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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第1章 奴隷少女を購入します。
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デート

 丁度戦いが終わり、安全が確認されたところでスライム軍団がドロップアイテムを拾いに四方八方に向かって行く。この辺りは適材適所だ。

 ミニスライムたちはドロップアイテムにたどり着くと、上に乗っかり、体内に取り込み回収する。

 小さかった雪玉サイズが取り込んだ分だけ大きく膨らんで変形していた。


 俺は絶叫をあげて狼狽(うろた)えているリズを地面に立たせる。

 涙目で必死にペコペコ謝ってきた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「大丈夫だよ」

 頭をなでるけど、今にも目から涙が落ちそうだ。

 すごい近くで叫び声を聞いたため、鼓膜が破けるかと思ったが、レベル補正でもあるのか、体は意外にも丈夫だった。

 それでも耳がキーンッとなっている事には違いない。

 リズの声量はオペラ歌手並みなのか?

 そんな事を考えつつも、頭の中ではデルタ地帯が何度も再生されている……。本日二度目の眼福。


 うん。この子を買って本当に良かった。ラッキースケベ体質付きだ。

 昨日買ったばかりなのに、イベントの発生率が非常に高い。

「それと助けてくれてありがとうございましたニャ。怖くて動けなかったニャ……」

 スカートの裾を握って、顔を俯かせている。戦闘奴隷として買われたのに、動けなかった事を恥じている感じだ。

 最初から強い人なんていない。ゆっくり強くなってくれればそれでいい。

 頭に手を置きながら、もう一度呪文のように唱えてやる。

「大丈夫だからな」

 俺の声が届いたのか、顔を上げるが……。

 まだ、この世の終わりのような表情は変わらない。


 これから一緒に闘う仲間なんだから、助け合うのは当たり前なんだ……。

 今回の一件はパンダ様が招いたものだけど、戦闘を繰り返せば必ずピンチはやってくる。早めに説明する機会が訪れただけ……。

 抱きしめながら言い聞かせる。

「俺をもっと頼ってくれてもいいぞ」

 恐怖体験後の優しい言葉。


 防具越しでも、強張(こわば)っていた体の力が一気に抜けていくのがわかる。

「はいニャ~」

 やっと笑った。それも嬉しそうに。

 腕試しに来ただけなのに、ちょっと怖がらせてしまった……。

 今日はもう迷宮を出て、気分転換をさせよう。

〈脱出アイテム〉がないので、来た道を逆に歩いて帰る。

 二階層は人が少なかったのに、一階層に戻ると人だらけ……。

 自分たちの縄張りがあり、沸いたモンスターを倒す決まりでもあるのかもしれない。テイムモンスターを連れていないソロが多い


 迷宮を出て、宿屋へ真っ直ぐ戻る。

「ただいま」

「早かったね」

 早かったのはリズのせいだ。またリズがシュンッとなってしまった。オバサン――空気を読んでよ……。

 俺はすぐに話題を変える。

「ゴーレムが追加された。いくらになる?」

「餌は砂、石、岩等を食べるから無料でいいよ。ゴーレムは大きいから場所代だけはもらおうかね」

「わかった」

 宿舎代に追加で五〇モールを払い、テイムモンスターを全て宿屋に預けて休憩させた。


 今日はこれからリズと二人で迷宮都市を散策する。

 可愛い女の子と二人っきりで歩く! これはデートだ!

 デートである以上、やはり恋人繋ぎをしたい。

 こういうのはタイミングが大事だ……。

 隣を歩くリズを観察していると、何もないところで転びそうになった。

 手を繋ぐ口実には最高のシチュエーションだったので、利用させてもらう。

「危なっかしいな。ほら、これでもう大丈夫だろ?」

 ギュッと力強く手を握る。小さな手が俺の手に収まった。

 リズは驚いて繋いだままの手を、ジーッと見つめる。

「はいニャ~。それに温かいニャ!」

 笑顔が眩しい。その純粋な笑顔は俺のドス黒い心にダメージを与えかねない。


 あれ? 手をギュッギュッとしても、プニプニしていない……。

 肉球は? ネコの必須装備。肉球は?

