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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第6章 子育てします。
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二一階層リベンジ

 子供たちとの予定は危険がないように後ろを歩きながら必要な称号を得るだけなので、急遽パーティー構成を変更してもらい、昨日の一三人を二つに分け、一〇人ずつを加えた二パーティーを魔法使いの出ない一二階層まで送迎した。

 魔法使いさえいなければゴーレム隊が機能する。


 送迎が終わると俺は家族と二一階層に来た。


「前回よりも武器は軽く強くなったけど、大岩さん、石柱君、狼ちゃんがいないんだからな? わかってるのか?」

 もちろんクラリーたちもいないけど、もともとあの子たちは二一階層向きの装備じゃなかったため、大した戦力ダウンにはなっていない。

 レベル上げを急ぐと怪我のもと。この階層ではそれが命取りだぞ……?

「わかってますから、一分だけ待って下さい」

 リアラが氷結魔法で氷狼を五体作った。【魔法使いの大家族】まで称号を取得したおかげだろう――片手でポンポン作る。

 氷狼の操縦者は〈人形の魂〉。つまり俺の分身だ。一体はリアラが、一体はナイラが、一体はなぜかリズが騎乗する。

「準備が終わりました。それでは行きますか……」

 リアラが先頭でトラップを踏むようだ。

 横から飛び出してきた毒液っぽい紫色の液体が氷狼の足にかかり、白い煙が出るが、全く見向きもしていない。


 団体戦開始。

[一角スライム]、[爆弾サボテン]、[ドーベルマン]、[ガーゴイル]、[スカイワーム]

