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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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海中迷宮

 俺たちが海を楽しんでいると青田が迷宮から戻ってきた。

「お待たせ♪ 迷宮の入口は水深10メートルってところかな♪」

 実は、俺……泳げないんだよな……。今さら言えない……。沈むだけでもいいかな?

「迷宮の中に入ると、海水は膝の辺りで、きちんと空気があるから呼吸ができるよ♪」

 純粋に空気があるのは助かる……。

「でも部屋によっては腰まであるから戦いにくいだろうね……」

 なんだその……戦いにくいだろうね? つまり、この男、全然戦っていないのか……。

 炭鉱の町の迷宮も敵を威圧していたらしいから。レベル威圧は海中でも大差ないのか?

「迷宮化はどうだった?」

「迷宮の周りにはモンスターがたくさんいたね♪ 今は陸に適応できていないから安全だけど、女王に報告した方がいいかも♪」

 炭鉱の町の時は約1000体。今回も同じぐらいだと思った方がいいか……。

「それって迷宮に入ろうとしたら襲って来ないのか?」

「僕の時は襲って来なかったけど、僕の奴隷を貸すかい♪」

 ワニ子さんも威嚇してたのか? 水の中では能力上昇とかありそうだ……。

「入るときだけ頼む」

「だって♪」

 青田がワニ子さんの方を向いて言う。

「かしこまりました」


「私は泳ぎが苦手なので……、植林や種まきをしていてもいいでしょうか?」

 キーリアが棄権とは珍しい。さっきまで海で遊んでいたのに……。実は海水を調査していただけか?

「いいぞ。サソリさんも海が苦手のようだから、護衛として付けておく」

「ありがとうございます」

「国に戻るついでに、さっきの事を女王に伝言を頼む」

「わかりました。近くの兵士か、ナミタリア様にお伝えしておきます」

 他にスライム軍団、アリ君、ウリボー君と海が苦手なモンスターが他にもたくさんいた。それ以外にも、口の位置が最低でも青田の腰よりも上の高さにないものは呼吸ができなくなる恐れがあるので、今回は居残りだ。


 できれば、俺も残りたい……。


 俺は『砂漠能力上昇(中)』をオフにして、『水中能力上昇(小)』と『水流感知(小)』をオンにした。これで少しは違うだろう……。


 砂漠では空気の浄化、視界良好と上昇(中)の恩恵を存分に感じられた。果たして、(小)は俺が溺れるのを助けてくれるのだろうか……?


 俺は思い切って海の中で口呼吸をしてみる……。なんと、呼吸が出来た! これでもう溺れる心配はなし!

 嬉しくなった俺は、鼻でも息を吸う。

「ガハッ」

 今度は一気に海水が入ってきた。鼻が超痛い。

 口だけ恩恵かよ! いえ、十分です。ありがとうございます。文句はありません。



「それじゃあ、行くか」

 居残り組に手を振って、海へ。

 海の中は魚がいない。恩恵のおかげかどうかは知らないが、透明度はかなりあった。

 そして、遠くでうごめく黒い影……。

 どうやら戦闘は避けられない。

 それでも、炭鉱の町のようにいきなり大量のモンスターが迷宮から溢れ出してきて、心の準備ができぬまま戦闘が始まるわけではない。今回は住民もそれなりの心の準備ができる。

 戦えない住民の避難や、衛兵の戦闘配置など国としても、忙しい時間になりそうだ。


 入口ポータルのある部屋にも海水はあり、ここは腰までの深さがあった。

「これは動きがかなり制限されるな……」

 足を動かしながら水の抵抗を確認する。補正のおかげか、プールの頃よりはダッシュができた。それでも陸上と比べてしまうと……。

「泳いだ方が速いニャ!」

 リズはカエルさんになったから、水の中は自由自在だ。

「足が沈む前に、次の足を出せばいいんですよ」

 ギラーフ……、お前は……。馬鹿なのか?

 たまにやろうとする奴がいるが、あんなの無理だからな……。


 そして、本日忍者が誕生した。

『水面歩行の術』体得。

 シャシャシャシャシャっと足を高速で動かして、走り回っている。海と違い、波がないから足場が安定しているのか? 関係ないな……。


「あれは真似できないニャ」

 リズはギラーフの動きを見てションボリする。できる方が変だから気にしないでもらいたい。


「海中で武器を振ってみてどうだ?」

「これでは突き主体で戦うのが良さそうです」

 俺もギラーフと同意見だ。とてもじゃないがまともに振れない。

「魔法で倒すニャ!」

「火は使うなよ」

 貴重な酸素がなくなる。

「……」

 涙目でこちらを見るな……。火しか考えていなかったのかよ!


