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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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手紙の効力

「なるほど、なるほど……」

 宿の大部屋でクラリーが突然声をあげた。

「何が『なるほど』なんだ?」

「いえ、あれが私が手紙に書いた『隣の国でギラーフさんが左胸を射抜かれる』ですか……。実際に射抜かれたのは、コートだけなので、嘘っぽいですが……。でも……」

「でも?」

「あの手紙があったから、青田さんがギラーフさんの目を治し、エヴァールボさんが作ったガラスの鎧が()の矢を弾いたんですね……」

 そう、矢には鉛の矢じりが装着されていた。つまり、ギラーフが元々装備していた『鋼の軽装鎧』のままでは本当に胸を貫いていた可能性がある。あれは完全にフーリエンの奥の手だった……。

「狙われたのが、ギラーフのスケルトン君だったのもギラーフが攻撃を身代わりした理由の1つな気がする」

 ギラーフは俺からもらったテイムモンスターを特に溺愛している。

 家族に頼んでいるテイムモンスターの世話は寝床の掃除と食事だけなので、テイムモンスターの体を洗うのは個人の仕事だ。大抵はリズが込めた水の魔石で豪快にまとめて水浴びをさせて終わらせる。

 しかし、ギラーフは忙しくてもテイムモンスターの世話を自分でしていた。

 ギラーフにとっては入ったばかりのスケルトン君でも半身なのかもしれない。

「本人と偽者が入れ替わった時は煙幕があったからよかったですが、戻る時はどうやったんですか?」

 戻る瞬間をクラリーは見逃したのか。

「女王の登場で、みんなの視線が女王に向かっている隙に、エヴァールボがなに食わぬ顔をして誘導してたぞ」

「……ご主人様はよく見ていましたね」

 エヴァールボは離れていた俺には気が付かれていないと高を括っていたようだ。

「……俺は視野が広いからな」

 日本人だから、ティアラ慣れしてたのだろう……。女王を見ても、そこまで釘付けにならなかった。


「これは将来、1字1句間違えずに書く必要がありますね。私の生まれ育った町を救うためにも……」

 あの手紙の内容は、いくつも分岐する未来の1つの到達点へ導いてくれたのかもしれない。もしかすると、もっといい未来も手紙の内容次第ではあったのかもしれないが……、家族が誰も死なずに解決できれば、それで十分だ。


「あー。もしかしたら、あの手紙の効力はまだ終わっていないかもしれませんよ?」

 クラリーは楽しそうに笑っている。

「どういう意味なんだ?」

「推理は得意じゃないですか」

 キーワードがそろった時のパズルが得意なだけだ。何もない未来を推理しているわけじゃない。

「もう悪い未来が終わったなら、それでいい」


 その後、別々に行動をしていた時の話をしていると、部屋をノックして、青田が入ってきた。まだ「どうぞ」って言ってない……。

「これから僕たちは海中迷宮に行ってくるよ♪」

「迷宮化したばかりなら海にモンスターが山ほどいる可能性があるぞ」

「僕の奴隷が何族か忘れたのかい♪」

 青田が珍しく得意顔だ。

「確かにワニ族なら水中特化種族だな……」

 ワニの種類はよく知らないが、クロコダイル種なら海でも平気だろう。

「あんたの息継ぎはどうするんだ?」

 ゲーム時代には海に入ることができなかったため、それ用のアイテムは存在しなかった。

 長い間この世界にいる青田なら、すでに海中探索用のアイテムを入手していてもおかしくない。

「これを使うよ♪」

 青田の手には、庭で水まきをする時によく使った長いホースがある。まさか……。

「口で吸って、鼻で吐く♪」

 青田は実際にホースの先を口にくわえて息を吸うと鼻で吐いた。

 漫画かよ!

「理論上は可能かもしれないが……」

※水圧がありますので、お試しになりませんように……。

「私も行きたいニャ」

 ドロップが魚だもんな……。それに猫は泳ぎが上手そうだ……。

「あれ? 鎧を着たまま泳ぐのか?」

「まさか、水着だよ♪」

 み・ず・ぎ! 素敵な響き。み・ず・ぎ!


「急いで水着の用意ニャ」

 俺はまだ行くとは言ってないぞ……。

「ご主人様の鼻の穴が興奮で広がっていたニャ」

 リズに指摘されると、それだけで負けた気分になる……。


「水着はこちらで御用意致しましょう」

 ナミタリア次期女王のお出ましだ。青田の後ろで待機でもしていたのか? タイミングが良すぎるし、俺たちの会話の内容を理解しているようだ。

「迷宮化がどこまで進んでいるのか、これから調査する必要があります。ですが犬族だけでは難しいでしょう。今回は正式な国からの依頼です。再び我々をお救い下さい」

 今度のナミタリアは威厳ある手を差し出してきた。

 俺はナミタリアの手を再び握る。

「楽しそうだからな。任せておけ」

「僕たちは先に行ってるね♪ ケーレルさんを借りてもいいかい?」

「私は泳げませんが……」

 マングースは泳げないのか?

「君は息を止めているだけでいいよ♪」

「それなら大丈夫です」

 青田だから、勝手に話が進んでしまった……。

 俺は女王を見る……。

「早くても御用意に1時間は……」

「わかった。ケーレルを頼むぞ」

 ケーレルはワニ子さんの予備水着を借りるようだ。


「それじゃ11階層まで進んでおくよ♪」

 1時間で、11階層だと? 入口の場所もわかっていないのに?


「これで手紙に引き寄せられたメンバーが動き出しました」

 クラリーの言いたい事がわかった。ワニ子さんも今回の件があったから青田のそばに。そして……、その子が海を調査してくれる。

 レベル5だけど……。

『隣の国でギラーフさんが左胸を射抜かれる』に関して。

 ボツネタを後書きに記載していましたが、もしかしたら、本編に組み込む可能性があるため、章の最後に変更します。

 左胸を射抜かれるの他の意味って……?

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