3話目
「あ、あの!ケーキ代はいただきましたよ?」
僕は少し焦って声を掛けると、彼は後ろにいるミカちゃんを見遣り、軽く口元を緩めた。
「・・・俺のオススメだから食べてみて?」
彼はどうやらミカちゃんがお母さんに他のにしなさいと言われ、イチゴのショートケーキを選ぶのを躊躇していたらしい。そのことに気付いた彼は代わりに買ってあげようとしているみたいだった。
ミカちゃんのお母さんはあたふたしながら、「だ、大丈夫ですから。」と言いながら、彼を見ていた。
「・・・いや、ここのイチゴのショートケーキが好きな仲間が増えるのは嬉しいから。」
彼はやはりボソボソとした感じで言いながら、結局そのまま出て行ってしまった。
「あ、ありがとう!イチゴのお兄ちゃん!」
ミカちゃんは顔を真っ赤にしてお礼を言うと、彼が一瞬振り返って小さく笑みを浮かべた。僕はそれを見てミカちゃんのが移ったように真っ赤になったのが分かり、頬に手を当てては、・・・やることがイケメン!と内心叫んだ。
ミカちゃんは僕と同じように両頬に手を当てては「お母さん!さっきのイチゴのお兄ちゃんカッコいいね!」と興奮した様に言ってはぴょんぴょんと飛び跳ねていた。お母さんの方は「そうね。」と返してはミカちゃんへ笑顔を向けていた。
「・・・えっと、ではイチゴのショートケーキの他はどうしますか?」
僕はとりあえず声を掛けようとそう声を掛けると、お母さんはショーケースへ視線を落とし、「シュークリームを二つお願いします。」と指をさして言った。
僕は「ハーイ。」と軽く返事をして箱詰めをし始めた。
「あの、さっきの方は良くこちらにいらっしゃるんですか?」
「あ、はい。毎日イチゴのショートケーキを2つ買われるんです。」
僕は正直に彼の事を伝えると、「余程、ここのイチゴのショートケーキが美味しくてお好きなんですね。」と、ふふっと上品な笑みを零した。
「では、明日のイチゴのショートケーキを彼へ2つお願いします。1ついただいてしまってすみません、ありがとうございましたと伝えてもらっても良いですか?」
お母さんは更に笑みを深めながら、そう言ってはキャッシュトレーに2000円を置いた。
「はい、かしこまりました。」
僕は嬉しくなって満面の笑みを浮かべながら2000円を受け取ると、おつりを渡した。
ケーキの袋を持ってカウンターの外へ出ては袋をお渡しした。すると、「ミカが持つ!」と手を伸ばしていたので「気を付けてね。」と一声かけて渡すと、「うん!ケーキのお兄ちゃん、また明日ね!」と笑顔で帰っていった。
僕は俺を見送りながら、小さく笑みを浮かべていた。そして、また明日の17時30分が待ち遠しくなった。
・・・今日以上に明日が待ち遠しい、明日は試作品の感想を聞いて先ほどの事も話そう。そしていつも以上に話をしよう、と思った。
そして、僕の楽しみがいつか君の楽しみなれば良い、と何度もそう思う。