3話目
外に出て行ったといっても、扉のすぐそばにいるだろうと内心呟き、「よいしょ。」と今日一日の疲れの溜まった重たい身体を引き上げると、ドアに向かって、焦った様な声音で「リュシ兄さんッ!」と声を上げてみせた。
すると、ノックもせず、ダンッと勢いよくドアが開いた。案の定、焦った様子のテンがこちらを見ている。あまり・・・いや、ほとんど見ないテンの表情に、思わず、ブッと吹き出してしまった。
俺のそんな様子に、テンは靴を脱ぎ、それを俺に向かって投げ付けてきた。それをケラケラと馬鹿にした様に笑いながら、靴をキャッチすると、「残念でした。」とニヤリと笑みを見せる。
「テーン?・・・兄さんは俺のこと呼んでたかもしれないけどさー・・・。
その前に、お前の名前、呼んでなかったか?」
「あ?それは確認する為であって、俺を呼んでた訳じゃ・・・。」
「でも、呼んでただろ?それにお前を答えてたろ?兄さんはそれで良かったんだよ。
お前にワガママ言いたかっただけだって。・・・ってか、今誰呼んでるか、聞いてみろよ。」
俺はムスリと少し拗ねた様子のテンを見遣り、部屋を出る為に靴を履けば、つっ立ったままのテンの方を軽く叩き、言おうとした言葉を飲み込み、「じゃ、後はよろしく。俺、一旦仕事に戻って帰るから。」と伝えて、兄さんの控室を後にした。
控室の外には、デフォルトになっている笑顔を貼り付けたソラが俺を待っていたらしく、「帰りましょうか。」と声を掛けてきた。
「嗚呼、でも、梧たちに挨拶してからな。」
そう返事をしつつ、「疲れた。」と呟き、はぁ、と小さく溜息を零す。さすがに一週間ぶっ通しで働き続け、疲れの溜まった身体に一度、仕事が終わったと認識させた後では、緊張の糸が切れてしまい、余計に重く感じてしまうらしい。そんな俺の様子に、小さくクスリと笑みを零すソラをじろりの睨み付ける。
「お疲れ様です。・・・お互い、面倒な兄を持つと大変ですね。」
「嗚呼・・・ってお前は何もしてねェだろ?
ほとんどの面倒事は、俺に降りかかってくるんだ。」
「俺より、リュリュの方が気付くのが早いから、しょうがないんじゃないですか?」
更にクスクスと余裕の笑みを零すソラに、「お前は気付いても言わねェだけだろ。」とボソリと不機嫌です、といった感じの声音で呟くと、またしても溜息を零れた。
重い身体を引きずり、梧たちの控室を目指して歩き始めた。




