幕間:謝罪
時はフローラが妊娠した日の翌朝。
「リズ、フローラ、すまないが起きてくれ」
俺は事情を知りたくて、昨日酔い潰れていないはずの2人に声をかける。
「旦那様、おはようございます。昨日は……」
リズが慌ててフローラの口を塞いだ。
「おはようございますニャ、今日は転移日和だニャ」
リズは一瞬だけ外を見て答えた。転移日和ってなんだよ。リズの行動が怪しすぎる……。
「『正直に話せ』」
最近、奴隷紋の起動に俺の意思が関係している事に気が付いた。
「わかったニャ、話すニャ。私がフローラをそそのかしたニャ。全部私が悪いニャ」
「いえ、リズさんは悪くありません。最終的に実行したのは私です。全て私が悪いです」
罰しにくい展開だな……。リズが悪さをして、フローラがやむを得ず実行したのはわかったが、計画しただけで罰せられるなら、妄想しただけでも罪になる……。
「ギラーフにちゃんと謝っておけよ。昼から楽しみにしていたんだからな……」
夜伽の何が楽しいのか俺にはわからないが……。
「わかっています」
フローラは神妙な面持ちでギラーフが起きるのを待っている。一方、リズはすでにご主人様人形の着せ替えを始めていた。
「お前も少しはフローラを見習って反省をしろ」
リズの頭にゲンコツを落とす。
「ごめんなさいニャ」
それからギラーフが起きるまで、2人に正座をさせる。
「これは足が痺れるニャ」
2人はお互いの足の裏を押して攻撃している。なぜか、とても楽しそうだ……。
「みなさん、おはようございます。昨日は後片付けをせずに途中で寝てしまい、すみませんでした」
これぞ、女性の鑑。
「こちらこそ、アルコールを浄化する約束を反故にしてしまい、すみませんでした」
「ごめんなさいニャ」
「あれ? あれ? えーっと?」
ギラーフは寝起きで状況についていけてないようだ。
「昨日俺たちは『アルコールを浄化しますので、心置きなく飲んで下さい』とフローラに言われただろ?」
「はい」
「実際にはフローラがその約束を破ったんだ」
「なるほど、それであのような体勢でいるんですね……。もちろん許しますよ」
「「え?」」
「だって、ここで許せば、ご主人様にいい人アピールができますから……」
たしかに、それを言わなければいい人アピールになっただろう。つまりギラーフの狙いは冗談を言って、今後の関係に溝を作らないように、この場を収めることか……。元売り子の腕前かな? お見事。
「そうだな。隣の国から戻ってくるまで『ご褒美』は先送りでいいか?」
「はい!」
ギラーフの元気な声が部屋の中を支配した。




