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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第3章 みんなの装備を作ります。
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事前準備

 あの時の話し合いの続きは確かこんな感じだった……。



「そこで、俺たちらしく行こう」

 みんなが顔をあげたので、続きを話す。



「明後日のお昼に町から少し離れた地点でカニ汁を無料配布しようと思う」

 みんながハテナマークなので、追加情報を教える。



「カニ汁目当てで町から人を減らして事前に避難誘導をする」

 みんなから歓声が上がった。



「みんなには明日、町で明後日のカニ汁の無料配布の宣伝と準備をしてもらう」

「お任せ下さい」

 ギラーフが代表して返事をした。さっきまで絶望していたのに、今では希望に満ちている。



「エヴァールボにはカニ汁会場を囲むための銅の壁または柵の作成を頼む。可能なら俺たちの武器も作ってくれ」

「わかりました。鍋も必要そうですね」



「あぁ、頼む。みんな明日から忙しくなるけど、人命のために手を貸してくれ」

 みんなが頷いた。



 エヴァールボには用意したい物があるらしく、準備資金に3000モールを渡した。

 何か作るのだろうか……?



 3日目の夜が終了する。(迷宮化まであと1日と16時間前)


 リズが夜中にベッドから抜け出して何かやっていた……。





――――――――――


 4日目の朝が始まる。(迷宮化まであと1日と6時間)



 迷宮都市から離れてもカニ汁を飲めるように、ある程度は用意していたつもりだったが、まさかこんなことになるとは思っていなかったので、カニの準備が50個しかない。


 家族で食べるなら10回分。薄めて食べれば25回分。


 無料配布だから後者の方でいくしかない……。 家で振舞った時は、2個しか使っていなかったのに、食べにきた子供たちが涙を流していたから、たぶん大丈夫だろう……。





 懸念は……、本当に配布されるのかを疑う可能性か……。





「今日のお昼に宿の庭を借りてカニ汁の試食会をしよう。においが広まればいい宣伝になるだろう」

「はい。楽しそうですね」

 アンジェがやる気満々だ。


 いきなりだったが、宿の厨房を借りて材料を準備する。


 完成したら、さっそく宿の人にカニ汁を数杯奪われた。いいにおいだったからな……。




 お昼頃。(迷宮化まであと1日)


 においに誘われて宿の周りには見物人がたくさんいた。


「今日は明日の試食会なので、小さい子供たち先着10人まで配布します。明日は会場に来て頂いた皆様全員にお配りできるように作りますので、入れ物と箸を持参で来て下さい。会場はあちらの丘の上でやろうと思っています」


「コ、コレハ、オイシイニャ~」

 リズさん……、演技が下手……。それでは逆効果ですよ。


「人数が多くなりましたら、焼肉も開催しようと思います。集まれば集まるほど、より美味しいものが食べられる企画になっています。是非知り合いを誘って来て下さい」

 歓声が上がった。


 俺の話よりもみんなの心を動かしたのは、小さい子供たちが「おいしい。おいしい」と言って涙を流して食べていたからだろう。


 この世界の住人は初めてカニ汁を食べると、どうして涙を流すのだろうか……?


 今回はそのおかげで、カニ汁の情報が瞬く間に広がった。



「料理ができる方で明日お手伝いが可能な方は、お昼前に材料を切るのを手伝って頂けると助かります。完全にボランティアですが、一足先に味見できます」

 みんなから笑いが起きた。


 俺たちは鎧を着て料理を続行するわけにはいかない。代わりに誰かに料理をしてもらう必要がある。


 お手伝いの人数が集まらなければ、仲間を数名料理班として削らなくてはならない。






 お昼を数時間過ぎた頃には『お祭り』という単語に変わっていた。


 町の中を歩くと「明日のお祭りにこれを使ってくれ」っと色々もらえるようになった。



 町が少し浮かれモードだったので、少し心配になり「明日は空き巣がでないように貴重品は必ず持って外出しましょうね」っと広めておいた。



 宿屋では気前よく全額サービスされる始末……。カニ代で結構な赤字だったから嬉しい。お昼にお裾分(すそわ)けをしたかいがあったというものか?




