師弟の実力差
目隠しをして戦闘を開始する。
残り22体
本当は前の部屋から目隠しをしておきたいが、その場合どうしても不測の事態への対応がワンテンポ遅れてしまう。
迷宮の足場はキレイな平らではないが、汚いわけでもない。
2人は敵陣に歩いて近づいて行く。
ギラーフが先に敵に接触するが……。ガラスの武器の性能を考慮していなかったのか、敵の1撃を受けきった部分から分断されて、分断された先端部位でギラーフがダメージを食らう。
「師匠大丈夫ですか?」
君……目隠しをしているよね?
人の心配よりも自分の心配をしようね。
ビエリアルがすぐに回復魔法で治す。
「スケルトンの攻撃は避けた方が良かったですね」
戦いながらブツブツ考察している。
そして見事、敵を縦に斬る。
モンスター名も位置も正解。これは動く音でわかったんだろうな。
でも見えていないのにどうやって戦っているんだよ……。
コーシェルは最初からスケルトンの攻撃を避けるようだ。
ギラーフの呟きはコーシェルへのアドバイスだったのか?
コーシェルはスケルトンを横に斬って撃破した。
残り18体。
「次はサソリですか……」
ギラーフが走って近づき先制攻撃であっさり倒す。
目隠しで走るとか恐ろしいな……。
「んじゃこちらもサソリを倒しますか」
見えているように平然と言うな……。
サソリを探している間にコーシェルが前後を挟まれる。
ここで止めた方がいいかと思ってエヴァールボの方を見るが、この後の展開の方が楽しみなようだ。
「前がアリクイ、後ろがスケルトンですか」
何のモンスターかわかっているから大丈夫なのか?
背後からの攻撃を避けて、スケルトンの背中を押し、アリクイに衝突させた。
見えていても難しそうな事を簡単にやったな……。
そして2体同時に撃破する。
残り13体。
「いつの間にコーシェルがこんなに成長していたんですか。師匠として負けていられませんね」
「みんな少し下がれ。ギラーフが何かを始めるぞ」
みんながモンスターから距離を取ったところで一気に瞬殺を始めた。
昨日合流した時にしていたような単調な動きだが、見えない状態であれを再現している。
コーシェルはさっきの俺の言葉ですでに目隠しを外していた。師匠の動きを見るようだ。
ガラス武器が敵の1部を分断してしまうからやっぱり攻撃は食らうが、それを除けば無傷でモンスターを倒していく。
ギラーフが通った場所にはドロップアイテムだけが落ちている。
ほんの1分弱で残りのモンスター10体を1人で倒した。
「12階層の勝者も『コーシェル』と『ギラーフ』でいいか」
「そうですね。さすがに指示だけで、あの芸当を超える事は出来ません。目隠し特訓ですか……」
どうやらエヴァールボ班も取り入れる事に決まりそうだ。
「みんなでドロップを拾ってから進もう、ギラーフとコーシェルは次の部屋では休憩に専念しててくれ」
みんなが頷いたのでコーシェルの方を見ると、動きをトレースしている。
あんな単調な動きを真似しないでもらいたい。
結局ギラーフの本当の実力はわからなかったな……。
なんとこのリス娘、息が乱れていないのだ。




