それぞれの想い
13階層の初物は[石人形]。
わかりやすく言うと、服を着てない、顔が描かれていないマネキンだ……。
正直怖い。ゾンビより断然ましだけど……。
休憩明けでも光っているモンスターはなしか……。
[石ザル]、[石クラゲ]、[岩スライム]、[石サクランボ]、[石人形]。
「リズは人形を焼いてくれ、熱量が足りなさそうならモズラも加勢しろ」
石人形は大したことがなかった。
なんでこんなのが、13階層に出てくるんだ?
石柱、石サクランボの方がやっかいだったぞ……。
人形は必ずガラス鉱石をドロップするおいしい敵だ。
「この階層でガラス鉱石を集めるのが簡単そうですね。鍛冶が楽しみです」
離れている時はまともなんだよな……。
「そんなに情熱的な目で見られたら興奮しちゃいますよ」
やばい、耳打ちされた。色気があってドキッとしたじゃないか。
エヴァールボから距離をとっておくか……。
「残念です。次はどんな手で行きましょうかね」
みんなから見えない角度でウィンクされた。俺はすでに遊ばれているな……。
「石人形に『変化』があるのかわからないが、ガラス鉱石が出るならここで集めればいいな。今日はここで鉱石を集めて終わりにしよう」
みんなが頷いたので進む。
何度戦っても石人形は弱かった。
しかし、リズもモズラも石人形が奥にいて、倒せないまま5分が経過した時にそれは起きた。
急に部屋にいる残りのモンスターたちが人形に合体してキメラになった。
「これが人形の『変化』か。冒険者ギルドに報告する必要があるな。とりあえず、リズは水をかけろ。リアラは凍らせろ。表面は石だ。石柱君投擲だ」
今回は人形以外に残っていたのが7体ぐらいだったから、そこまでの脅威はないはずだ。
足止めが成功。石柱君が串刺しにしてくれたので、事なきを得た。
「今回の炭鉱の町での迷宮探索はこれで終了にしよう。みんな最後に危険を感じさせたな」
「私が人形を倒せなかったからニャ~」
「いや、逆だ。今後の情報のためには人形の『変化』は知っておけて良かった。もし知らずに少人数がここでキメラを作ったら大変なことになっていた」
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ドロップアイテム
・石人形→人形の心×8個
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「〈人形の心〉は何になるんだ」
「〈人形の魂〉に錬金することができるようですね。アイテム名から考えると人形に魂が入れられそうです」
リズが食いついた。ご主人様人形に入れる気だな……。
「性格ってどうなるんだ」
「とりあえず作ってみるニャ~」
モズラはリズの指示であっさり〈人形の魂〉を錬金した。
ステータスで見た時の説明文には、最初に髪の毛を1本入れると遺伝子が登録されて、その人の『その時』の人格になるそうだ。
俺がリズに説明すると……。
「ご、ご、ご、ご主人様、その……。折り入ってお願いしたいことがあるニャ~」
髪の毛を下さい。
「髪の毛が欲しいニャ~」
だろうな……。
この話の流れでリズが欲しがらないわけがないか。
「あ、やっぱりいらないニャ~」
え?
「ポケットに入っているニャ~」
オイ!
「枕に付いていたのを回収しておいて良かったニャ~。『その時』のご主人様ならまだリズと2人の頃のご主人様の髪の毛を使うニャ~」
「リズ、何でそんなのを持っているんだ……」
「ご主人様の身の回りのお世話をしていたからニャ~」
聞きたい答えと違ったのだが……。リズが寂しそうだから。ご主人様人形に活躍してもらおう。
「それでは残り7個をジャンケンで決めましょうか。『今の』ご主人様の髪の毛付きです」
ギラーフが宣言した。
「私も参加するニャ~」
「リズさんはあるじゃないですか……」
「う……」
迷宮内でかつてない本気のジャンケンが行われた。
そしてとうとう6人まで勝者が決まる。
なんで……。こんなに白熱しているんだ?
勝者はあと1人だけ。
最後の勝利は誰の手に……?
その時エヴァールボが爆弾を落とした。
「全員分出せばいいじゃないですか」
「「「「「それだ!」」」」」
まさかキメラをわざと作って〈人形の心〉を集める作業が始まった。
もう帰るつもりだったのに……。
危険がないように毎回人形と残り4体まで調整して『待つ』作戦。さすが策士だな……。
途中光っているモンスターに出会ったので、テイムをした。
【称号:サクランボの友(吹き力上昇(小))を取得しました】
今なら種飛ばしで、新記録が出せるな……。
テイムモンスターよりも〈人形の心〉の方が重要らしい……。
・石サクランボ(♀/普通/10)
これってダブル状態になってもらえば、食べ放題じゃないのか?