「ギラーフ、今この町にいる人数はわかったか」

「約550人です」


「1鍋で約40杯分作れるから、24鍋×40杯分で960杯分か……。1人2杯配ると危ないか……。その時は焼肉をしよう」

「そうですね」


「本題はここからなんだが……、迷宮から出てきたモンスターをこの町の住民の手を借りて退治しなくてはならない……」


 さすがに何体モンスターが出てくるかわからないが、全てを俺たちだけで倒せるとは思っていない。もし住民の力を借りれなければ町の迷宮化は阻止できない……。


「カニ汁を配った後なら多少のワガママを聞いてくれるだろうか……」


 そもそもカニ汁を飲みに来た人間を戦力として数えていいのか……?


 銅の武器なら用意できても……。防具までは無理だよな……。


「実際にモンスターを見ないと誰も危機感を覚えないと思うが……。何かいい方法はないか……」


 素直に説明して、迷宮化されなかった場合には……。


 ギラーフも首を横に振るだけか……。


「あとあの男をどこまで信用していいかだな……。俺の予想では最終的に裏切る気がする。俺たちの命が欲しいなら、いつでも奪えたから考えすぎかもしれないが……」

「あの者の目は純粋にオリハルコンが欲しいだけに見えましたが……」


「俺も終始そんな気がした」

 ただのゲームバカだから迷宮を踏破できたんだろうし……。人のことは言えないか……。


「そうか……、1つおもしろいことを考えたぞ。ギラーフは至急町で広めて来てくれ」


 俺はギラーフに耳打ちをした。


「あの男が裏切った場合の対処はどうしようもないが……、町だけはなんとかしなくては……」






 夕方、俺たちはエヴァールボの作った銅の格子状の柵を丘の上に固定した。


 柵にした理由は単純に向こう側が見える。というだけだ。


 そして会場が丘の上である以上、敵が来ても上から攻撃ができる。



 俺たちの装備はリニューアルされて、鉄装備になった。しかも今回は攻撃力重視で刃がある。




 それにしても丘の入口に付いている、この2本のレールは何に使うんだ? そしてレールの後ろには深い溝がある……。


「明日のお楽しみです」

 エヴァールボが子供の悪戯心で作ったらしい。


 不安だ……。


 他にもエヴァールボ作の仕掛けが丘の斜面に作られた。



 そして極めつけは、巨大な壁を石柱に装備させて小さくしている……。 お前はよくそんなことを思い浮かんだな!


 柱だから壁を装備できるらしい。


「必要になるかはわかりませんけどね」





 5日目の朝が始まる。(迷宮化まであと6時間)


 いつもと同じ朝だ。

 迷宮化するとは思えない……。


 少し違うのは町がお祭りムードになっているぐらいか?



 俺たちの口数は妙に少なかった。みんな緊張して食事もあまり受け付けていない。迷宮に初めて行ったあの日のようだ。


「とりあえず、食べろ。無理なら流し込め。いつでも動けるように準備しろ」


 俺は自分に言い聞かせるようにみんなに言った。



「夜中に町にも仕掛けをしました」

 エヴァールボが笑った。


 お前……、捕まるよ?





 朝食を食べたら、丘に移動して旗や垂れ幕で柵をカモフラージュした。


 あの一角にめっちゃ槍が置いてあるんだが……。



 俺はとりあえず、コンロを8個作って、1箇所で3回ずつカニ汁を作ればいいようにした。



(迷宮化まであと2時間)


 町で評判の料理おばさんはどこの世界にもいるようで、材料を説明したら、足りない材料を町までとりに行った……。


 今回の料理は住民をひきつけられればいいのだが……。




 どうも単純に材料をとりに行ったのではなくて、本当にお祭りの準備をしていることを町で宣伝してきてくれたようだ。


 新参者が何を言っても結局は住民の一声が大きい……。


 そのあとお手伝いさんが続々と集まってくる。



 恐れ入った。





(迷宮化まであと1時間)


 今度は装備でガチガチの戦士たちが丘を目指して歩いてくる。


 俺はその光景を見て、口元を綻ばせた。




(迷宮化まであと40分)

 500人を超えたか?


