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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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終焉

 氷の狼が陣営を広げている間、俺たちはたっぷりと休む事にする。

 連続戦闘は慣れているとはいえ、足元が砂で思っている以上に疲れが蓄積していた。

 それと時間がある今のうちに外壁に避難して戦場を移動する。

 せっかく作り上げた陣営だったが、ケーレルの話ではまだ敵が七〇〇体ぐらい押し寄せてくるそうだ。このままでは巨大モンスターに時間がかかっただけで、瓦解しかねない。

 ギラーフたちが何体倒したか知らないけど、こっちだけでも五〇〇体は倒しているはず。何が約一〇〇〇体だ。手付かず迷宮の方が排出量も強さもあって然るべきだった。


 みんなが外壁に上り、これから移動をしようとするとフローラが声をかけてくる。

「少しだけ……、少しだけここで休みませんか?」

 本当なら一秒でも早く移動して準備を整えたいところだが……。

 自分たちの動かなくなった人形を力強く抱き締める家族たち。みんなの視線が氷の狼の戦闘に釘付けだった。あそこで戦っているのは家族の魂だ。

「少しだけだぞ……」


 氷の狼一体に七体が群がっても、お構いなしで戦いを続けている。尻尾はとうの昔に魚に食い千切られ、四肢も徐々に細くなり始めていた。

 陣営を広げるために敵の中へ中へと進んで行ったため、もう〈人形の魂〉の回収は不可能だ。送り出した時からそれはわかっていた。俺は家族の命と〈人形の魂〉を天秤にかけたんだ。俺の分身もそれぐらいはわかっていたはず。

「すまん。そろそろ行くぞ」

 狼が無惨に殺される姿を見せたくない。


 しかし、俺たちが移動をしても、モンスターの群れは付いて来なかった。まるで、海亀が消滅したポイントを目指して進んでいるような……。

 いや、目指しているのか。

「リズ、あのモンスターが多いところに『獄炎魔法(中級三段合成)』だ」

「でも、あそこには氷の狼がいるニャ……」

「最後の力で敵を一ヶ所に集めてくれている。タイミングを外せば全てが無駄になるぞ!」

 家族がこの迷宮化の荒波から無事帰還できるように。ただそれだけを考えて行動してくれているのだと思う。

 だからこそ、ここで撃たなくてはならない。

 リズは涙を拭いて気合いを入れると魔法を練り始める。

「行くニャ!」

 少し離れた外壁の上から、敵の多い部分に向けて、リズが『獄炎魔法(中級三段合成)』を放つ。

 俺たちはリアラの氷壁で平気だったが、氷の狼はきっと相性が悪いため全滅しただろう。

 さすがに耐えられる距離じゃない。

 敵を集めてくれたおかげで二〇〇体は一気に片付ける事が出来た……。


「ここからが正念場だ」

 リズの魔法で全体的に敵を減らしてきたが、その多くはレベルが一〇程度の雑魚ばかり。

 火魔法の蓄積で、砂漠は所々が赤々と溶岩を思わせる熱を帯びている。そのあまりの熱量に進めないと判断したモンスターが海へと逃げ始めた。

 残すはレベル二〇以上の巨大モンスター(強敵)ばかり三〇〇体。

「リアラは外壁の内側に下りるための階段を作ってくれ」

「わかりました」

 俺たちがさっきまで陣営を展開していた裏側。リズが『獄炎魔法(中級三段合成)』を撃ち込んで脆くなった外壁の内側にたどり着いた。

「一〇分休憩の後で、外壁を破壊する。ここで敵を迎え撃つぞ」

「敵を招き入れるんですか?」

 フローラがとんでもないと言わんばかりだ。

 エヴァールボが壁の一角を指さす。

「どうせもうすぐこの壁は破壊されますよ。見て下さい。壁に亀裂が入っています」

 縦に大きなヒビがあり、敵の突撃で徐々にその亀裂は広がり始めていた。

「泣いても笑ってもこれが最後の戦闘だ。無理そうならすぐに退却する」


 腹ごしらえ。俺たちは呑気に巨大イカを焼いて食べる。

「味付けが塩以外に何もありません……」

 迷宮内でも美味しいスープを食べられるように料理をしてきたアンジェ的には、塩だけしか調味料がないのは許せないようだ。

 ちなみに塩は〈料理人〉のスキルで出している。

 スオレとリオーニスが〈大工〉のスキルで角材を出し、クラリーが薪割りの要領で巨大爪楊枝(つまようじ)を作成。爪楊枝の先端に薄くスライスした巨大イカを刺して、角材の焚き火で程よく焼いた。種火にはリズの火魔法が使われている。

「戦場で食べる晩餐だな」

 テイムモンスターにも水を飲ませて、生のイカを食べさせた。状態異常になっていないところを見ると、刺身でも食べられそうだ。

「魚も美味しかったけど、この白いブニブニも美味しいニャ!」

 時間がないとはいえ、厚みが三センチもあるイカ。パンダ様辺りなら丁度いいサイズかもしれないが、大きすぎないだろうか?

