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獣の狩人  作者: 朝陽乃柚子
居場所
15/32

第13話

 イズミはフランを後ろに下げていた。フランには戦わせず、自分でこの子を守り切る、そう考えていたが、フランが前に進んでユズハの横に立った。


 「フラン、危ないよ!?下がってなさい!」


 フランは首を横に振る。


 「戦う?今のあなたにはまだ無理よ!」


 「のんびり内輪でおしゃべりかい?」


 声が聞こえた時にはすでに女がユズハの脇腹に蹴りを入れていた。体を引いて威力を殺す。この時、イズミはフランを庇える距離の外に出た。

 

 「まずは女、お前からだ。確実に潰す。それにガキは殺せないからな。」


 男がそう告げた時、その右手に強烈なアテンの波動を感じた。着地しばばかりのユズハに向けて凝縮したアテンを打つ。


 「「1人は遠距離タイプか。だけど波動が届くまでコンマ五秒はあるわね。なら余裕......」」


 そうユズハは計算するが。


 「させないよ」


 女が手で形を作る。


 「空間干渉!まずい!」


 ユズハが一瞬動けなくなる。そして波動がもうユズハに届くかという直前、突然何かに衝突し、ものすごい量の水蒸気が上がった。


 「フランだめ、手を出さないで!」


 フランは氷の壁を構成し波動を打ち消していた。少しでもユズハの役に立つために。フランは自分の出来ることをすると決意する。


 「こう邪魔されちゃ、ちょっとめんどくさいな。どうする。死なない程度に潰すか?」


 「いや、あっちは1人でいけるほどヤワなやつじゃない。ガキには気をつけつつ、女を一気に殺る。」


 「了解」



 その言葉を聞いたユズハはほんの少し安心した。要は自分が死なない限りフランへ攻撃される危険性はそれほど大きくない。だが油断もできない。ユズハの方も短期決戦が望ましいとの結論に達し、双方動き出す。


暴力の暴走(パワーストーム)


 そう唱えたユズハのアテン精製量が一気に膨れ上がる。そしてユズハの姿が消えたコンマ四秒後、突如として女の前に現れる。


 「なに!?」


 ユズハが超速で腹めがけて拳を放つ。女が両腕で腹を防御するが、その腕にユズハの拳がめり込んだ。


 「ぐっ......」


 女から、くぐもった声が聞こえる。


 「「防御したおかげで内臓破裂は避けられたが、左手前腕部の骨に軽いヒビが入ってる。コイツ、見た目とは真逆の力でゴリ押しするタイプの術者か」」

 

 そう考えていた時にはすでにユズハが次の攻撃に移っていた。胴体めがけた蹴りを放つ。女はかろうじて回避するが、そんなことは気にもせずユズハが蹴りと突きの雨を振らせていく。


 だがユズハが突然横へ飛び退いた。その場所に男の肘打ちが打ち込まれた。


 「こっちも忘れないでもらいたいな」


 「もちろん」


 ユズハがそういった瞬間、女が唱えた。


 千本の槍(サウザンドスピア)


 瞬間、女の周囲から数えきれないくらいの小型の槍が構成された。


 「「構成術も使えるのね...... 単細胞の私にとっては不利だわ」」


 そう束の間の思考を終えた時には、すでにナイフはユズハの元へ肉を切り裂きに来ていた。暴力の暴走(パワーストーム)によって身体能力が大幅に強化された体で、避けれるナイフは徹底して避け、避けられないものは手刀で方向を変えはたき落とす。


 「「それでも数が多い...... 」


 数本がユズハの体まで残り数10センチまで迫った時、突如として構成された氷がナイフの勢いを殺した。


 「「フランくん、援護は助かるけど、できれば手は出さないで...... 」」





 フランは恐怖に飲み込まれる寸前だった。訓練の時もいつか来る実践のことを考えていたし、イズミの助言も受け止めていた。だが実際こうして命のやり取りを目の当たりにすると、体が動かない。心臓の鼓動が壊れそうなくらい速い。



 だがフランは自分自身に誓っていた。奪われた家族を取り戻すために強くなると。取り柄のない自分を仲間として受け入れてくれた仲間に恩返しをすると。その思いが逃げ出しそうになる足を無理やり止めた。



