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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第4章 新しい命が宿ります。
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女の戦い

 オルゴールと〈踊り子〉の検証結果にホクホク顔のミーナとエリスは俺の腕ではなく、エヴァールボの腕に抱きついている。


 リアラとナイラに続き、ミーナとエリスまで『お姉様』と呼んでいた。


 これは家庭内の勢力図が変化しつつある……。


 昨日は『ギラーフ中心でも構わない』なんてかっこいい事を言ったのに、エヴァールボ中心だと考えざるを得ないな。




 俺たちはいつものように団体で迷宮に入った。

「今日は昨日とは違いみんなのレベルがアップして強くなっていると思う。そこで、11階層の魔法使いはリズが封殺するとして、他のモンスターは、ギラーフ、モズラ、エヴァールボなしで行こう。ビエリアルは回復が大変だと思うが、みんなの成長のために頑張ってくれ」


「せっかく暴れられると思ったのに……」

 ギラーフらしいな。

 でも、ギラーフが1人で頑張るよりも今は総合力を上げておきたい。


「この辺りで練習しておかないと、将来もっときつくなるんだ。家族の成長のためにドンドンアドバイスをしてあげてくれ」


 仲がいい人が決まってきたので、それぞれの班に別れる。

 俺:アンジェ、フローラ、クラリー。

 ギラーフ:ウーリー、コーシェル。

 モズラ:キーリア、アキリーナ。

 エヴァールボ:ミーナ、エリス、リアラ、ナイラ。


 エヴァールボの班が1番多い……。予想はしていたがすでにこの勢力は揺るがんか?


「みんなにご主人様の良さを教えればいいんですよね?」

 エヴァールボさん。主旨を見失っているよ……。

 この策士はわかっていて耳打ちをしてくるからな。



 第2世代の子供たちの中でも、リアラとナイラは実戦経験が豊富だから安心して見ていられる。

 ミーナとエリスもサクランボのダブルの時に多少の経験を積んでいた。

 エヴァールボは実質することがなさそうだな。


 エヴァールボが何やら耳打ちで指示をしている。リアラの返事も耳打ちのようだ。



 あの……、戦術面で教える事がないからって、『耳打ちの極意』を伝授するのはやめてもらえないだろうか……。


 耳打ちのたびに息がかかるのは、きっとわざとなんだろうな……。

 あれを教えているのだろうか? リアラがたまに頬を赤く染めて身をよじっている。


 戦闘中に何をしているのやら……。



「旦那様、ステッキの握り方がわかりません。手取り足取り教えて下さいませんか?」

 フローラがにじり寄ってきた。

「ごめんな。俺はステッキを使った事がないからわからない」

「そうですよね」

 どうやら思惑が外れて悔しがっている。

 昔誰かが同じ手を使わなかったか?


「包丁の握り方を……」

 アンジェがフローラの真似を始めた。

「もう俺よりうまいだろう」


 リズは撃沈した2人を見て嬉しそうだ。



「産まれてくるお子様のアクセサリーはどんなのがいいですか?」

 なるほど。これは断れないな……。

 フローラとアンジェも『負けた』って顔をしている。


 だが、残念だったな。



「その話は私が聞くニャ~」

 ってこちらも主旨が変わっているじゃないか。


 別々に行動するのは無理なのか……?



 ギラーフ班とモズラ班はきちんと指導ができている。


 俺とエヴァールボが悪いのか……?

 それとも教え子が悪いのか?


「フローラも自分の身は自分で守れるようにな」

 俺は落ち込んでいるフローラが可哀想になったので、頭をなでてやる。



 昨日は結局、身籠れなかった。


 平気そうな顔をしていたが、実は精神的ダメージがかなりあったと思う。

 リズをチラッと見ると頷いてくれたから俺だけが気が付いていたわけではないようだ。



 このまま練習させておいても時間の無駄に終わりそうなので、やり方を変えようと思う。

「今日1番頑張った人とその先生は、お昼休みに頭をなでてやる」

 すごい歓声が上がった。

「制限時間は11階層を突破するまでだぞ」


 やっと足並みが揃った気がする。


 餌を吊るさないと走らない馬になったか?


 その後はみんな真剣に取り組む。

 最初からこの手でいけばよかったのか……。


 リアラとナイラが目立つのは当たり前として……。

「リズ、魔法使い以外は攻撃するな」

「だって私だけなでられるチャンスがありませんが……、皆さんだけズルいニャ」

 そこまでしてなでられたいのか? むしろ練習の邪魔をして怒るところだったのだが……。


「俺の班が勝ったらリズをなでるから、サポートをしてあげてくれ」

「はいニャ~」


 これからお母さんになるのに……。



 リズって子は他の人に教えられないタイプだ。そもそも本人がなぜできるのかを理解していないから他の人にやり方を説明ができない。そんなリズが勝てるはずもなく、1番成長したのは、予想通り『ギラーフ』と『コーシェル』だ。


 今度みんな1回ずつ目隠し特訓をさせるべきかな?

 人間以外の種族は感覚器官が優れている気がする。


「ギラーフ、お昼休みはコーシェルをなでて褒めてやってくれ」

「そうすると私はなでられませんが……」


 そういうと思って考えてありますよ。

「夜一緒にお酒を飲んであげますよ。だニャ」

 なぜわかった?

「その顔は当たりだニャ。ご主人様は相変わらず顔に出やすいニャ」

 リズは正解させて満足顔。ギラーフは2人になれそうで満足顔。コーシェルは大好きな師匠に褒めてもらえるので満足顔。




 その影で悔しがっている人達がいる事を俺は気がつかなかった。


「絶対にリベンジですよ。リアラ」

「はい、お姉様」






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