 最初からこういう物だと割りきっている家族は、それぞれ無言で頬張って肉厚食感にうっとりしている。



 休憩をはさんで、ステータスには表示されない疲労を回復できたところで動き出す。

「あまり大きな穴は開けないでくれよ」

 俺は大岩さん(鉛バージョン)を外壁の亀裂に向けて投げる。

 大岩さんがサイズを気にしたのか、小さいまま壁に衝突した。

 ゴルフボールの分だけ(くぼ)みができたとはいえ、外壁無傷!

「ごめん。俺が余計な事を言ったせいで……」

 第二球投げました!

 ドーンッと音を上げて、三メートルサイズの大穴を開けた。大岩さんはすぐにサイズを小さくして退却してきた。

 穴からモンスターが進入してくるのを素直に見ているだけでは芸がない。

「リズは穴に向けて火の竜巻だ」

「わかったニャ!」

 魔法が三回も通過すると、穴の周囲は赤々と熱せられ、サーカスの火の輪を思わせる。道であって、道ではない。

 っと満足していると外壁の上からモンスターが次々と降ってきた。

「何があった? 巨大タコがモンスターを投げてきたのか?」

 外壁に上っているわけではないので、詳細はわからないが、モンスターが向こう側から降ってきている事には違いない。

 二体、三体、四体と増えて倒す量よりも送り込まれてくるモンスターの方が多い……。

 さらにパンダ様が打ち返すが、方向がまずい……。

 外壁にぶつかり、三メートルの穴だけではなく、外側と内側からの衝撃で完全に穴の上が瓦解してしまった。逆三角形のように大きく広がった幅およそ五メートル。

 今度は上からだけじゃなく、五メートルの切れ目にどんどんモンスターが飛び込んでくる。

「一度壁を塞ぎます!」

 リアラが氷で壁の修復を始めた。残り四メートル。

「痛いニャ!」

 今度は何だ?

 後ろを振り返ると、少し離れた位置にいたはずのリズの手足を巨大イカが掴み、四方に引きちぎろうとしている。

「ダメだ。退却するぞ」

 しかし、フローラにリーダーを渡したままだった。


 痛恨のミス。もう間に合わない……。


「最後のお楽しみには合流できましたね」

 リズを掴んでいた巨大イカがスパンッと左右に分かれる。真っ二つに斬った? いったい誰が?

 イカの向こうにはギラーフが笑顔で立っていた。

「えっ? ギラーフ? 入口は?」

「向こうの戦いは終わりました。あとはここだけです。〈ガラスの剣〉を借りますね」

 棒立ちになっていた俺の手に手を重ねて、スッと剣を奪い去る。

「コーシェル、この〈ガラスの刀〉を!」

〈無刃刀〉を投げた時のように投げるが、その刃は巨大海老の頭を貫いて、消滅させた。

 コーシェルは使っていた〈鋼の刀〉を手放し、巨大海老の消滅により自由落下を始めた〈ガラスの刀〉が落ちきる前に柄を握り、勢いそのままに近くにいた巨大アワビを殻ごと一閃。

「ガラスの武器は攻撃力が下がらないようです」

 コーティングにもよるが、確かに(サビ)からは遠そうだ。海水に直接浸けるとどうなるかはわからないが……。

 ギラーフたちの登場で、状況が一変。浮き足立っていた足並みが揃い始めた。

「さすがにもうダメかと思った。フローラ、念のためリーダーと〈転移アイテム〉をこちらへ」

「はい」

 きっと俺は顔面蒼白になっていただろう。


 二〇分後。迷宮化の終焉を告げるように、俺の視界にはルーレットが表示した。

 これはゲームのイベントクリア報酬で、一番敵を倒したパーティーのリーダーに表示される。

『炭鉱の町アンダリオン』では青田がダントツの活躍だったから俺たちには縁がなかった。

 今回は――猫系の装備が多い……。

『にゃんころステッキ』、『にゃんころシールド』、『にゃんだるホーン』……。

 全部見たことも聞いた事もない。

 あ、『万能薬』もある。

 まさか、これで手に入れたのか?

 俺は軽い気持ちでルーレットを回す。

 どうせ、ここにも罠があるからだ。

 ボスを討伐していないパーティーがルーレットを回す場合、ゴミしかでない。

『お魚一年分』

 いらねー。外壁の外に大量に落ちてるわ!


