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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第6章 子育てします。
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幕間:一六階層(ミーちゃん視点)

 ペコペコに乗った英雄さんたちを見送った直後。

「さて――別れを悲しんでいる暇はありませんよ。私たちには私たちのすべきことをしに行きましょうか……」

 クラリーさんがくれたガラス装備。町の英雄さんが残してくれた岩スライムたちとペコペコたち。私たちには仲間がいる。


 テイムモンスターを迎えに家に戻り、そのまま一六階層に来た。

「まずはガラス鉱石を五個食べさせましょ」

 この五個で家が建つぐらい高価な品なのに……。

 でも、約束をした。一日の最低ノルマはガラス鉱石四五個。

 鉱石を食べ終えると岩スライムの見た目が透明なガラスに変化した。

 透明になっても、目は黒いみたい……。空中に目が二つ浮いていてなんだか怖い。

「見失わなくて――いいかな?」

 みんな苦笑いだ。

「さぁ行こう!」

〈盗賊〉の子がトラップを解除。


 部屋を移動する。

[石芋虫]、[岩酒]、[石蛙]、[石オーク]、[岩ゴブリン]

「火魔法撃ちます!」

 開幕で壺型モンスターを爆発させて数を減らす。

「芋虫に注意だよ」

 もう一〇〇部屋以上経験済み。モンスターの手の内は熟知している。

 この階層以外では戦えないかもしれないけど、この階層だけなら戦える。

「ペコペコは芋虫のお腹を蹴りあげて! 岩スライムは見えない壁でモンスターの進行を遅らせてね!」


 芋虫はペコペコが二体で戦っても倒せなかったので、剣や槍でトドメを刺した。

 オークの叫びはもう平気だけど、一瞬の怯みはどうしても……。

 石の蛙は大丈夫なのに、普通の蛙は体表がヌルヌルしていて気持ち悪い。


 五分後。

「一部屋目クリア~」

 みんな自分たちだけで倒せた充実感よりも疲労の方が大きい。

 前衛は大の字で寝転がって、息を吸う。

 後衛はテイムモンスターの指示だけでいいけど、こっちは同時に武器で戦わなくてはいけない。

「芋虫が動かなくなっても三分間の()()があるし、岩スライムたちは全然ダメージを食らわないから助かるね」

 攻撃は盾で受ければ無傷だ。あの人たちと比べると雲泥の差だけど、仲間だけで充分に戦えている。

 休憩を取るついでに作戦を変えた。ペコペコの指示は三体ずつ後衛に任せる。岩スライムは自走式の壁だから一緒に動けばいい。


 その後、五分戦って一〇分休むを繰り返して、ノルマの五部屋を回った。約半数は鉱石を落とさない。

 全部が鉱石を落とせば三部屋で充分なのに……。


 文句を言っても仕方がない。それでも初日から目標を大幅に超える二〇部屋を探索する事ができた。

 終わる頃には全部倒すまでに五分もかからなくなったし、休憩時間も少なくてよくなる。

 これがレベルアップなんだ……。


 一階層から四階層までを往復していた時には実感できなかったけど、今ならわかる。私たちは強くなっている。


 入口で迷宮都市の子供たちとすれ違った。これから武器だけ鋼装備に変更して、六階層から探索を開始するそうだ。

 今日中に一〇階層を突破するらしい。

 昨日は護衛を頼まれたけど、道案内に等しかった。

 鉄装備だった頃の私たち九人よりも迷宮都市の子供たち九人の方が探索速度が早い。


 弓の子と入口の扉を開ける子だけが町に残っていた。

「迷宮都市にここの貧民街の子供たちを連れて行き、育成する許可をもらったので、人集めを手伝ってもらってもいいですか?」

 弓の子は私たちの探索を終えるのを待っていたようだ。

 クラリーさんから話は聞いている。

 私たちも一度、迷宮都市で色々な種類のモンスターと戦った方がいいと言われた。

 ここの貧民街の子供たちは知り合いが多い。自分たちの事で精一杯だった私たちには全員を救うことは出来ないからずっと九人でやってきた。

「はい。カニ汁を配りましょう!」

 丘の上で食べたカニ汁は今でも忘れない。

 私たちの運命はあの日から続いてる。

「私たちの思い出の食べ物は〈肉の串焼き〉ですけど、育った場所で違うんですね」


 それから貧民街でカニ汁を配って、二六人の子供たちを集めた。

 私たちがクラリーさんに声をかけられた時は半信半疑だったけど、今回の子供たちにそんな子はいない。

 実際に私たちがここから巣立っているのだから……。

「次回のモンスター排出が終わってからの出発の予定です」

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