一応傷つけている扱いだからしないけど……。直径1mのサクランボとか食べきれないよな。
サクランボさんを連れて歩きたくても、単体じゃ歩けない。完全に固定砲台だ。
そしてみんなはサクランボさんに興味なし。
「人数分集めました。任務完了です」
ギラーフさん。そんな任務は出していないのですが……。みんなウットリ顔だ。
「今度こそ戻るぞ」
もうみんなここには用はないらしい。
モンスター屋で印を購入して、もはや誰も望んでいない転職作業に入る。
みんなの顔がそんなことよりも『人形を作る時間を下さい』と言わんばかりだ。仕方ない……。
「明日は休息日になるからお小遣いをあげよう。1人500モールだ。人形の材料を買う者が多そうだが、無駄遣いをするなよ」
「人形の材料は無駄ではありません」
ギラーフの言葉にみんなも頷く……。一致団結している。
ミーナ〈踊り子〉、エリス〈商人〉、キーリア〈農婦〉、ウーリー〈配合師〉、コーシェル〈裁縫師〉、クラリー〈細工師〉。
今回はミーナ以外はあっさり決まった。
ミーナの選んだ〈踊り子〉はゲーム時代には罠があった職業だ。
ゲームのオプションの中には音量を調節する機能が付いていたが、その音量をミュートに設定していると、なぜか〈踊り子〉が踊っても補助がかからない。
また、パソコンの音量も同様で、なぜかミュートだと……。どうやって音の有無を調べているのかは、最後まで『なぞ』と言われていた。
スピーカー類も感知されたため、仕方ないので、プレイヤーたちはイヤホンに音を垂れ流すことで回避した。
本当に誰得の機能である。
今回試してみて、どうしても周りに音楽がないと補助がかからないのであれば、仕方ないので、再度転職することになるだろう。
キーリアが〈農婦〉になったのは庭のミントの手入れをしているのが好きだったからだ。今後も庭はキーリアの担当になりそうだ。
農園関係ということで、サクランボさんはキーリアが持ち歩くことになった。アップルもテイムできれば最高だったのに……。
転職したために起こる〈モンスターの友〉の減少の件だが。
ゲーム時代と違い、信頼関係がすでに築けている場合は今まで通り大丈夫だということがわかった。
ゲームの場合は機械的に数字しか見ていなかったからだろう……。
今回条件にひっかかるのはサクランボさんだけだ。数日間はフローラのテイムモンスターとして連れて歩くことになった。
みんなのお小遣いの大半はコーシェルの〈裁縫師〉頼りになる。
女の子と言えど、裁縫ができるわけではない。
リズを頼りにしようにもすでに自分の世界に入っているので、誰も頼めなかった。
午後の腕組みは〈人形の心〉の登場で、すっかり忘れ去られてしまった。
「みなさん、ご主人様人形を何に使うんでしょうね」
エヴァールボの耳打ちは強烈だ。それは俺も思っていた。
「私の用途を聞きたいですか。内緒ですけどね」
ウィンク付きか。知ったら危険な気がする。
「とりあえず、出来上がったらリズさんの真似をして胸にしまいますね」
頬を赤く染めて嬉しそうに離れていった。
人形になりたい……。いや、ダメだ。絶対に罠だ。
夜はギラーフと一緒にお酒を飲む。
ジャイアントのテイムが成功したら、お酒を飲む約束をしていたからな。
「私も一緒に飲むニャ」
俺とギラーフが顔を見合わせる。
「でもリズは飲むと寝ちゃうんだろ」
リズが寝てベッドまで運ぶのが大変だろうから、部屋で飲むことにした。
「そんなに注目されていると飲みにくいニャ~」
3人とも同時に一口だけ飲んだ。リズの顔が一気に真っ赤になる。
「ご主人様が2人に見えるニャ~」
典型的な酔っ払いの発言だな。
「おいしそうニャ~」
いきなり抱きついてきて顔を舐められた。
「ギ……ラ…ーフ、た……すけろ」
「わかりました」
ギラーフはリズを助けた。つまり便乗して俺に襲ってきた。
「リズさんがんばりましょ」
「今日は一緒に楽しむニャ~」
そしてリズはここで意識の限界を迎えて寝た。
危なかった……。
「これからは毎日リズさんを飲ませますか。楽しそうですね。ご主人様」
俺もギラーフもまだ一口しか飲んでないから素面と変わらないのに……。
「この日をどんなに望んだことか……幸せです」
ギラーフは抱きついたまま満足そうに眠った。昨日飲んだせいで、寝不足だったのだろう。その上、朝の騒動で疲れていたようだ。
俺は2人をベッドまで運んで、真ん中で寝ることにした。
リズは俺の右腕に、ギラーフは俺の左腕に、それぞれ抱き付いて股に挟んだ。
手が危険なところに……。
そしてタイミングが悪いことに部屋の外からエヴァールボが声をかけてくる。
「ご主人様、ギラーフを知りませんか」
「知っているが、今は危険だ」
「それは助けなくてはいけませんね」
絶対に意味を理解して入ってきたな。
「まぁこれは……。ご主人様も嬉しそうですね。でも3人で寝るにしても布団はきちんとかけなくちゃいけませんよ。今度は私も誘って下さいね」
エヴァールボは布団をかけて、動けない俺に『おやすみのキス』をして、出ていった。
この状況で俺が寝れるわけないだろ。
そして明日のエヴァールボの言動が怖い。
――――ステータス――――
名前 緑野赤
種族 人間
性別 男
素質 天才
クラス 獣使い(村人)
レベル 20(1)
HP 240/240(+10)
MP 0/0(+10)
SP 30/430(+10)
筋力 5(+12)
体力 5(+3)
素早さ 5(+6)
かしこさ 5(+3)