「少しの間、寝ているニャ!」

 氷狼の上で立ち上がったリズが風の初級Lv九の三段合成を放つ。これはフーリエンの建物の上半分を吹き飛ばした魔法だ。

 正直、火の魔法よりは安全とはいえ、密室で使う魔法ではない。

 なるほど、みんなと同じ高さから撃つと家族を巻き込むから、わざわざ氷狼の上から放ったのだろう……。

 二一階層のモンスターはアイーリスの妖精魔法【暴風壁】ですら近付けなかったのに、その威力を軽く超えた魔法を耐えられるわけがない。

 全モンスターが向こう側の壁に叩き付けられた。

 戦国時代の合戦前の横一列に整列した戦場のように、中央は綺麗に何もない。

「先制攻撃は成功したニャ! あとは練習通りにやるニャ!」

 リズが氷狼からジャンプして下りると、氷狼五体が一斉にモンスターに向かって走り出す。

 まだ風魔法から立ち直ったモンスターはいない。

 寝るってそう言う意味か……。


 リアラは移動している間に動きを止めているサボテンの膨らんだお腹部分に氷矢を飛ばし、どんどん爆発させていく。

 ナイラは一気に距離を詰め、ガラス版のハリボテランスの長さを活かして空中に逃げたガーゴイルを次々に刺す。

 フラフラ飛んでいるガーゴイルは無防備な胸を突かれて絶命。

「いいところを全部持って行かれるのは癪ですね」

 コーシェルは刀を鞘に納めたまま、肩にトントン当てて状況を見守っている。

「まぁまぁ、大きい標的がいれば、こちらに注意が向くことは少なくなりますから……」

 アンジェは慣れた感じでコーシェルをなだめながら、その時を待つ。

「今です!」

 アキリーナが声をかけて三人同時に走り出した。


 ゲーム風に言うと時間差を付けて、ヘイト調整をしているようだ。

 では――なぜ、一番ヘイトを稼いだはずのリズが狙われていないのか……。理由は簡単だ。あいつは自分の宝箱の中に避難して()()にはいないからだ。

「そろそろ出ても大丈夫ニャ?」

 宝箱から顔だけ出してキョロキョロ周りを確認している。よく考えられている作戦なのに、なんだかここだけ見るとバカみたいな絵面なんだけど……。


 きっと何度も何度もこのシチュエーションを練習したから、探索が思うように進まずレベルが上がっていなかったんだ。

「残り半分になるので、全軍突撃ですよ」

 フローラに言われて俺も掃討戦に参加する。

 最初の風魔法で怪我をしたモンスターが多いのか、動きが悪い。こちらは武器が軽くなったから一方的だ。


 一角スライムが死ぬ前の捨て身で氷狼に角を突き立てるが――全く刺さらない。

「称号のおかげで、硬さが増したようです」

「そうみたいだな……」

 前回は角が深々と刺さっていたけど、今回の氷は見た目は変わっていないのにまるで別物のようだ。

「ガラスの切れ味でも試してみますかねっと」

 コーシェルがわざとスライムの黒い角を縦に真っ二つにする。

 何度も戦っていれば、角を攻撃する機会もあるだろうけど、初戦で刀が折れたらエヴァールボが泣くぞ。

「完勝ニャ!」


――――――――――

 ドロップアイテム ※売却価格は不明


・爆弾サボテン→サボテンのかけらと一七三モール

・ドーベルマン→ドーベルマンのヒゲと二八五モール

・ガーゴイル→悪魔の血と一三二モール

・スカイワーム→ワームの肉と一九〇モール


――――――――――


「モズラ、錬金術に使えそうな物はあるか?」

「そうですね……。どれも聞いたことがないため、メインにならない品では調べようがありません。将来、創製術で使えるかもしれないので、宝箱に仕舞っておきます」

「それがいいな」

 今度はアンジェの方を向いて聞く。

「〈ワームの肉〉はゲテモノだよな……?」

 円周が五〇センチ、長さが三〇センチのハムみたいな形状をしている。

 薄くスライスさえされていれば、わからないから試食出来そうではあるが……。

 料理担当はアンジェだ。アンジェが食べられると判断すればそれは食卓に並ぶ。

 日本ではゲテモノでも外国では普通に食べられている食材はいくらでもある。

「次にモンスターが一体だけ残った時に、食べさせてみて、状態異常にならない事を確認してから判断します」

 犬の国の〈料理人〉みたいに客でいきなりテストするわけじゃなくて少しだけ安心。

 ビエリアルもフローラもいるから、もし状態異常になってもすぐに治りそうだ……。


 アンジェが〈ワームの肉〉を一口大に切って、準備をする。

 後ろでは静かに機会を窺っている奴らがいた事を俺たちはまだ気が付いていなかった。


 そしてその時はすぐに訪れる。

 アンジェがモンスターに向かって投げた肉を空中でペコペコ隊がキャッチした!

「食べられます」

 その判断は待ってくれ。鳥系はミミズ系が好きって相場が決まっているんだよ!

「ペコペコが状態異常にでもなったのかニャ?」

 俺が項垂れているとリズが声をかけてきたが、俺は首を横に振るだけで何も言えなかった。

 郷に入っては郷に従え。


 五部屋回ると、ジャイアントに遭遇。

 そういえばケーレルがたくさんいるような言い回しをしてたよな……。

 ジャイアント爆弾サボテン。

 今までで一、二を争う残念なジャイアントだ。

 せっかくリズの風魔法を吹き飛ばされずに耐え切ったのに、リアラの氷矢を防げずに爆発した……。

 きっとテイムできたとしても、最速で死なせてしまう予感がある。


 今日は二一階層をハイペースで進む。主にリズの開幕の風魔法が探索スピードを上げていると思う。

 気になったので、なぜ風の中級魔法を使わないのか理由を聞くと、アイーリスが内緒アピールをしながら『飛ばされたのは内緒にゃん』っと言っていた。

 なるほど。風の妖精が付いているのに、飛ばされたのか!


 お昼休みの前にレベルを見ると希望のレベルまであと二つになっていた。モンスターが一段階上がったせいで、レベルの上がりが早い。


 昼食はゲテモノタイム……。

 見た目はサイコロステーキのようになっていてとても美味しそう。こういう時でも最初の一口目が俺なのはどうにかしてもらいたい。

 一応生肉で平気なら大丈夫だろうと、焼いた肉をいきなりアンジェが毒味兼味見をしている……。

「いただきます」

 噛むとパリッと音がして肉汁がジュワッと出てきた。あれ? ソーセージを食べている印象がある。

 不思議だ……。焼くと表面に膜ができるのか?

〈オークの肉〉は豚肉、〈クックーの肉〉は鶏肉、〈ワームの肉〉がソーセージ?


 今日の探索終了時。予定よりも一日早くレベルが到達できたので、急いで旅の準備を進める。

 家の契約は貧民街の弓の子と二刀流と軍師君に引き継いだ。これからは三人で話し合って方針を決めるそうだ。


 キーリアは庭のリンゴとサクランボの木を二本ずつ残し、ミントを半分っと言っても大量にあるので、株を間引きした側を、宝箱菜園に移動していた。

 宝箱の中に招待されたので入ってみたが、どうやらレベルが二七なら、二七メートル×二七メートル×高さの予想は二七メートルで、レベルでサイズが決まる空間。壁は白だ。

 これなら馬車の荷台ぐらい簡単に入る……。

 キーリアの作った菜園の土は庭の土に肥料を混ぜた物。宝箱の中では太陽の光が当たらないが〈農婦〉のスキルで植物の成長に必要な光量は出せるそうだ。

 犬の国ではミントの葉が不足して薬の補充に悩まされたから、とても助かる。


 生き物が入っていない場合には重力があるのかどうかは確認ができないのでわかっていない。

 手を入れると出したい物が出せるのに、中に入ると庭園が作れる便利な宝箱ということだけはわかった。このテイムモンスターは謎が多い……。

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