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普通…の恋が…したい











現実ってのは…小説よりも奇なり…。








「旦那様、こちらが昨日おっしゃっていた領地の前年度の土地面積における収穫の割合です。私なりに5年分遡った改良改善案を2枚ほどにまとめてみましたのでお時間ありましたらお目通し願います。それから、フロレスタから届いた報告書ですが、例のごとくなので清書しておきました。5時からの会合の資料は玄関のいつもの引き出しに入れてあります。これはまた直前になりましたらお出し致します。」






すらすらすら、と一方的に語る私に目の前の男は「了解した」と小さく返事を返すだけだった。


(幸せだ…)


そう、学院を去ってからかれこれ半年。

私の新しい日々は当初から想像もできないくらいに充実したものとなっていた。


(これぞ夢と希望に溢れる“職場”…!)


私は彼の部屋を去り自分に与えられた隣の部屋へと移動する。

中には女性の部屋とは思えないどうみてもただの書斎といった感じの家具しかない。

寝室が別とはいえ、恐らく初めて踏み入れる人間には理解できないに違いない。




私は半年前に彼と契約を交わした。

それはもちろん結婚という名の契約。

彼と初めて会った日に渡された契約書にはこう書かれていた。



『不必要な介入は一切認めない』

『子供の必要性が生まれた時は追って連絡する』

『子供さえ作らなければ愛人の有無は問わない』

『使えないと判断すれば契約不履行として離婚』



つまり、プライベートは一切触れることなく

、必要に迫られれば子作りはやむを得ないが当面は作るつもりはない。

そして何より、恋人を作ってもいい!




若干理想とは違うが、私が望んでいたことが全て叶うというここは奇跡の嫁ぎ先だった。

旦那様が契約書を差し出しながら初めて私に言った言葉は忘れもしない。

低めの威圧感ある声。

「馴れ合うつもりはない。」

「良かった、私もです。」

これが初会話。

自己紹介をする前にこれである。

契約書を読んだ私が気に入らないわけもなく、契約書にサインをした。




結婚式も何もない。

ただ紙切れにサインをしただけの夫婦。

最初は何をしていいかわからずとりあえずの習慣でこの屋敷の蔵書を漁り勉学に励んでいたが、ある日旦那様の部下の“ちょっとした手伝い”から密かに事務仕事をはじめ、それが2ヶ月目になる頃にとうとう私が事務仕事をしているのがバレた。

不必要な介入にあたるのではと内心びくびくしていたが、意外にも旦那様は「勝手にしろ」とおっしゃったのでそれ以来バリバリお手伝いしている。





そんなこんなで今。

私は旦那様の補佐に日々を捧げ、いつか会う未来の恋人との出会いを待ちわびているという状況なのだ。




実に良い。

非現実的な結婚生活ではあるけれど、非生産的な日々なんかじゃない。

頼られてるとは思わないが、多少使える人間としてぐらいには認識していただいてるんじゃないかなと思う。




旦那様の一匹オオカミぶりにも慣れたし。

もう少し仕事に余裕ができたら社交界に出ても良いか聞いてみようと思う。

もちろんプライベートな時間に当たるので彼は来ないだろうし、こっちに文句も言わないだろうけど一応許可は貰わないとね。






あー、楽しい。

仕事してるって素晴らしい。











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