普通を求めて
貴族で、女学校で、自分で言うのもそこそこの見た目。
卒業できる気がしない。
今通うこの女学校を無事卒業できれば私も憧れの職に就くことができる…けれどもここではそうそう上手く卒業させてはもらえない。
「憂鬱だわ…」
「あらまたそんなお化粧して!!そんなに嫌がらなくったって良いじゃありませんこと?」
「だって今日は“参観日”よ?」
「だから気合い入れるんじゃない!」
「私は働く女性になりたいのよ…」
「それで自由恋愛を勝ち取りたいのでしょう?贅沢というものですわ…貴族として美しく生まれた者の定めはそうそう変えられるものではありませんことよ?」
同室のマリナがぶちぶちとお説教を垂れ流しているのをため息ひとつで受け流す。
だって嫌なものは嫌なのだ。
この学院には月に一度“参観日”がある。
それはなにも親のためではなく、地元有力者や貴族、中には王族の方のためのもの。
貴族の若い女の子を品定めしては縁談を取り付け、言い方を悪くすれば学院から連れ去っていくシステムなのだ。
中には参観日目的の娘たちもたくさんいるけれど、私は違う。
働きたい。夫に養われてかこわれるだけの人生などなんの魅力も感じない。
なにより、品物のように選ばれるだけの縁談なんて恋も愛もあったものではないと思っている。
だから私は決まってこの日は“化粧”をする。
そばかすを散らし、ファンデーションを小さく固めたものを顔に貼って吹き出物っぽくし、眉は太すぎるほど太く描く。そして古臭いデザインのメガネをかければ完璧。
真面目で、勤勉そうではあるけれどとうてい縁談を持ちかけたい娘には見えない。
これであとは目立つことなく真面目に授業を受ければ良いのだ。
うん。参観日の日はね。
不意打ちに来られたらまずいんだけどね。でも流石にこのメイクを毎日したいわけはない。
「さて、今日を乗り切ればテストだし、頑張んなきゃね。」
学年が上がるにつれて一人、また一人と減っていくクラスメイト。
卒業まで残るのは参観日で選ばれなかったからだとへこむ生徒もいるけれど私にはその気持ちはわからない。
リハビリがてらです。