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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第1章 奴隷少女を購入します。
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転職の儀

『モンスターテイム・オンライン』のイベントの一つでもある転職。

 もちろん俺が目指す先はゲームの代名詞となる〈モンスターテイマー〉だ。


 主な初級職の転職条件。

――――――――――

 筋力と体力が伸びると付ける職業……鍛冶師、大工、細工師。

 素早さが伸びると付ける職業……盗賊。

 かしこさが伸びると付ける職業……聖職者、魔法使い、錬金術師、商人。

 特に制限の少ない職業……剣使い、斧使い、弓使い、鞭使い、遊び人、農夫、料理人など他多数。

 モンスターの友五〇以上で転職可能な職業……獣使い。


 それ以外にも種族固有職、特定のアイテムを所持、特定の条件をクリアしてなれる職業なども存在する。

――――――――――


〈獣使い〉の中級職が〈魔物使い〉、上級職が〈モンスターテイマー〉と続く。


 モンスターの友が五〇を超えた俺は、転職条件を満たしたため、神官の元を訪れた。

 転職をするためには専用の石に触れて行われる。石の大きさはA四の紙を二枚合わせた、A三ぐらいのサイズだろうか。その石に転職可能な職業が横書きでズラリ縦に並んで表示される。

 なりたい職業を選択すると横に料金が映し出され、その金額を()()()として神官に渡すことで転職の儀が完了となる。

 俺はさっそく石に触れて金額を確認した。

 五万モール。

 ゲームの時はもう少し安くて一万モールだった。

 一〇〇〇モールもない貧乏なので、さっさとこの場を引き上げる。


「まいった……」

 パンダ様の食費を考えると、どうしても宿泊費が無料のうちに資金を集めなくてはいけない。

 そのためお金を集めるための猶予はわずか一〇日間!

 これがゲーム時代なら知り合いにゲーム内マネーを借りる事が出来ただろう。

 でも、こんな知り合いもいない土地で、どうやって……。


 やっぱりコツコツ貯めるしかないのだろうか。


 ゲーム時代から罠だった冒険者ギルドに行くのはさすがに勘弁とは思ったが、途方に暮れながら、行きたくもない冒険者ギルドを訪れる。

 入って左が受付で、右が掲示板のようだ。

 俺がキョロキョロ中を見回していると左側から声がかかる。

「おう。初めてかい?」

 お昼を過ぎているせいか、もともとこの町の冒険者ギルドに人気がないのか、受付が(いか)つい顔をしたオッサンだからか、人が全くいない。

 隣が酒場という事はなく、こじんまりとしている。

「登録料は一〇〇モールだ。どうする?」

 掲示板を見るために仕方ないので残り少ないお金から支払った。

「今から説明を始めるけどいいか?」

 ゲームと大差ない説明を聞く気になれない。

「知ってるから必要ないです」

 依頼内容を見ると期日、斡旋料金、依頼失敗料金、依頼成功料金などが細かく記載されている。

「この依頼の町までって徒歩だと何日かかるんだ?」

 俺が振り返りながら質問をすると『紙を外して、持ってこい』のジェスチャーをする。他に誰もいなくても受付から移動をしてはくれないようだ。

 指示された通りに用紙を持っていく。

「この町は……そうだな。二日ってところだ」

 なんだろう。片道二日かかるのに、期日一日とか――無理じゃね? の一言だ。

 掲示する町を間違えたか?

 ここで見て、現地で受けろって事か?

 よくわからないけど、やっぱり冒険者ギルドはダメだ……。一〇〇モールを返して欲しい。

 他のも見たが、とにかく期日が短すぎだ。現状の正しい冒険者ギルドの利用方法は、依頼素材を事前に持った状態で依頼を開始、即完了するスタイル。ある種のゲーマーの依頼達成方法しかないな……。


