2話目
撮影が終わると、倒れてしまったリュシを楽屋へ運び、様子を見ることにした。
しばらくして、苦しげに息をしながらリュシは「テン、リュリュは・・・?」とだけ聞き、「まだだ。」と返すと、ポロポロと涙を零しては眠りにつく、というのを繰り返していた。
リディ・・・リュリュが仕事を終えるのは、二十一時を過ぎるだろう、と内心溜息を吐きながら、腕時計に目を落とす。先ほど、ソラ宛てにスタッフを通じて連絡を取ったが、リュリュはすぐに来れるだろうか、と溜息が零れた。
すると、『ココンッ』と短くノック音の後、こちらの返事も待たず、ドアが開く。走ってきてくれたのであろうリュリュが少し息を乱し、探す様に視線を室内中に巡らせていた。
「テン、兄さんが倒れたって聞いて・・・。」
リュリュは靴を脱ぎ、足音を立てない様に入るが、すでにうるさく響いたノック音とドアの開閉する音を立てているのだから、意味ないだろう、と内心ツッコミながら、「こっちで寝てる。」と小さくなって寝ているリュシを指す。
リュリュは小さく笑みを零して、リュシの眠っている傍に腰を下ろす。
それを見て、良かったとホッとした気持ちが広がるが、チクリと胸の奥が痛んだ気がしたが、それに気付かないフリをして、音を立てずに部屋を出た。
―――テンの出ていくのを聞くと、小さく苦笑が零れた。馬鹿だな、と思うが、どっちもどっちだな、と呆れた様に心の中で呟く。
泣いていたのだろう、赤くなっている目元を指先でなぞり、涙の流れた跡を指でたどる。兄さんはそれにピクリと反応を見せ、ゆっくりと目を開けた。
小さく、掠れた声で「リュリュ・・・。」と呼ぶ兄に小さく笑みを零しながら、髪を梳かす様に撫で、安心させてやる。
「倒れたってテンから連絡があって来たんだ。・・・熱、あるな。それでキツイんだよ。
もう少し寝てろ、その間に連れて帰ってやるから、な?」
できるだけ優しく、柔らかな声音で話しかける。兄さんは安心した様に「うん…。」と返事を一つすると、目を瞑った。あー・・・、水分取らせれば良かった、と内心後悔しながら、トントンと子供を寝かしつけるようにリズムを取ってやる。
「俺を呼んでる・・・ねェ?」
兄の安心したような表情、「俺が来たからってのもあるけど、それだけかねェ。」と呟きながら、少し苦しげに息を吐く兄さんに、小さく苦笑を零す。ポンポンと頭を撫でると、熱い額に口付けを落とす。
「・・・やっぱり、居て欲しいのは俺じゃねェじゃん?」
苦しげな息を吐きつつ、うわ言の様に名前を呼び続ける兄さんに、クスクスと笑みが零れた。・・・聞こえたらいいけど、と思い、耳元でコソコソと話す。
すると、ピクリと反応した兄さんに大丈夫そうだ、と更に笑みを零れた。