「最初の何戦かは手探りで行くしかないか……」

「リアラに凍らせてもらえばいいニャ!」

 え? そもそも海水って凍るのか? 真水じゃないから零度では凍らなくても、もっと下げれば凍るはず? でもその場合って全部が同時に凍るのか?

「凍らせる作戦は無しだ。氷塊をぶつけるなら構わないが、海水を凍らせたら俺たちの足まで凍らせることになる」

「仕方ないニャ。ここはやっぱり……」

 リズの目が光った。

「火は無しな」

「ニャぜ、バレた!」

 そんなにビックリされると、逆にビックリだ。なぜバレないと思ったんだ。

 軽く存在理由を否定されて落ち込んでいるリズは無視して進む準備に入る。


 青田は本当に11階層まで進んでいたようで、11階層から探索を開始した。

「ケーレル、モンスターの少ない方角はわかるか?」

「あちらで、数は10です」

「わかった。みんな無理はするなよ」

 結局テイムモンスターはパンダ様、オーガ君、オーガさん、石タートルが参戦。他は居残りだ。

 いきなり11階層からスタートしたのは失敗だったか?


[マングローブ]、[シースネーク]、[水サソリ]、[雷魚]、[ハリセンボン]


 入口で作戦会議が長すぎたな……。

「海ヘビが光っている。無理そうなら倒してもいいぞ」

 初戦だから、正直テイムどころではない。


 マングローブは塩害に強い植物だ。是非海岸に植えて、潮風を防ぐ壁になってもらいたい。


「痛! なんだこれ?」

 いきなり俺の顔に何かがぶつかった。

「針? 急に針が飛んできたぞ……」

「丸いのが膨らんで飛ばしてくるようです。味方にもぶつけてケンカになっていますね」

 モズラ様、冷静な分析をありがとう。お互い出来ることが少なくて困るよな……。


「喋っている場合じゃないですよ。サソリがハサミを器用に使って接近してきます。シッポに注意して下さい」

 ギラーフの呼びかけは的確だった。腕をグルグル回したサソリが分かりやすい水しぶきを上げて近づいてくる。

 サソリは3ヶ所同時攻撃で、そのうち1体が俺の方へ来た。


 俺とサソリの間にはパンダ様が立ちはだかる。


 パンダ様が俺の前で、ホームラン級のスイングを披露した。その結果、海面を大きくえぐり、海中に姿を隠していたサソリが宙に吹き飛ばされる……。ゴルフのウォーターハザードのショットを思い出す。

「リズ、火魔法を使ってもいいから、あの飛ばされたサソリを狙撃しろ!」

 俺は浮かんでいるサソリを指さして指示する。

「任せろニャ!」

 リズは火を単発で撃ちキレイに撃破した。久しぶりに実戦で単発魔法を見て、変な感じだ……。

「海ヘビが消えました」

 ギラーフはキョロキョロ見渡して揺らめく海中を注視する。

 ギラーフが敵を見失うとか、珍しい。

 俺も海面が揺らめいて、モンスターの正しい位置がつかめない。

「えいっ!」

 みんなが苦戦する中で、一人だけ戦果をあげている者がいる。

〈料理人〉のアンジェだ。食材相手なら能力に補正が入るのは間違いなさそう。

 それに加えて包丁だから、水の抵抗も少ない。

「これは銛の方がいいですかね?」

 ギラーフはアンジェの活躍を見て、鋼の刀がこの場に適した武器ではない事を悟る。

「今回は試作品みたいな物だ。きっとすぐに使えなくなる」

 こんな事なら本気で作ってもらえば良かった……。


「あ、右にまだ海ヘビが生き残っているな」

「わかりました」

 ギラーフがバシャバシャ水を掻きながら海ヘビに向かっていく。その背中からは今度は見失わないという強い意志が伝わってくる。刀は納刀したまま抜く気はないようだ。

 俺のところまで引っ張ってくるのは大変そうなので、俺も海ヘビの方へ向かう。護衛はパンダ様だ。

 海ヘビが海中を移動してギラーフに正面から挑む。

 ギラーフは腕を伸ばし、海ヘビを腕に巻き付ける。

「痛っ!」

 わざと咬まれたのか……。ギラーフの状態異常が〈猛毒〉に変わった。

 ビエリアルもギラーフの行動に呆れている。

「早く回復してやってくれ」

 回復魔法と中級の状態異常治癒魔法を使ったようだ。

 毒を流し込んでも効果がないとわかったのか、ヘビがシュルシュル緩んだ。そこで俺がヘビに触れる。

【称号:ヘビの友(赤外線感知(小))を取得しました】

・海ヘビ(♀/普通/10)

 とりあえず、そのままギラーフのテイムモンスターにしておいた。

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