「それでは集まって頂いた皆さん、すでに結構な人数が食べていますが、おかわりもありますので、ドンドン食べて下さい」

 コンロの個数の関係で、どうしても同時に配ることができなかったので、20分前から随時配っていた。


 会場は涙を流して喜ぶ人が大半だった。




(迷宮化まであと10分)


 だいたい食事が終えて落ち着いた頃。


「皆さんに落ち着いて聞いてもらいたいことがあります」

 会場が静かになる。


 どうしても俺にはからめ手が思いつかなかった……。


「真偽のほどは定かではないのですが、本日昼頃に迷宮からモンスターが溢れ出るそうです」

 ざわめきが広がる……。


 俺は負けないようにさらに大きな声を出す。

「私は皆さんを避難させるために、この場を設けました」

「それは事実なのか、今までそんなことはなかったぞ」


「おっしゃることはごもっともです。ですが、もしモンスターがでなかった場合は徒労に終わったとカニ汁に免じて許して下さい」

 ざわめきがやまない……。やっぱり失敗だったか……。


「もうカニ汁は飲んだんだからゴチャゴチャ言わないで、この人の話を聞いてやりなよ」

 料理おばさんがみんなを叱った……。


 ありがとうございます。俺だけでは無理だったな……。


「まぁもう食っちまったからな。俺たちは何をすればいいんだ」


「戦える者は町の周辺の警護、戦えない者はここに残り私たちの仲間の指示に従ってください」


「それでわざわざ武術大会を開催するから装備を着て来いって宣伝をしていたのか」

 みんなが笑っている。これは俺がギラーフに頼んだことだ。





(迷宮化まであと6分)


 説明が終わったところで、切り出した。

「それじゃ出発しましょうか」



「おい!あれはドラゴンじゃないのか」



 俺も指が示す方を見るとそこには1頭のドラゴンが町に向かって飛んでいた。


 ステータス表示で見ると『青田イカリ』の名前が表示される。


 そして町の上を旋回すると丘に向かって飛んできた。


 住民に緊張が走る。



「仲間かどうかはわかりませんが、とりあえず、知り合いです」


「へぇー、住民を避難できたのか、君すごいねー」


 ドラゴンがゆっくり下りてくる。


「つい5分前に話したところだけどな……」


「その割にはきちんと装備をしている人が多いようだけど」


「そんなことよりこれからどうするんだ」


「あと3分ぐらいで迷宮化されると思うから、僕は迷宮前に陣取るよ。それじゃまたね♪」


「俺たちも町に向かう。あと3分じゃギリギリそうだが……。気合い入れていくぞおおおお」

 俺はみんなに声をかけた。

「「「「「おおおおおおおおおお」」」」」


 ドラゴンの登場でみんながまとまった……。

 武器欄の( )内は元の装備です。炭鉱迷宮のための一時武器を使用中。

――――ステータス――――

 名前 緑野赤

 種族 人間

 性別 男

 素質 天才

 クラス 獣使い(村人)

 レベル 19(1)


 HP 230/230(+10)

 MP 0/0(+10)

 SP 410/410(+10)


 筋力 5(+12)

 体力 5(+3)

 素早さ 5(+6)

 かしこさ 5(+3)

 モンスターの友 115(+5)


 残りポイント 0

――――――――――

 クラス特性

・モンスターをテイムできる。

・獣系のモンスターのテイム確率上昇、また獣系のモンスターの能力上昇(上昇率はレベル依存)。

――――――――――

 称号(耐性、能力上昇、地形効果、感知の順)

・スライムの友達(衝撃耐性(小))

・ゴーレムの友(物理耐性(中))

・フェアリーの友(火耐性(小))

・魔法使いの友(魔法耐性上昇(小))

・マンドレイクの友(幻惑耐性)

・キノコの友(毒耐性(小))

・コウモリの友(超音波耐性(小))

・オークの友(筋力上昇(小))

・オーガの友(筋力上昇(中))

・ゴブリンの友(パーティ戦能力上昇(小))

・エスカルゴの友(雨天能力上昇(小))