モンスターの友 120(+5)
残りポイント 0
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クラス特性
・モンスターをテイムできる。
・獣系のモンスターのテイム確率上昇、また獣系のモンスターの能力上昇(上昇率はレベル依存)。
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称号 ※章の最後に記載
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装備 ※武器/盾/服/アクセサリー
・鋼の剣/丸鉄の盾/鋼の軽装鎧+1/なし
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所持金
・5万5361モール
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テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)
・パンダ(♂/良い/20)
武器:鉛竹槍+1
・ジャイアントサソリ(♀/良い/19)
武器:銅球
・ジャイアント岩スライム(♀/良い/10)
武器:なし
従属:岩スライム(♂/普通/10)
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奴隷 ※名前(種族/性別/素質/クラス/レベル)
★リズール(ネコ族(ラグドール種)/♀/普通/魔法使い/19)
魔導の杖/なし/軽装の鎧/お守りのリボン
・ゴーレム(♂/普通/19)
武器:鉛のメリケンサック+1
・ブルースライム(♀/良い/19)
武器:鋼のキバ+1
従属:ミニスライム(子供)×8匹
・オーガ(♂/普通/19)
武器:鉛のハンマー+1
★ギラーフ(リス族(シマリス種)/♀/普通/盗賊/19)
鋼の刀+1/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし
・石アント(♂/普通/16)
武器:鋼の槍+1
・石ウリボー(♂/普通/14)
武器:なし
☆モズラ(ヒツジ族(サウスダウン種)/♀/普通/錬金術師/19)
自動装填ハンドボウ(SP使用)/なし/軽装の鎧/なし
☆ビエリアル(レッサーパンダ族(レッサーパンダ種)/♀/普通/聖職者/19)
聖導の杖/なし/軽装の鎧/なし
・オーガ(♀/普通/19)
武器:鉛のハンマー+1
・ハムスター(♂/普通/19)
武器:鋼のキバ+1
★エヴァールボ(ハリネズミ族(パイド種)/♀/大器晩成/鍛冶師(ハリネズミ)/15(15))
鋼の大剣+1/鋼の盾/鉄の鎧/なし
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同居人
☆ミーナ(人間/女/良い/踊り子/1)
短剣/木の盾/皮の服/なし
・石タートル(♀/良い/13)
武器:なし
☆エリス(人間/女/普通/商人/1)
短剣/木の盾/皮の服/なし
・石ビートル(♂/普通/13)
武器:なし
★アンジェ(人間/女/普通/料理人/15)
鋼の包丁+1/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし
・魔法使い(土)(♀/普通/15)
武器:鉄のステッキ
★フローラ(ユニコーン族/♀/普通/神聖術師(ユニコーン)/14(15))
鉄のステッキ/なし/軽装の鎧/なし
・石サクランボ(♀/普通/10)
☆キーリア(サル族(リスザル種)/♀/普通/農婦/1)
短剣/木の盾/皮の服/なし
・フェアリー(♀/普通/16)
武器:鉄のステッキ
★リアラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷結術師(ツンドラオオカミ)/14(15))
鉄のステッキ/なし/軽装の鎧/なし
★ナイラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷狼(ツンドラオオカミ)/14(15))
鋼の剣+1と鋼のナイフ+1×10本/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし
☆ウーリー(ウサギ族(ホーランド・ロップ種)/♀/普通/配合師/1)
短剣/木の盾/皮の服/なし
・石柱(♂/普通/15)
武器:鋼の槍+1(投擲用)
☆コーシェル(タヌキ族(エゾタヌキ種)/♀/普通/裁縫師/1)
忍刀/木の盾/皮の服/なし
・ゴーレム(♀/普通/15)
武器:鉛のメリケンサック+1
防具:鉛板の鎧+1
☆クラリー(ドワーフ族/♀/良い/細工師/1)
鋼の斧/なし/皮の服/なし
・石ザル(♂/普通/13)
武器:なし
☆スオレ(イタチ族(アンゴラフェレット種)/♀/普通/村人(アンゴラフェレット)/1(1))
☆リオーニス(イタチ族(アンゴラフェレット種)/♀/普通/村人(アンゴラフェレット)/1(1))
☆ケーレル(マングース族(ミーアキャット種)/♀/普通/村人(ミーアキャット)/1(1))
☆ノルターニ(鳥族(コウノトリ種)/♀/普通/村人(コウノトリ)/1(1))
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