 手を離して、リズの手を広げる。普通の人間の手のひらと同じだ。触っても肉球がない!

「肉球は……?」

「えーっと……。寝起きすぐはあるニャ……。でも、起きて三分もするとなくなるニャ。だから普段は――ないニャ」

 起きてすぐには肉球があるとか。何その異世界肉球。

 ってそれ――ただのムクミじゃない?

 これはリズより先に起きて確認する必要があるな……。

 待っていろ俺の肉球!


 装備関係は午前中に全て終わらせたので、食べ歩きをメインにした。

 昨日着いたばかりで、どこに何屋があるのかわからない。総合案内所が欲しいけど、自分で探すと穴場が見つけられて楽しそうだ。腰を据えて活動するなら一軒ずつ巡る事もできるだろう。

 まずは出店が並ぶ通りを歩く。人通りはそれなりだけど、食べている人よりも匂いを楽しんで我慢している人が多い。

 この世界の生活水準がどの程度かわからないが、もしかしたら〈肉の串焼き〉の三〇モールすら払えない人がいるかもしれない。

 売っている品を見ても〈肉の串焼き〉ばかりで〈魚の串焼き〉は売っていなかった。

 てっきり〈肉の串焼き〉があったから、川で釣った魚に木を刺して、焚き火で焼いたような〈魚の串焼き〉を売っているかと期待したけど、空振りする。

 ネコは肉より魚の方が好きそうだから喜ぶかと思ったのに……。


 さっきは〈肉の串焼き〉を食べたため、今度は〈野菜スープ〉(一〇モール)を買って食べることにする。

 薄い木のお椀に八割ぐらい入っていた。リズを見ていると箸のような棒を一本使って器用に食べている。

 肉が入っていない代わりに野菜のエキスがたっぷりのスープ。栄養的には〈肉の串焼き〉よりも断然いいと思う。

「リズは好き嫌いはないのか?」

「食べる物に困ってたから、食べられる物は何でも食べてたニャ」

 確かに孤児院で好き嫌いはできないか……。

「肉と魚はどちらが好きなんだ?」

「どちらも好きだニャ~、さっき食べたお肉もおいしかったけど、このスープもおいしいニャ~」

 肉でも魚でも大丈夫……。リズは何でも美味しそうに食べる。小腹を満たしたところで移動した。

 俺が歩き出すと、まだ繋いでいない手をジーッと見ている。俺が手を繋いでやると嬉しそうに微笑んだ。


 錬金屋の中を見て歩く。

〈脱出アイテム〉はこれからドンドン必須になる。

 予備も含めていくつか買っておいてもいいだろう。

〈脱出アイテム〉を五個→一〇〇〇モールで購入。

 掘り出し物がないか探していると、魔法耐性を微上昇させるリボンが売っていた。

 アクセサリー枠に分類されるので、大切な枠をつぶしてまで、装備する人はいないようだ。

〈お守りのリボン〉を一個→四〇〇モールで購入。

〈お守りのリボン〉をしっぽの先端から五センチぐらいのところに結びつける。

 うちの娘は、しっぽにリボンが付いて可愛さが増した。

 リズは自分のしっぽを掴んでまじまじとリボンを見ている。

「こ、これはすごいニャ~、まるで蝶々が付いてるみたいだニャ~、ありがとうございますニャ~」

 ネコって蝶々好きだもんね、イメージだけど……。


 すっかり上機嫌になって擦り寄ってくるリズをなでながら、屋台で夕食にする。

 乾麺を茹でたところにぶつ切りの肉が乗っているだけ。汁がなく、ソースをかけて食べるらしい。

 俺としては棒一本じゃ食べにくくて仕方ない。

 二人で一六〇モール。のはずが、まだ食べたそうだったので、四〇モール分追加してもらった。

 ラーメンで言う〈替え玉〉だ。小さい体なのによく食べる。


 明日からは人の少ないもう少し上に進もうと思う。

 とりあえず、五階層突破を視野に入れ、冒険者ギルドにある無料の地図で正規ルートの確認をした。


