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俺が一番ゲスだ

「陽菜乃さんは別れたあと検査入院して、すぐ手術をしたはずです。早期だったそうですが、年齢が若いから全摘手術をしたと聞きました。」


「じゃ。今その病院に行けば陽菜が?」


「そうですね。」


「行きましょう。」


「分かりません」


「はい?何がですか」


「病院です。あの、どこの病院か。僕が出会ったのは術後に外来で定期検診に来てたときですから、大きな病院でとしか聞いてないです。しまったなぁ 聞いとけばよかった」


ほんとだよ。そこ、聞いといてよ.....。


 俺達は喫茶店で、がんセンターや可能性がある病院を調べた。が、途方に暮れる件数だった。


「2020 年にかずちゃんさんは戻りましたか?」


「はい。1年ずつ戻りました。」


「あ、じゃ陽菜乃さんは見つからなかったんですね。まだ」


「はい......情けない」


「いや 仕方ないですよ。僕も2020年に戻りましたが、かずちゃんさんを探すにも入院状態で動けず。今回の2019年はまだ動けるので」


「あ、大丈夫ですか?体は」


「はい。大丈夫です。2回死んだようなもんですから」


 そうか、佐伯さんは2021年、2020年からやり直してまた2021年、俺の誕生日ごとに死んでる。

死んだ日にタイムスリップするから感覚はどうか分からないが、2回死ぬまでに苦しんでいる......2回死に向き合ってきた......なんてことだ。


 亡くなってるという人に体調を伺う、脳みそがひねられるほど理解に苦しむ。


 この人が自分を差し置いて陽菜の為俺を探そうとしていたのに、

この俺は、ラッキーと言わんばかりにただ嫁候補を探し、クソババア嫁から逃げようとしただけだ。......ゲスなのは俺だ。


「あ、あのかずちゃんさん、大丈夫ですか」


「え はい」


「いや 泣いてますけど?大丈夫?かずちゃんさん。頑張りましょう。見つければいいんですから。......あなたには未来がある」


「はあ あなたはどうしてそんなにも、綺麗なんですか。どうしてそんな風に他人に譲れますか。簡単に陽菜を諦めた俺に腹立ちませんか?」


「腹は立ちます」


「ですよね......」


「あんなに愛されて」


 佐伯さん......もしこの人が健康で俺と同じ時代に陽菜と出会っていたら負けそうだ、そう思ってしまうくらいの人だ。


「腹立つから、何としてもかずちゃんさんには、陽菜乃さんと幸せになって欲しい。僕の分も」


「はい。......必ず」


「あ、2020年3月には僕入院しますから、時間は少ないです」


「佐伯さん、あなたを何回も苦しませるのは....」


「だったら、急ぎましょ」


 この潔さ、線が細く頼りない姿からは想像出来無い心の強さに俺は感服させられる。


「あっ、陽菜に出会ったのはいつですか?」

「2020年の春です」


 ああ、2020年の春、本来の俺は見合いして結婚に向かっていた頃、2回目はクソババアから逃げていた。俺のくそったれ。


「かずちゃんさんはどうやったら未来に戻るか分かりますか?」

「いえ......全く」


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