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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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継承権剥奪

「そなたがそう言うなら、そういう事にしておこう」

 女王は目を細めて青田を見た。

 あの行動を見るに、女王は魔法を使った事に気が付いている……。問題は誰が使ったのかって事だ。説明しても、実際に見ないと、バカっぽいリズとは結び付かない……。

 今もリズは瓦礫を触って指を切り、フローラのお世話になっている。これが普段のリズ……。

 しかも今日は農作業をするだけなので、杖を持っていない。見た目だけでは魔法使いと判断するには難しい。

「すみません♪」

「よい、最初に無理を言ったのは私だ」

 この女王は、そんなに偉そうな口調を使わないな……。王と民の会話だよな……?


「聞きたいのだが、君たちは敵同士ではなかったのか?」

 俺とギラーフとコーシェルが仲良く並んでいたのが、気になったようだ。そもそもギラーフとコーシェルはさっきまで表面上は闘っていた。

「この二人は師弟関係で、この辺りにいるのは全員、俺の家族です」

 ギラーフとコーシェルを先に紹介して、後方で様子を見ていた他のメンバーをグルッと腕を回して指差した。

 女王は端から端まで一通り顔を見ると、ある一点で顔が止まる。

「ということは、君たちがアキリーナを受け入れてくれた人たちかな?」

 俺が指差した範囲内にアキリーナの姿があったからだろう。

 俺は慌てて頷いた。

「そう緊張せずともよい。もうすぐ娘の夫になる男だ」

 女王はしてやったりという顔をする。

「でもアキリーナはまだ『継承権』を捨てておりませんが……」

「そうだったな。そなたは国を継ぐか? この男のそばにいたいか?」

 女王はアキリーナに向き直り質問をする。

 二人が並べば母娘であることは一目瞭然。

「私の気持ちは以前より決まっておりました。女王様、私は一生この方のおそばにいたいと思います」

 アキリーナは女王に微笑んだ。

 自分を捨てたはずの女性を前にしても、微笑むことのできる人がいったいどれくらいいるだろうか……。

 この子は女王の器だと思う。

「うむ。よくぞ申した。だが……」

 女王は一拍おいた。なぜか一瞬ナミタリアの顔を見た気がする。

「継承権はクラスを〈クイーン〉にしてから放棄するとよいぞ」

※クイーンのクラス特性:発言に重み付与。

 こんなの使う機会があるのか? 砂漠称号も、吹き力称号も結局使ったけど……。

「では、そのように」

 アキリーナは女王に一礼をした。これには別れの意味もありそうだ……。

 この国にいる間だけは母娘の時間を邪魔しないようにしよう。


「ところでモズラ……。2人が同時期に〈クイーン〉になれるのか?」

 1つの国に女王が2人とか聞いたことないよな……?

 あれ……、俺はまた馬鹿みたいな発言をしたか? モズラ様が溜め息を吐いたぞ……。

「どう説明しましょうか……。国は犬族だけではないので、全部で1人だったら戦争が起きますよ」

 クラスの奪い合いで戦争とか……。

「継承権があるうちは継承順位の順番で就くことができます。もちろん実際に国を継ぐのは1人です」

 よくわからないが、アキリーナが〈クイーン〉になってもナミタリアが王位を継げるのか。少し不思議だ。

 俺がモズラにこっそり、この世界の事情を習っている間に事態は進んでいた。


「フーリエンの継承権を剥奪する」

 フーリエンが目覚めるのを待っていた女王が宣言した。

 実際には剥奪を宣言されてもクラスが変更されるわけではない。今も『第2候補』は継続されている。

 しかし、大勢の前で国のトップに宣言されたため、この場合は継承が許されない立場になったという訳だ。

「待って下さい。()()められたのじゃ!」

 女王相手だと『余』って言わないのな……。

「あなたの罪は色々聞いています。言い逃れはできません。本来であれば打ち首ですが……。労役の刑です、すぐに連れていきなさい!」

 きっと俺のように邪魔に感じた存在は次々に殺してきたのだろう。

「「はっ!」」

 左右から兵士が拘束して連れて行く。

「無実じゃああああ。そうじゃ、そこの男に唆されたのじゃ!」

 無実を訴えているフーリエンが、去り際、俺に罪を擦り付けてきた。もちろん全員でスルー。


 女王が手で合図を送ると側近を残し、兵士が一気に中庭から去る。

「これでナミタリアを次期女王にできれば、簡単なのですが……」

 アキリーナは放棄、フーリエンは剥奪。消去法で女王じゃダメなのか?

「実績がないので、反対する者が……」

 なるほど……。いろいろあるんだな。

 きっと今までのナミタリアの政策はフーリエンに邪魔をされていたのだろう。

 ゆっくり成果をあげられればいいが、今は緊急性が高い。

「そうなると、ここはキーリアの出番だな」

「……わ、私ですか?」

 突然名前があがって、ビックリしたキーリアが家族の中から姿を現す。

「あぁ、お前なら、この砂漠を緑豊かな国にすることができるだろ?」

 俺はキーリアの頭を撫でながら言った。

「モズラさんがいますので、肥料は作ってもらえますが……」

 チラッとフローラの方を見た。すぐに土地の状態を改善するにはどうしてもフローラの力が必須だ。

「今夜中に国の内外を浄化してもらっておく」

 俺はキーリアに耳打ちをした。

「ありがとうございます」

 これでこの件は片付く。ナミタリアの政策だから、必要な人材はナミタリア経由でお願いすればいいか。可能な限り現地の人に慣れさせたい。


「海のモンスターで、その後の情報はないですか?」

 俺が女王に聞くと、女王は側近に目配せをする。

「ご報告いたします。現在確認された水揚げ量は10体。すでに毒味が完了しているとの情報があります」

 すると、俺たちだけで半分以上を食べたんだ……。

「……思っていた以上に少ないですね」

 炭鉱の町から排出されたモンスターは約1000体だ。それを考えると……。

「周辺の魚を食べたために竿にかからなかったと推測されます」

 そうなると、今夜から明日にかけて、ヤバくないか?

「死者、負傷者、行方不明者などは?」

「一人もおりません」

 この世界の漁は釣りだけなのか?

「陸には来ない……?」

「『迷宮化』された時のモンスターなら陸に適応するのに約2日じゃないかな♪」

 げっ! 2日以内に迷宮都市に帰ろう……。



「次回はいよいよ。国を見捨てて帰るニャ!」

「リズ……。次回予告って宣言してから偽情報を流そうな……」

「わかったニャ!」

「あの~」

「今度はフローラが私のコーナーに顔を出してきたニャ」

「宣言しても偽情報は流しちゃいけないと思いますよ……」

「1週間以内に帰れば許容範囲ニャ! 小さい事を気にしていたらシワが増えるニャ」

「リズさん! 予告がんばって下さい」

「フローラが向こうで〈保湿クリーム〉を使ってるぞ……」

「負けられないニャ! ではまた来年!」

「リズの許容範囲ひろ!」

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