3話目
「別にー?しゅんの目の前に居る可愛らしいウサギちゃんが泣かない様に見張っておこうかなーって思ったんだよー。」
相変わらず、読みにくい笑顔を浮かべる悠斗の言葉に眉間に皺を寄せつつ、「泣かせるかよ。」とボソリと口から無意識に出た。しまったと思ったが、それを聞き逃さず、面白いことを聞いたという様にニヤリと嫌な笑みを浮かべる明に苛々とした感情が心の内に募っていくのを感じながら、それらを無視するように視界から消した。
「都先輩、で、どうなんでしょうか?」
先ほどまであたふたとしつつ、真っ赤にしていた速水が無表情に戻ってしまったのを残念に感じながら、速水をじっと見つめる。
「嗚呼、とりあえず、仮ってことなら付き合ってやってもいい。」
普通であれば、こんな上から目線の発言はしないのだが、こいつがどんな表情を見せるのか、少し楽しみにしながら、さりげなく見つめる。すると、答えを聞いた速水は一瞬、固まりつつ、凝視をしては俺から視線を外すことなく、口をパクパクとまるで金魚のごとく動かし、間抜け面を晒していた。一気に崩れた表情を見つめながら、やはり見飽きないなと内心、小さな笑みを零した。速水の頬へ手を伸ばしかけたが、思い止まる。
「・・・おい、お前らはいつ気をきかせていなくなるんだよ?」
こいつの少し恥ずかしそうに赤く染まった顔を見せまいと後ろへ隠す様に手をやると、速水は特に抵抗することなく、俺の後ろへ下がった。少し離れたところにいる邪魔者である2人へ面倒そうに声を掛けた。
「んん?そんな必要あるのー?」
キョトンとした表情を見せる悠斗からそんな言葉が聞こえた。
『・・・は?なんで分からねぇんだ。』
はぁ、とため息を零しながら、ジロリと明へ視線をやると、俺の話なんざ聞く気がないといった感じで欠伸を零していた。・・・興味がないなら、どっかに行けよ、と内心文句を言いながら、更に深いため息を零した。
そんな俺らの様子を後ろから窺っていたらしい速水は「すみません。」と俺だけに聞こえる様に小声で言いながら、俺の手首を掴み、強く引っ張りながら走り出した。そんな行動をとるとは思っていなかった為、引っ張られるがまま、呼び出されていた屋上から2人で飛び出した。
「ちょ、おい!速水、止まれって!」
走り続ける速水の腕を思いっきりこちらへ引き、走るのを無理やり止めると、そのまま胸へ抱き込んだ。こいつはあまり運動をしないんだろうか、先ほど少し走っただけにも関わらず、息を切らしていた。
速水はパッと顔を上げ、自分の状況を把握したのだろう、じっと俺を見つめた後、先ほど以上に真っ赤になって固まってしまった。
「速水?」
固まっている速水を見ながら、わざと顔を近づけては頬に手を滑らせると、茹蛸の様に真っ赤になった。その様子に湯気でも出るんじゃないかと思うほどで少し笑えた。
「えっと、えっと・・・宜しくお願いします。仮でも良いので、付き合って下さい!・・・いつか、本当の恋人にしてもらえるように頑張りますからっ!!」
「嗚呼、楽しみしとく。」
真っ赤なまま必死な顔で言うこいつが可愛くて可愛くて仕方がない、と感じる俺はもうすでに速水に落ちてるのかもしれないな、と内心、苦笑を零しながらも嬉しさが込み上げてくる。
俺の返答に嬉しそうに笑みを浮かべている速水を見ていると、心に小さく愛しいという気持ちが広がった。
『さて、これからどうしたものか・・・。』
速水とのこれからに思いを馳せると、自然と笑みが零れた。
【END】
あけましておめでとうございます。(もうすでに明けて5日は経っていますが・・・)
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
至らない部分が多々あると思いますが、優しい目で見ていただけると嬉しいです・・・。
今回の短編は自分で書きながら、設定いらなかったな、と思いましたまる
狗月




