表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第4章 新しい命が宿ります。
73/171

膝枕

「影武者が必要そうなのは、アキリーナだろうな」

「私には必要ありませんよ?」

 姫の微笑みを見ていると、これからクーデターのど真ん中に乗り込むのに不要な気がしてくる。不思議だ。それでも安全面では……。

「これから何が起こるのかわからない、護衛は1体でも多い方がいいだろう」

「ありがとうございます」

 スケルトンをテイムしたことで、光っているモンスターには当分出会えないな……。



 周りを見渡すと何名か疲れの色が見える。特にエヴァールボ班がひどい。小休憩の時も色々していたから……。

「大休憩を入れるか?」

「疲れている環境下での特訓もかねていますので、不要です」

 エヴァールボの宣言に班の4人が頷いている。そこまで過酷な訓練をしなくてもいいと思うが……。


「それよりも『目隠し』を超えるためのトレーニング法を知っていますか?」

 エヴァールボは策士ではあるが、誰かの戦術を複合して作戦を立てるタイプだ……。

「古典的なのは重りを装着して生活をする方法だな」

 生活=戦いと解釈してもいいが、いきなりでは危険だろう。

「なるほど……。鉛で装備を作ってみますか……」

 エヴァールボは1人でブツブツ計画を立てている。

「体を壊されると、戦力ダウンに繋がるからほどほどにしておけよ」

 俺たちはそのまま昼食まで14階層の探索を行った。



 昼食の時。

「コーシェル、こちらへ」

 いよいよギラーフによるご褒美タイムが始まるようだ。

 コーシェルは顔を真っ赤にして膝枕をされている。

 ギラーフは右手でコーシェルの頭を撫でて、左手でウリボー君を撫でている。

 1名と1体が気持ち良さそうだ。今回アリ君は蚊帳の外か……。

 本来コーシェルは料理班なので、昼食の時は忙しいが、今日はモズラが抜けた穴を担当している。

「今日はすごかったですよ。目隠し2日目とは思えない動きでした。師匠として鼻が高いです。私があの領域に到達するには1週間以上かかりましたから……」

 ギラーフは満面の笑みでコーシェルを褒めていた。


 エヴァールボはガラス装備のメンテナンスを終えると話しかけてくる。

「昼食後は装備を作りたいので、先に戻っていてもいいですか?」

「戦力的に足りているからいいぞ」

 炭鉱の町でも先に戻って鍛冶をしていたな。

「ありがとうございます」

 予備の〈脱出アイテム〉を渡す。


 俺も今のうちに用事を済ませることにした。

「新人組は戻ったら転職作業をしてもらう。それぞれなりたい職業を決めておいてくれ。出発は明後日の予定だが、転職の肉体強化で御者ができなくても困るからな……」

 まさか自分たちが転職する日がくると思っていなかったのだろう。不安がっている。


「私はもう決まっています」

 姫は〈プリンセス〉で確定だ。お金足りるのかな?

「私たちは〈大工〉になって恩返しをしたいと思います」

 スオレとリオーニスの姉妹はイタチ族の人気の職業に就くらしい。

「私は種族固有職の〈斥候(せっこう)〉に就きたいと思います」

 斥候って偵察とかするアレ?

「わかった」

 全然わからなかったけど……。モズラの方を見ると、クスクス笑っている。顔に出ていたか。ゲーム時代になかった職業だし……仕方ないだろ。


「迷宮内に限らず、敵対する者の位置がわかる職業です」

 モズラ様がこっそり教えてくれた。でも俺は説明を聞いても意味がわからなかった。つまり?

「ご主人様にとってはありがたい職業かもしれません。迷宮内の階段の部屋には敵対する者がいませんので、階段の位置がわかるようになります」

 え? 今までの苦労は?

「ただし、モンスター以外で『感知』できるのは、山賊がせいぜいですので……、就く者はいないでしょう」

 そりゃ……、軍でもなかったら敵の位置を『感知』することしかできない職業は食べていけないよな。聞いているだけでも不遇職なのがわかった。

「なんで、山賊だけはわかるんだ?」

「敵対する者の判断基準が曖昧なので『危険』に反応するのでしょうか? 会話をすると『感知』が働くとの噂もありますが……よくわかっていません」

 就く人がいないんじゃ情報も少ないか。襲う意志や憎悪に反応しているのか?


「分類は種族固有職ですが、ギラーフやビエリアルもなれますよ」

 1つの種族しかなれなかったら、この世界じゃ廃れるか……。

「聞く限りでは〈盗賊〉、〈聖職者〉を諦める程の職業ではないな」

 ケーレルが俺のために職業を選択したというところか。


「まだ決まっていないのはノルターニだけだな。なりたい職業がなければ、仮でもいいぞ。他の職業に変更したい時は、もう1度転職すればいいだけの話だ」

 モズラが何か言いたげだ。もしかして、ノルターニも種族固有職があるのか? 必ず1つ以上ないと、その種族だけ可哀想か……。

「〈獣使い〉に……」

 え……、俺の存在理由は?




「次回予告ニャ。ご主人様が失業するニャ。これから子供が産まれるのに……。次回『リズが大黒柱になる』ニャ」

 それはない……。リズじゃすぐに折れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