに拍子抜けした。
「僕はもう一回か二回は死んでます。僕をまた生き返らせない為に、これはお願いです。」
というわけで、俺は結婚すること、結婚式を佐伯さんが来られる場所ですることを約束した。
☆
「ただいま 陽菜!ただいま〜、あれ 陽菜―――っ!」
居ない?陽菜が居ない......。
「洗濯物!ベランダ!」
ああ、びっくりした。もう俺は陽菜が居なくなる恐怖症候群にかかっているようだ。肌身離さずつけて歩きたいぐらいだ。
「陽菜、家事なんて俺がやるのに。」
「かずちゃんっ。かずちゃんっ。」
お.......久しぶりのチューだ。
「あれ、なんかかずちゃん 控えめ。一回別れたらそんな仕打ちするの?もっ かずちゃん」
かわいい......かわいいが......ここにある
俺は久しぶりに思い出した。
この感触 このときめき。
「陽菜、結婚式すぐしよう」
「え?そんなに急がなくても、もう花嫁は逃げませんよ。」
「うん.....佐伯さんに見せたいんだ。見たいって言ってくれた。5月中に見せたいんだ。」
急に大人びた表情で陽菜は「分かった」とだけ言った。
俺は準備した。
病院併設の協会と、ヘアメイクは健太郎、写真は陽菜の職場、陽菜は同じ職場に戻ったんだ。
☆
陽菜が毎日ここにいる。なんて幸せなんだ。
「陽菜っ!ただいま」
「かずちゃん!!おかえり」
陽菜をぎゅーっとする。
陽菜は俺の胸でキュッと目を閉じじっとしてる。
「今日はオムライスにしたよ」
オムライス.....佐伯さんが食べたいって言ったオムライス。もしかして、陽菜は佐伯さんにオムライス作ったことあるのか。
病室まで作って運んだとか。陽菜ならやりそうだ。
おいおい、なんで俺がヤキモチみたいな感情を抱くんだ.....。陽菜がいるだけで充分だ。未来があるだけで充分だ、あ 未来はある?
「陽菜 体は何も不調ない?術後の違和感とか」
「大丈夫。ちゃんと定期的に診てもらってるし。不調もないよ。そりゃ違和感はあるけど。」
「そっか。これからはなんでもいい。どんな些細なことでも言ってよ。絶対に何事も一人で決めない。約束!」
「うん。約束」
「指切りげんまん 嘘ついたら.....このチュー1000回するぞ 指切った」
俺はまた終わらないキスをした。
「んー、はいっ分かりました。分かりました。
かずちゃんのチューなら1万回でもいいけどねっ」
「じゃ、もう一回」
「かずちゃん 何考えてるの?」
「いや 陽菜がかわいいなと思ってただけ。嘘 いや 可愛いのは本当。陽菜がまた居なくなりそうで怖いんだ。俺ら2021年一緒にいるかな。絶対一緒に居ような。絶対隣で朝、目覚めような。」
「どうしたの?かずちゃん。大丈夫だよ......かずちゃん」
あ、俺は不安のあまり変なことを口走った。
「陽菜、結婚式お父さんは?」
「うん......神社でしろって。白無垢で」
「わあ、うちの親も言ってたよ。じゃ、2回しよう」
「え。」
「協会は俺らと佐伯さんと陽菜の職場のカメラマン、ヘアメイクは友達」
俺は人生で3回結婚式を挙げる男になるようだ。