 諦めて冒険者ギルドを後にする。

「依頼を受けないのか?」っと声をかけられたが、無視した。俺にこの建物は合わない。几帳面に毎日依頼内容をチェックして素材を集められる奴のみが利用する場所だ。

 俺みたいに未だに〈スライムのかけら〉しか手に入れられない人間が来るところじゃない。


〈スライムのかけら〉か……。

 最近大量とは言わないが、買取口が一ヶ所のせいで、供給過多になり始めている。雑貨屋のオバサンが嫌な顔をしていた。

 今までは単純に雑貨屋に売却をしていたが、どうにか他の処分方法を考える段階まできている。


 すでに前回分は手元に残っていないので、素材を集めるところから始める。

 なくなった薬を補充して、いざ草原へ。

 もう二日も通って庭のようなものだ。

 草の上に寝転がっていればパンダ様が勝手に倒してくれるけど、寝ているだけでは稼ぎにならないのが悲しいところ。今日も俺は玉拾いに準ずる。

 ヒューンッと飛んだ先を追う。あっちは巨大スライムの方か……。

 昨日の接戦を考えると、どうにも気が進まない。


 こっそり覗くと、復活している。

 同じ場所に留まっているところを考えると、エリアボスかな? あんな巨体がこんなへんぴな地域に何体もいられても困る。

 エリアボスも仲間になるこのゲームでも、まだテイマー職に転職していないから仲間にはできない。

 今日は鞭がないせいか、のんびり睡眠状態のようだ。

 取り巻きはスライムが三体。

 パンダ様の方を向くと頷かれたので、もうやる気充分のようだ。

 行くしかないか。


 俺たちに気が付いたスライムが寄ってくる。異変に気が付いた巨大スライムは眠そうに目を覚ましてしまう。どうせ気配を悟られずに近づけるとは考えてなかったので、気にしない。

 俺がスライム三体に近づくと、横からパンダ様が来て、強烈な弾丸ライナーを巨大スライムへ打ち込む。

 まさかのスライム弾が直撃ヒットして、ピヨッた。

「残りのスライムは俺が相手をするから大きい方を任せた!」

 俺の指示を聞いて、一気に距離を縮めると、いつものバッティングスタイルではなく、竹を真っ直ぐ剣道のように振り下ろした。

 縦!

 昨日よりもレベルが上がったし、先手必勝で無防備の体に攻撃できたおかげか、巨大スライムの動きが悪い。

 寝起きすぐで、準備運動をしていないからか、パンダ様ラッシュが続く。

 横! 横! 横! 横! 横!

 体当たりを繰り出すには多少の助走が必要なようで、ぴょんぴょんジャンプして後ろに下がるが、その間合いさえ与えない。転がして転がして目が回ったところを竹で縦に斬った。

「昨日の接戦とは、えらい違いだ……」

 二戦目、無傷で勝利する。

 ドロップは〈スライムの水肉〉だった。

 そう簡単に上肉になるなら、幻じゃないか……。

 調子に乗って、巨大スライムの沸き待ちをしながら、玉拾いをしていたが、二時間経っても、沸かないようだ。

 ゲームなら倒すとすぐに沸くのに……、世の中そううまくはいかない。



 何とか拾い集めた〈スライムのかけら〉を持って、宿屋の調理場を借りて、料理を開始する。

 雑貨屋のオバサン曰く〈スライムのかけら〉は水に入れ、一度熱してから冷やすと固まるらしい。


――――――――――


 宿屋の軒先で異世界初のゼリー販売に挑戦する。


 マスコットキャラは我等がパンダ様!

 蝶ネクタイを付けて、わざわざ作った〈最後尾〉のプラカードを持って、お仕事中。

 実はゼリーのブースは作り置きを手渡しなので、お客さんは並んでいない。

 最も売り上げを出したのは、どうせ食べきれないと思って販売した〈スライムの水肉〉の串焼き。

 サイコロに切り分けて串に刺して焼いただけ。ソースダレが主流だったため、ダメ元で作ったものだ。

 しかし、モンスター肉を振る舞うと話題を呼んで、たった七日で四万モールを稼げた。

 残りの一万モールはモンスターを倒した時にドロップしたお金とゼリーの売り上げ額だ。

 あと三日同じ事をしようと〈スライムの水肉〉を取りに行ったが、どうも材料がバレたようで、エリアボスの沸き待ちをしている集団がいたために諦める。


 それでもなんとか宿屋を追い出される前に〈獣使い〉に転職することが出来た。

――――ステータス――――

 名前 緑野赤

 種族 人間

 性別 男

 素質 天才

 クラス 獣使い

 レベル 一


 HP 五〇/五〇

 MP 〇/〇

 SP 五〇/五〇


 筋力 五

 体力 五

 素早さ 五

 かしこさ 五

 モンスターの友 一〇


 残りポイント 一五

――――――――――

 クラス特性

・モンスターをテイムできる。

・獣系のモンスターのテイム確率上昇、また獣系のモンスターの能力上昇(上昇率はレベル依存)。

――――――――――

 装備 ※武器/盾/服/アクセサリー

・木刀/木の盾/村人の服/なし

――――――――――

 所持金

・七八三〇モール

――――――――――

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

・パンダ(♂/良い/一一)

 武器:竹

――――――――――

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