序文
ある国に、カエルがやってきました。
カエルは井の中の蛙でした。井戸の中で生まれ、海へ行き、親切な鳥の背に乗って空を見ました。
とある国で鳥と分かれ、今日はとある森を旅していました。
「ここはキレイな森だなぁ」
ピョンピョンと跳ねて、カエルは見たことがない ひし形の葉っぱの木々を見て ごまんえつ です。
その内、カエルはお腹が空いていることに気が付きましたが、井戸の中で食べていたような苔は見当たりません。
「おや、あれはなんだろう?」
その内、カエルは自分の行く先に 他の木より一回り大きい星型の葉っぱを付けた木を見つけました。
その木には サクランボより大きくリンゴより小さい 黄色くておいしそうな木の実をつけていました。
近寄ってみると、そのとなりにちょこんと小人が座っていました。
小人はカエルより少し大きいくらいの背丈に、ボロボロの毛皮の服を着ていて、旅をしているカエルより疲れている様子でした。
「こんにちは、僕は井戸から来たカエルです。この木はあなたの木ですか?」
丁寧に親しげに話しかけるカエルに、小人はにっこりと笑いました。
「こんにちは。残念だけどこの木はチューズの木だよ、カエルくん、木の実が食べたかったの?」
「はい。とてもお腹が空いているのでひとつ頂きたかったのです。そしてあなたはとても疲れているようですが、僕に何かお手伝いできることがありますか?」
「君はとても優しいカエルくんのようだね。それなら少しばかり、僕の話を聞いてくれるかい?」
「それは願ってもない。僕は他の人の話を聞くのが、とても好きなんです。なにせずっと井戸ではひとりっきりでしたから」
それはよかった。と小人は草むらの中から、キノコと水筒を持ってきました。
そのキノコは少ししなびた灰色のキノコでした。
「良ければどうぞ。木の実よりは美味しくないとは思うけど、クッションにはなると思うよ」
「それはどうも、すみません。ごしょうばんにあずからせてもらいます」
カエルはキノコを割いて食べてみました。苦くて臭くてえぐみが有りましたが、カエルくんは平気です。
井戸の中の苔より味が濃いな、と思いながら、もう一切れキノコを口に入れました。
「ごめんね、そんなのしかないんだ、この森には」
「いえいえ。充分です。それよりも、早くあなたのお話というのを聞かせて下さい……えーっと、何さんでしたか?」
「僕? 僕はサタ。土曜日生まれのサタ……そう、一番上の兄弟は、日曜日の生まれだったんだ」