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強制力

転入してから1ヶ月。私はだいたいリーゼと行動を共にし、たまに男爵令嬢や準男爵子息などと世間話やお茶をする、何処にでもいる有り触れた貴族になった。


今日は私の社交デビュー。といっても大勢の貴族が出席する社交会に、私は元からいましたよという顔をして紛れ込むのが今日の目標だ。


「リリア、とっても可愛いよ。」


「素敵なドレスをありがとうございます。お父様。」


お父さんが微笑む。リルーラ家は男爵家にしてはお金持ちらしい。資金だけなら伯爵を凌ぐ事もあるそうだ。この社交会はゲームでは重大イベントで、原作では、公にできない娘の社交会デビューに張り切った父が、とても上等な青いドレスをプレゼントしてくれる。


しかしそれはパーティの主催である悪役令嬢マリアンヌのドレスの色と被ってしまうのだ。大勢の貴族が出席する社交会では、多少色が被ってしまうのは仕方ないが、主催者とは被らないように皆、気を使う、暗黙の了解があるらしい。勿論マリアンヌの機嫌を損ね、ワイングラスから葡萄ジュースをぶっ掛けられる。


しかしこれはヒロインの自業自得だ。このイベントの前情報として、ヒロインはリーゼから主催者のドレスの色と同じドレスは着ない方が良いという事を教えられている。そして、父親に


「リリア、ドレスは何色が良い?」


と聞かれた時に


青いドレス


赤いドレス


ピンクのドレス


という選択肢が出るのだ。しかしこの選択肢、全く意味のないもので、例え赤いドレスを選んだとしても


でも、青いドレスも可愛いな…。


ピンクのドレスを選んでも


私、青色が1番好きなのよね…。


とこんな感じで青を選ぶまでループする。


だから私は一応、リーゼに本当にマリアンヌが青いドレスを着て来るのか確認し、お父さんにピンクのドレスを頼んだ。これでイベントを回避できる!


そう思ったのに…。


「ねぇそこの貴方、どういうつもりかしら。私を侮辱しているの?」


煌びやかな会場に似つかわしくない程に、顔を歪めたマリアンヌが私を睨む。その頭には私の髪飾りとお揃いの物が乗っかっていた。


リーゼが遠目で心配そうにこちらの様子を伺っている。周りの貴族達の視線も私達に集中していた。


………!


おい強制力!ふざけんなよ!覚えてないわ!原作のマリアンヌがどんな髪飾りをしていたかなんて。というか、普通貴族が使う仕立て屋は同じ物を作らないだろ!


「も、申し訳ございません!決してその様なつもりはなく…!今すぐに髪飾りを外して参ります!」


ヤバイ。


「いいえ。その必要はないわ。」


マリアンヌがワイングラスを振りかぶる。


イベントが進行する。


バシャッと音を立てて、紫の葡萄ジュースがピンクのドレスと網飾りを染め上げた。


「ほら、これでお揃いじゃなくなったでしょ?」


冷たく、私を見下すマリアンヌ。


視界の端からマリアンヌの婚約者、第一王子のハリス・フューデュラー殿下が近づいて来るのが分かった。


私がこのままここに止まれば、ハリス殿下が婚約者の行いを謝罪し、私に新しいドレスをプレゼントする。そういうイベントなのだ。


しかし私は原作のリリアみたいに庭園に忍び込んで、王子とフラグを立てていない。その時点で原作は崩壊している。


どうなるか分からない。


だから私はその場から逃げた。


「後日改めて謝罪に伺います。髪飾りを作った仕立て屋にも抗議致します。申し訳ありませんでした」


頭を深々と下げ、その場から立ち去った。



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