・ハムスターの友(夜間能力上昇(小))

・大サソリの友(砂漠能力上昇(中))

・貝の友(水中能力上昇(小))

・柱の友(不動能力上昇(小))

・アントの友(縄張り感知(小))

 取得順

・ネコ族の友(暗闇耐性)

・リス族の友(素早さ上昇)

・ヒツジ族の友(睡眠耐性)

・レッサーパンダ族の友(食肉目)

・ハリネズミ族の友(危険感知)

・人間の友(身体能力上昇(小))

・ユニコーンの友(神聖耐性上昇(中))

・オオカミの友(個人戦能力上昇(中))

・オオカミの友達(パーティ戦能力上昇(中))

――――――――――

 装備 ※武器/盾/服/アクセサリー

・鉄の大剣(鋼鉄のレイピア)/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし

――――――――――

 所持金

・3万4395モール

――――――――――

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

・パンダ(♂/良い/19)

 武器:鉄竹槍(攻撃力+30)

・ジャイアントサソリ(♀/良い/15)

 武器:銅球(攻撃力+50)

・オーガ(♂/普通/17)

 武器:ハンマー(鋼の斧(攻撃力+35))

――――――――――



――――――――――

 奴隷 ※名前(種族/性別/素質/クラス/レベル)

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

☆リズール(ネコ族(ラグドール種)/♀/普通/魔法使い/16)

 魔導の杖/なし/軽装の鎧/お守りのリボン

・ゴーレム(♂/普通/17)

 武器:なし

・ブルースライム(♀/良い/18)

 武器:鉄のキバ(攻撃力+15)

 従属:ミニスライム(子供)×8匹


☆ギラーフ(リス族(シマリス種)/♀/普通/盗賊/14)

 鉄の大剣(忍刀)/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし

・石アント(♂/普通/7)

 武器:なし


☆モズラ(ヒツジ族(サウスダウン種)/♀/普通/錬金術師/14)

 自動装填ハンドボウ(SP使用)/なし/軽装の鎧/なし


☆ビエリアル(レッサーパンダ族(レッサーパンダ種)/♀/普通/聖職者/15)

 聖導の杖/なし/軽装の鎧/なし

・オーガ(♀/普通/13)

 武器:ハンマー(金棒(攻撃力+12))

・ハムスター(♂/普通/13)

 武器:鉄のキバ(攻撃力+15)


☆エヴァールボ(ハリネズミ族(パイド種)/♀/大器晩成/鍛冶師(ハリネズミ)/8(8))

 鉄の大剣(鋼の剣)/鋼の盾/鉄の鎧/なし

――――――――――



――――――――――

 同居人

☆ミーナ(人間/女/良い/村人/8)

 短剣/木の盾/皮の服/なし


☆エリス(人間/女/普通/村人/8)

 短剣/木の盾/皮の服/なし


☆アンジェ(人間/女/普通/料理人/6)

 鉄の包丁/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし

・魔法使い(土)(♀/普通/9)

 武器:鉄のステッキ


☆フローラ(ユニコーン族/♀/普通/神聖術師(ユニコーン)/6(10))

 鉄のステッキ/なし/軽装の鎧/なし


☆キーリア(サル族(リスザル種)/♀/普通/村人/8)

 短剣/木の盾/皮の服/なし

・フェアリー(♀/普通/9)

 武器:鉄のステッキ


☆リアラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷結術師(ツンドラオオカミ)/6(10))

 鉄のステッキ/なし/軽装の鎧/なし


☆ナイラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷狼(ツンドラオオカミ)/6(10))

 鉄の剣と鉄のナイフ×10本/丸鉄の盾/軽装の鎧/なし


☆ウーリー(ウサギ族(ホーランド・ロップ種)/♀/普通/村人/5)

 短剣/木の盾/皮の服/なし

・石柱(♂/普通/8)

 武器:なし


☆コーシェル(タヌキ族(エゾタヌキ種)/♀/普通/村人/5)

 短剣/木の盾/皮の服/なし

・ゴーレム(♀/普通/6)

 武器:鉄のメリケンサック(攻撃力+25)

 防具:銅板の鎧

――――――――――

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