4話目
リュリュが出て行った後、そっと音を立てないように寝ているリュシへ歩み寄る。
すると、苦しげに息を吐くリュシが眉間に皺を寄せたまま、「テ、ン・・・。」と呟くのを聞いた。
「リュシアン・・・。」
返事の意も込めて名前を呼ぶと、リュシは重たい瞼をゆっくりと開けた。そして、安心したように緩い笑みを浮かべて見せた。それから、聞こえたのは優しげに、でもしっかりとした声音で「テン。」と呼ぶ声だった。
「・・・どうした?帰る準備したら、運ぼうと思ったが、歩けそうか?」
少し誤魔化す様に早口でそう言うと、リュシは少し体を起こして、何か言いたそうにじっとこちらを見つめた。
「・・・まだキツイよな?寝てろよ。」
見つめたまま何も言葉を発しないリュシに、小さく苦笑を零しつつ、髪を梳かす様に撫でてやると、「テン。」と再度、名前を呼ばれた。・・・言うまで待つか、と黙って見遣る。
「あ・・・えっと、できれば・・・お、おひ・・・ッ。」
普段、はっきりと物を言うリュシにしては珍しいな、と思いつつ、下を向いたリュシにもしかして、まだキツイか?と思い、「おい、大丈夫か・・・?」と声を掛け、顔を覗き込んだ。
すると、頬を真っ赤に染め、瞳を潤ませていた。・・・熱が上がったか?と額へ手を伸ばすが、触れる前にその手を掴まれてしまった。
は?と思うのと同時に、手を引かれ、何故か抱き締められていた。
「どうしたよ?」
「・・・顔、見ない方が言いやすい、から。」
「・・・そうか。」
何を?とも思ったが、それは口にせず、リュシが話すのを待とうと、リュシの肩に顎を乗せた。
「・・・・・・いや、そのー・・・、帰る時、歩け、ないから・・・、運んで、くれる、か・・・?」
ボソボソと告げるリュシの言葉を理解すると同時に、肩をガッと少し強く掴み、少し離して、先ほどのように覗き込む。すると、頬とさらに耳まで真っ赤になっているのを確認すると、嗚呼、さっきのは恥かしかったのか、と納得した。
リュシのそんな様子に、クスクスと小さく笑みを零しつつ、本当に甘え下手だな、と内心呟くものの、まぁ、そこが可愛いところなんだが、と誰に言うでもなく、心の中で呟いた。
「勿論。」
そう一言、返事をすると、そわそわとしていたリュシは恥ずかしそうに、そして、嬉しそうにフワリと柔らかな笑みを零した。