 女は次々と槍を構成し、ユズハめがけて投擲していた。それに加えて男からの不意打ちへの対処。ユズハの限界が近づいていく。


 「!?」


 女が突然迫って来た氷の塊に一瞬思考を奪われながらも、比較的余裕でかわしていく。


 「ちょろちょろと目障りだね...... 」


 女がユズハに飛ばしていた槍を数本フランへ向けようと構えた時。突然視界が何かで覆われた。


 「なんだ!?」


 女は槍の投擲を止め、大きく回避行動をとった。


 「犬?それもこんなバカでかいのなんていたか?」


 マックスが死角から女に噛みつきにいったが、安易にかわされる。


 「あのガキのペットか?ほんとちょこまかと、うざいんだよ!!」


 女の構成された槍が5、6本フランへ投擲される。


 『フラン!!」


 ユズハが一瞬で距離を詰め突きを放つが、間に合わない。


 「「死......ぬ......?」」


 フランは直感でそう感じたが、本能がそれを許さなかった。氷の壁をピンポイントで六つ作り、ナイフを寸前の所で止めた。



 「あ......」


 フランは尻餅をつき、呼吸もできずにいた。死がすぐ側まで忍び寄って来た。あとコンマ1秒でも遅ければ、串刺しにされていた。その現実がフランの心をへし折る。


 「あのガキは当分無理だな。これでこっちに集中できる。」


 ユズハの攻撃をかわしながら、男は状況が好転したことを冷静に喜んだ。




 「「畜生、隙がないね。2人がかりでこれだよ。ほんとこの連中は化物揃いだね。でもなんであのガキがこいつらと一緒なんだ?まあどうでもいいね。早く女を始末して、ガキを届ければあたしらに大金が......」



 そう頭の隅で銭勘定をした女が、男にアイコンタクトを送る。男もそれに気づき、了解のサインを出した。




 フランは何もできずにいた。恐怖と絶望が体を支配し、考えることを拒否している。


 



 「「何をしてるの?」」


 声が聞こえた。


 「「誰!?」」


 フランは心の中で叫ぶ。


 「「覚えてない?思い出して、家族みんなで暮らしてた頃を」」


 そう声は答え、問いかける。


 


 


 「「大事な人が死んじゃうよ?」」


 「「でも僕は、何もできない」」


 「「たくさん訓練したでしょ?今がその時だよ」」


 「「あの人たち、強すぎるよ」


 「「じゃあこのまま何もしない?」」


 「「え...... 」」


 「「最初に優しくしてくれた人を見捨てるの?」」


 「「......」」


 「「他の人も殺されちゃうかもしれないよ?」」


 「「勇気を出して」」


 「「でも!!僕じゃ勝てない!」」


 「「私が手伝ってあげるから」」


 「「じゃあ君が助けてよ!!僕より強いんでしょ?」」


 「「それは違う」」


 「「え?......」」


 「「彼女を助けるのは君だよ」」


 「「だって僕じゃ勝てないよ!!」


 「「そんなことない。君は強い。誰よりも」」


 「「どうしてそんなことを言うの?」」


 「「ほんとのことだからだよ。だって君は......」」





 依然としてこう着状態は続いていた。だが二対一の状態での長期戦で、ユズハの体力はかなり消耗していた。


 「スタミナも底なしか。ほんと怪物だな。」


 男がそう言うと、ユズハがわざと避けやすくできるようにほんの少しだけ砲撃の角度を変えた。それにユズハが漠然した違和感を感じた時、背後からとてつもない衝撃を感じた。


 「が......ぁ...... 」


 女がユズハの避けた砲撃を空間転移で反射させ、真後方から直撃させていた。


 地面には二メートル程度のクレーターが出来、その中心にユズハが倒れていた。左手は千切れかかっていて、大量に出血していた。


 「やっとくたばってくれたかい。割に合わない仕事だね。」


 「そうだな、あとはガキを...... 」



 そう言って二人は後ろを振り向く。


 だがそこにいる少年は、先程と一緒のようで、どこか違っていた。


 


 「......」

 


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