 夕方、暗くなる前に宿に帰り、桶に入ったお湯で体を拭く。日本人だから一度お風呂を思い出すと、無性に入りたくなる。

 もっと収入を上げれれば、いつか……。

 背中はリズが拭いてくれた。


 お返しにリズの体を拭いてやらなくては……。これは恩返しだ! 拭く場所は背中だけではないだろうが……。

「ご主人様に拭いてもらうなんて、そんなのダメニャ~」

 よく考えろ俺! 今こそ脳をフル回転させろ。


 ……。


 …………。


「リ、リズが丁寧に拭いてくれたから『ありがとう』の気持ちを返したいんだよ」

 うまい理由が思い浮かばない……。どうしよう……。

「はいニャ~」

 あれ? ちょろインだった……。


 背中の毛は抜けやすいからゴシゴシせずに、タオルを当てて汚れを吸い出すイメージで……。じっくり丁寧に……。

 毛並みがやわらかい。

 頭とはまた違う毛並みだ。


 いよいよベッドへ。

 この部屋はベッドが二つあります!

 リズは入口側のベッド、俺は窓側のベッド。

「おやすみ」

「おやすみなさいニャ~」

 二分ほどベッドの中でモゾモゾすると、リズがこちらを見ている気がする。

 俺がリズの方を向くと、甘えた声が飛んできた。

「ご主人様……、一緒に寝て欲しいニャ~」

 せっかくベッドが二つある部屋なのに……。

 リズも寂しいのかな?

「いいよ。おいで」

「ありがとうございますニャ~」

 リズはベッドに入るなり、体を密着させてスリスリしてくる。

 動くたびに甘い匂いが俺の鼻腔を刺激する。ドキドキが止まらない。

 今夜は抱き枕を堪能することにしよう。


【称号:ネコ族の友(暗闇耐性)を取得しました】

※称号はその種族と親密になった場合にもらえます。また関連する種族の能力が上昇。


 ゲーム時代にはない称号をゲットしてしまった。

 これ系統の称号を増やし始めたら俺は「爆発しろ」って言われるだろうな……。

――――ステータス――――

 名前 緑野赤

 種族 人間

 性別 男

 素質 天才

 クラス 獣使い

 レベル 一一


 HP 一五〇/一五〇

 MP 〇/〇

 SP 二五〇/二五〇


 筋力 五

 体力 五

 素早さ 五

 かしこさ 五

 モンスターの友 七五


 残りポイント 〇

――――――――――

 クラス特性

・モンスターをテイムできる。

・獣系のモンスターのテイム確率上昇、また獣系のモンスターの能力上昇(上昇率はレベル依存)。

――――――――――

 称号

・スライムの友(衝撃耐性(小))

・ネコ族の友(暗闇耐性)

――――――――――

 装備 ※武器/盾/服/アクセサリー

・細剣/木の盾/皮の服/なし

――――――――――

 所持金

・三万七八九九モール

――――――――――

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

・パンダ(♂/良い/一三)

 武器:鉄竹

・ブルースライム(♀/良い/一一)

 武器:鉄のキバ

 従属:ミニスライム(子供)×八匹

・オーガ(♂/普通/六)

 武器:金棒

――――――――――



――――――――――

 奴隷 ※名前(種族/性別/素質/クラス/レベル)

★リズール(ネコ族(ラグドール種)/♀/普通/村人/四)

 装備 ※武器/盾/服/アクセサリー

・短剣/木の盾/皮の服/なし

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

・ゴーレム(♂/普通/三)

 武器:なし

――――――――――

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