OL、商人になる
パウンドの街から脱出を遂げた後、私は交易都市のカルサに向かって歩いていた。
このクッキーを無限に生み出す能力の効力をちょこちょこ調べながら。
どうやら目視できる範囲にクッキーを雪崩のように湧き出すことができるらしい。
それは空中からでも、水中にも、壁の中にもクッキーが出せた。
壁の中にクッキーをめり込ませたのは正直いって悪かったと反省はしている。
アリに処分してもらったとしても、そこの部分だけ穴が残るだろう。
この能力の欠点として、襲ってくる動物をクッキーで圧殺しているとゴミクッキーが臭う。
今まで考えていなかったがクッキーを出した後勝手に消えるわけでもない。
そのまま残るのである。動物・魔物がメタボになりそうでコワイ。
無限にクッキーを放出しようと思えばできそうだ。盛大な自爆だが。
圧殺だけでは環境によろしくない事が判明したので、他の手段で身を守る術を考えなければならない。
だがしかし!私はそもそもこの力をもらったとしてもクッキーを生み出す力だ。
お腹いっぱい食べて世界平和よりも楽に世界の片隅でのんびり暮らしたいのが本音である。
魔物と戦ってハーレム♡という年齢は過ぎたのだ。
そんな事を考えていると周りがよく見える平原に着いた。
馬車が都市に向かっているのが見える。
海に面した交易都市カルサは商売がしやすいと評判の街だ。
そんな事を呑気に考えていると空を覆う影が上を横切った。
「ワイバーンだ!!!」
「この不届きもの!神殿への納め物よ!!」
ぶんぶん鉄球を振り回すシスターっぽい人が傍目で見える。
弓も出しているが流石に制空権を握る魔物、分が悪い。
囮になってもらっている今、ここで恩を売っておいて街に忍び込もう。
ワイバーンという名前の動物の薄い羽の膜の部分にクッキーを出した。
羽に突然が挿入され悶え、落下していくワイバーン。
落下しても生き汚いことにブレスを出そうとしている。
私の街へ侵入大作戦が危ない。そう判断した。
口内と鼻の中に巨大ブロッククッキーを出して窒息死させた。
これが一番早かったような気がする。
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「ありがとうございます。私は教会で働いております、レーナです。」
「これはどうもご丁寧に。私の名前はキクです。」
「貴方はニホンジンですか?ぜひ我が教会の庇護下に置かれませんか!?」
宗教人だとは思っていたが押し売りが強い、洗剤とかツボとか売りつけられそうだ。
この世界においてニホンジンというのはある意味ステータスらしい。
「いいえ、私は商売をしたいのでお断りします。」
「あら、ならまた新しい商品が市場を荒らすのですね!楽しみにしています。」
ニホンジンはそこまで珍しい存在ではないらしいことがわかったよ・・・。
レーナさん曰く、所属する教会では女神しているらしい。
その御使いがニホンジン。で、来訪者はもれなくチート的能力を何かしら保有している。
彼女の知り合いは身体能力の強化という地味能力だ。素晴らしい、地味だ。
無難な能力がほしかった。流石にクッキーを無限に生産する能力なんてネタ枠だと思う心底。
ニホンジンは特異能力を保有している、で領主はそんな能力持ちをなるべく確保しようとする。
一つは領地を盛り上げるため、武力の管理のため等だ。
そんなことをしていたら、ある領主がニホンジンの逆鱗にふれるような行為をしたらしい。
その結果この国の半分が焼けたとかなんとか。割と近年らしい。
やばい事件を防ぐべく手をあげたのが教会らしい。
その教会に属する以上、ニホンジンはある程度の協力をしてもらえれば自由だ。
「身の安全を保証するためには是非入会をして頂いたほうがいいですよ?」
「ある程度の協力ってところが引っかかるんですよね・・・。
あの、他に宗教とかないんですか?」
「ありません。他の宗教は邪教です。」
この人に話しかけたほうが間違いだった気がする。
手にもっている鉄球を見ていればわかる。弾圧していそうだ。
「あー私、商売がしたいのです。」
「お!本当かい、お嬢さん。教会に所属すると、その教会に縛られるからな。
異国に行きたいとか自由がほしいのなら商人ギルドに所属した方がいいぜ!」
「んもう!ジャックさん。こちらの勧誘をしているのですよ!」
ニホンジン恐るべし。おそらく領主・教会・商人等引く手は数多だろう。
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レーナさんにはお断りを入れてジャックさんの元に着いていった。
商売を始めるにはある程度手続きが必要らしい。
特にニホンジンなんて異邦のチート能力、知識をフル活用して市場を荒らしていくらしい。
ので縛る鎖がいるとかなんとか。
そんな話をギルド長のグレッグさんから話半分に聞いていた。
「あー、でお前何したいんだ?」
「街の隅っこでクッキーを売ってのんびり暮らしたいです。」
「・・・。いやもう少しなんかあるだろ。」
「私はクッキーを街の隅っこで売り、優雅に野菜を食べて寝て、
お金がたまり次第温泉が近くにある街に引っ越しをして、そこでお土産用クッキーを売ります。」
「頭焼き菓子でできているのかよ?」
グレッグさん竜じゃなくて流ジョークらしい。
現代語訳すると『頭スイーツかよ』かな?
「多くは望みません。ただのんびりしたいです。」
「こんなこと言っていますがね、グレッグさん。こいつワイバーンを落としましたからモガモガ。」
余計な発言をしてくれる男だ。無言で口内にパサパサクッキーをだしておいた。
「おい、ジャック何だって?」
「あらあら、ジャックさん。そんなにお腹が空いていたんですか?
それは置いておいて、これ私の商品です。」
無言でクッキーを差し出す。あっちから見たら、なにもない空間から取り出したように見えるだろう。
「なるほど、ニホンジン。良いだろう。
ジャック、案内してやれ。触らぬ神に祟りなしだ。」
最大OLクッキー火力は今の所約10載/cps
わかりやすく書くと1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000が
毎秒生産できる。
真面目に数えた事はないらしい。