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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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農夫/農婦歓迎

「まずはどうやって姫を潜入させるかだな……」

 俺は山賊がいた方角とは別の方角にある入口を見た。100人ぐらいの長蛇の列が出来上がっている。

「なんであんなに検問が厳しいんだ? って明白か……」

 アキリーナを探している列だろうな。青田も頷いているし。


 俺が悩んでいると……。

「姫だけならこちらで面倒を見ようかい♪」

「どうするんだ?」

「壁の内側に転移するだけだよ♪」

「俺たちも一緒に……」

 領内に直接転移とか……。戦争の時に使われたら壁が無駄だな……。俺なら陽動も兼ねて、壁と中の同時攻撃か……?


「流石にこの人数はバレるんじゃないかな♪」

 青田は笑っているが、俺は笑えない。

「パーティーに〈農夫/農婦〉がいると、歓迎されるよ♪」

「そういう情報はもっと早く教えてくれ」

 それなら()パーティーまでは安全に入れるな……。あと8人か。

「ギラーフ、すまないが、ケーレルを連れて山賊を捕まえてきてくれ。山賊を手土産にすれば、国に入っても嫌がられる事はないだろう。最悪、賄賂(ワイロ)として引き渡しても構わない」

「「わかりました」」


 俺はレベルの高いメンバーを中心に選んでギラーフに預ける。人選している間にコーシェルお手製の紫外線対策用コートが配られた。種族の絵柄付きだ。凝ってるな……。

「それじゃ中で会おう」


 別れた後に集合場所を決めていなかった事に気が付いたが、大丈夫か? 小国と言っても、それなりに広いけど……。



「太陽が痛いニャ」

 やっぱり紫外線が強いのか?

「コートで全身を防げるわけじゃないからな……。〈保湿クリーム〉でも塗るか? 紫外線に効果があるかは知らないが……」

 異世界の物がUVカット製品であるとは思えないが……。

「塗り塗りするニャ」

 リズは〈保湿クリーム〉に食いついたが、単純にすることがなくて、暇なんだよな……。


 俺たちの番になる前にあっさり1時間を超えた。これは普通に熱中症や脱水症状になるぞ……。

「俺たちが未だに待たされているということは……、成功したようだな」

 リズはハテナマークなので、教えてやる。

「これが姫を探すための検問なら、姫が潜入に失敗した時点で解除されているだろ?」

「なるほどニャ」



 やっと俺たちの順番がやってきた。

「ようこそ、砂漠の国『ワヌン』へ」

 ワヌンだと? どういう意味だ? 意味はどうでもいいか……。まさかゲームの時と国名が違うとは……。

「若いのに〈農夫〉レベル3かい? 頑張ったね。この砂漠を何とかしてくれよ。お連れはそこの5人かい? 今日はゆっくり休むといい」

 ステータスを変更しておいたおかげで簡単に通れた……。変えられるって意外と便利なのか?


「よくそのようなことを思い付きましたね」

 フローラは検問から離れると、周りをキョロキョロ見ながら声をかけてくるが、挙動不審過ぎる……。

「堂々としていた方が逆に怪しまれないぞ。観光は宿をとってからゆっくりしよう」

 俺たちの家族が連続しないように、キーリア班は別の入口に行ってもらった。先程の感じだとあちらも大丈夫だろう。


「それにしても犬族ばかりだな……」

 排他的過ぎるだろ。犬族は前衛向きなので、屈強な体付きだ。それに兵士たちのレベルが軒並み高い……。低い者でもレベルが10はある……。戦争を起こす気が満々というわけか。犬族がいないパーティーには必ず〈農夫/農婦〉がいる感じだ……。

「周りの視線が怖いです」

 フローラの言葉は俺も思っていた事だ。針の(むしろ)だな。

「とにかく、宿屋を探そう。それからだ」

 こんな状況は精神的に疲れる。



「この国でなら魚が食べられるかもしれないニャ」

 犬の国で魚? 漁業権は? 貴族の食べ物では? 諦めなかったっけ……?

「さっきから潮の香りがするニャ。近くに海があるはずニャ」

 全然においがしないのだが……。潮の香りを魚センサーで感知したのかな? さすが猫……。

「宿屋で聞いてみような」

「はいニャ」

 リズのしっぽがブンブン振り回されている。興奮し過ぎだ……。もし、食べられなかったら凹むんだろうな……。



「宿屋があったニャ!」

 リズはダッシュで宿屋に駆け込んだ。

「焼き魚下さい」

 ……。おい! そこの猫。ここは宿屋だぞ。

「ごめんね。ここでは犬族以外には出せない規則になっているの」

 宿屋のおばさんは無情にも死の宣告を……、リズのしっぽが止まった……。そして機械仕掛けの首が、この世の終わりを表現した顔をゆっくりとこちらに向ける。


「ここではって事はどこかで食べられるのか?」

「通りの向こうの地下食堂でなら、食べられるから許してね」

 おばさんが手を合わせて謝ってくる。


 おばさんの追加情報に、リズの顔が一気に華やいだ。リズにはやっぱり笑顔が似合う。

「規則じゃ仕方ないな。宿が空いていたら6名泊まりたいんだが……」

「〈農夫/農婦〉がいるなら歓迎だよ」

〈農夫〉の時代が来ました。


 俺たちは2人部屋にそれぞれ別れた。

「荷物を置いたらすぐに行くニャ!」

 昼食は食べてから来たんだが……。目と鼻の先に好物があったら、さすがに我慢できないか。

「トラブルを避けるためにも、6人で行動をするぞ」

 みんなが頷いたので、テイムモンスターは宿に預けて、おばさんが描いた地図を頼りに地下食堂を探す。




 次回は『リズの原材料は魚』です。

「魚人じゃないニャ! でも、美味しそうニャ……」

 リズさん、ヨダレが出ていますよ。魚人も魚じゃないかと……。



「この次回予告より『教えて、モズラ様』のコーナーをした方が喜ばれると思うんだが……」

「私の出番が減ってしまうニャ……、そもそも真面目に次回予告をしないご主人様が悪いニャ!」

「それは……息抜き……?」




「息抜きが必要なら続けるニャ!」

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