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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第6章 子育てします。
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狼ちゃん

 一五階層の初物は[ゴブリンライダー]

 低階層に出てきたゴブリンが、これまた低階層に出てきたウルフの上に乗っている。

 ゴブリンは左手で手綱を握り、右手の長槍で攻撃するようだ。

「リアラがいるニャ!」

 絶対に言うと思った。

[サソリ]、[アリクイ]、[プラント]、[グリズリー]、[ゴブリンライダー]


「私は私です……」

 あんなのと一緒にされると不愉快だと言わんばかりだ。

 乗り物に乗るってだけなら、ギラーフがウリボー君に乗っていたからな……。


 ゴブリンライダーは乗っているゴブリンをウルフから落とすと、ゴブリンとウルフにモンスター名が変わるようだ。

 ただ乗ってただけじゃないかよ!

 一体が二体に分かれてズルい……。


 一応ゴブリンの行動理念は『ウルフに乗って戦う』らしく、別の奴のウルフだろうと気にせず乗って仲間同士でケンカ(戦い)を始めていたりする。

「強いのか、弱いのかわからない」

 警戒して損した。所詮ゴブリンはゴブリンということだ。


 Bグループは走って次の部屋に向かう。またまた氷の狼に乗ったリアラが先行している。

 ゴブリンライダーを目撃したせいで、指示を無視して暴れないよな?

 次の部屋に行ったらわかるか……。


 いつも通りモンスターを片付けて急いで進むと、入ってすぐのところに氷の狼が『伏せ』をしていた。一応戦闘前に乗り捨てたようだ。頭に血が上っていなくて良かった。

 きちんと氷塊(ひょうかい)を飛ばして戦っている。今度は後衛として戦うようだ。

 戦闘時間は延びるが、それでいい。


 七部屋進み、次がボス部屋というところで一度休憩をはさむ。これは迷宮内の時間経過でテイム戦の発生率が高くなる仮説を信じて行われている。

「リアラは氷塊をモンスターに飛ばして戦っていたけど、剣や槍の形をしている方が殺傷力がありそうだが、どうしてだ?」

「先を尖らせる武器は一つ成形するのに、時間がかかるため、使い捨ての氷は氷塊にしているだけです」

 ナイラのように完全に前衛に徹するなら武器に氷属性を纏わせて戦えばいいのか……。


「よし、ボスを倒して〈肉の串焼き〉でも食べに行くぞ!」

「「「おー!」」」

 一五階層のボスはジャイアントゴブリンライダー。

 リアラが取り巻きを無視して、いきなり巨大な氷剣を飛ばし、上に乗っているジャイアントゴブリンの左胸をあっさり貫き絶命させた。

 やっぱりお前怒ってるだろ!

 再び魔法を練っている。

「リアラ落ち着け! 下のウルフの方はテイムするぞ!」

 本当はボス自体が光っていたのに、俺が声をかける前にリアラが暴走したため、上に乗っていたゴブリンはすでにお亡くなりになった。

「嫌です! ゴブリンを乗せるようなプライドの欠片もない狼など私は認めません!」

 俺は羽交い締めにして強引に止める。

「離してください!」

「あのウルフをテイム出来ればリアラとナイラが強くなれるぞ」

「えっ? それは本当ですか?」

 暴れていた動きを止め、上目遣い――ではなく、普通に顔を向けて聞き返してきた。

 迷いが生じて魔法のエネルギーが手から分散していく。

「あぁ。すでに検証済みだ」

 ウルフと狼で呼び方は異なるが表しているものは一緒だ。

 リアラは深呼吸して落ち着く。

「わかりました。乗りこなしてみせます!」

 なんだそのロデオ発想。ウリボー君の時と同じ扱いか?

 落ち着いたようなので解放する。


 乗り手を失った巨大ウルフは遠吠えを上げて仲間を召喚した。左右に巨大ゴブリンが一体ずつ出現。

 しかし、どちらが乗るかで巨大ゴブリン同士のケンカが始まる……。

「いったい何がしたいんだ?」

 経験値を無限に稼げそうだが、リアラの機嫌がいつ悪くなるかわからないため、俺たち家族には一五階層は別の意味で鬼門だ。

 ドロップは低下層のモンスターと同じなので、わざわざ通う意味はない。


 巨大ゴブリンがケンカをしているため、乗り手がいない。巨大ウルフは追加で召喚を続ける。

 そしてまた召喚。また召喚。また……。

「おい!」

 計一〇回。二〇体の巨大ゴブリンが登場したところでMPが切れたのか、増えなくなった。それでも未だに遠吠えは続けられている。

「リアラ、寂しがってるんじゃないか?」

「わかってます」

「みんな、巨大ゴブリンは二体同時に倒せよ!」

 奇数にしたら漁夫の利を狙う者が出かねない。

 リアラという漁夫の利を狙う者が今動き出したが……。


 リアラは仲間同士で争っているバカな巨大ゴブリンを一瞥し、巨大ウルフの背中に乗った。

 乗り手が欲しかったためか暴れる様子がない。

 リアラが耳元で何かを囁くと、巨大ウルフはテイム前にも関わらず巨大ゴブリンを引き裂いて食べ始めた。

 理由はわからないが、モンスター同士の戦闘の場合、死んでも消滅せずにそのまま残る。

 これは蜘蛛をテイムした時に経験済みだ。

 片割れの巨大ゴブリンはリアラが氷結魔法で倒す。

 リアラは騎乗したまま頭を撫でて褒める。

 静かなので、俺が触れてテイムした。


【ジャイアントウルフ(改)(Lv一五)が仲間になりました】

【称号:大狼の友(夜間能力上昇(中))を取得しました】

 名前の(改)は低階層のウルフとは違うよ。って意味だろう。

・ジャイアントウルフ(改)(♀/良い/一五)

 さっそく称号をオンにする。

「どうだ? 能力は上がったか?」

 まだ同士討ちをしている巨大ゴブリンに氷結魔法を使う。

「身体能力は上がりましたが、魔法の威力はそこまで上がった感じがしませんね」

 魔法使いの称号のように、職業能力を底上げするタイプじゃなかったらしい……。

「私は氷属性の武器の威力が大幅に上がりました」

 ナイラが対になっていた巨大ゴブリンの腕を斬り落とすと、切り口から二〇センチ程が凍っている。

 HPを持続的に減らす〈凍傷〉の状態異常になったようだ。

 試し斬りが終わったので、そのまま斬り裂いていた。

「恩恵があって良かった」

「狼ちゃんはナイラの乗り物でいいですか?」

「あれ? リアラが乗らないのか?」

「私は自分で作れますから……」

「リアラがいいなら、それでもいいぞ。残りの巨大ゴブリンはもう倒してくれ」




 次回予告ニャ。

「あの乗り物が欲しいニャ!」

 リズ、ゴーレム先生と狼ちゃんを交換する。

「交換してもいいけど、リズなら三日で飽きるだろ?」

「えーっとそれは……。飽きさせる方が悪いニャ!」

 発想が新しいな。

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