 あー。バカらしい。

――――ステータス――――

 名前 緑野赤

 種族 人間

 性別 男

 素質 天才

 クラス 獣使い(農夫)

 レベル 二五(一)


 HP 二九〇/二九〇(+三〇)

 MP 〇/〇(+三〇)

 SP 五三〇/五三〇(+三〇)


 筋力 五(+一八)

 体力 五(+九)

 素早さ 五(+一二)

 かしこさ 五(+九)

 モンスターの友 一四五(+一〇)


 残りポイント 〇

――――――――――

 クラス特性

・モンスターをテイムできる。

・獣系のモンスターのテイム確率上昇、また獣系のモンスターの能力上昇(上昇率はレベル依存)。

――――――――――

 称号 ※章の最後に記載

――――――――――

 装備 ※武器/盾/服/アクセサリー

・ガラスの剣+一/丸鋼の盾+一/鋼の軽装鎧+一/身代わり地蔵の指輪

――――――――――

 テイムモンスター ※名前(性別/素質/レベル)

・パンダ(♂/良い/二五)

 武器:鉛竹槍+一

・ジャイアントサソリ(♀/良い/二四)

 武器:銅球

・ジャイアント岩スライム(♀/良い/二〇)

 武器:なし

 従属:岩スライム(♂/普通/二〇)

――――――――――



――――――――――

 奴隷 ※名前(種族/性別/素質/クラス/レベル)

★リズール(ネコ族(ラグドール種)/♀/普通/魔法使い/一九)

 魔導の杖/なし/鋼の軽装鎧+一/お守りのリボン

・ゴーレム(♂/普通/二四)

 武器:鉛のメリケンサック+一

・ブルースライム(♀/良い/二五)

 武器:鋼のキバ+一

 従属:スライム(混合)(混合/普通/二〇)×八匹

・オーガ(♂/普通/二四)

 武器:鉛のハンマー+一


★ギラーフ(リス族(シマリス種)/♀/普通/盗賊/二四)

 ガラスの刀+一/丸鋼の盾+一/鋼の軽装鎧+一/護符

・石アント(♂/普通/二二)

 武器:鋼の槍+一

・石ウリボー(♂/普通/二二)

 武器:なし

・スケルトン(♂/普通/一七)

 武器:なし

・海ヘビ(♀/普通/一七)

 武器:なし


★モズラ(ヒツジ族(サウスダウン種)/♀/普通/錬金術師/二四)

 自動装填ハンドボウ(SP使用)/なし/鋼の軽装鎧+一/護符


★ビエリアル(レッサーパンダ族(レッサーパンダ種)/♀/普通/聖職者/二四)

 聖導の杖/なし/鋼の軽装鎧+一/護符

・オーガ(♀/普通/二三)

 武器:鉛のハンマー+一

・ハムスター(♂/普通/二三)

 武器:鋼のキバ+一


★エヴァールボ(ハリネズミ族(パイド種)/♀/大器晩成/鍛冶師(ハリネズミ)/二〇(二〇))

 ガラスの大剣+一/鋼の盾/鋼の鎧/護符

――――――――――



――――――――――

 同居人

☆ミーナ(人間/女/良い/踊り子/一五)

 鉄扇+二/なし/踊り子の服/護符

・石タートル(♀/良い/一九)

 武器:なし


☆エリス(人間/女/普通/商人/一五)

 鋼の短剣+一/丸鋼の盾+一/軽装の鎧/護符

・石ビートル(♂/普通/一九)

 武器:なし


★アンジェ(人間/女/普通/料理人/二〇)

 鋼の包丁+一/丸鋼の盾+一/軽装の鎧/護符

 従属:ペコペコ(雛)(混合/普通/一四)×一〇匹

・魔法使い(土)(♀/普通/二〇)

 武器:鋼のステッキ+二


★フローラ(ユニコーン族/♀/普通/神聖術師(ユニコーン)/一六(一七))

 鋼のステッキ+二/なし/軽装の鎧/護符


☆キーリア(サル族(リスザル種)/♀/普通/農婦/一五)

 鋼の鎌+一と鋼の鍬+一/なし/軽装の鎧/護符

・フェアリー(♀/普通/二一)

 武器:鋼のステッキ+二

・石サクランボ(♀/普通/一九)

 武器:なし


★リアラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷結術師(ツンドラオオカミ)/二〇(二〇))

 鋼のステッキ+二/なし/軽装の鎧/護符


★ナイラ(オオカミ族(ツンドラオオカミ種)/♀/普通/氷狼(ツンドラオオカミ)/二〇(二〇))

 鋼の剣+一と鋼のナイフ+一×一〇本/丸鋼の盾+一/軽装の鎧/護符


☆ウーリー(ウサギ族(ホーランド・ロップ種)/♀/普通/配合師/一四)

 鋼の短剣+一/丸鋼の盾+一/軽装の鎧/護符

・石柱(♂/普通/二〇)

 武器:鋼の槍+一(投擲用)×七本


★コーシェル(タヌキ族(エゾタヌキ種)/♀/普通/裁縫師/一七)

 鋼の刀+一/丸鋼の盾+一/軽装の鎧/護符

・ゴーレム(♀/普通/二〇)

 武器:鉛のメリケンサック+一

 防具:鉛板の鎧+一


☆クラリー(ドワーフ族/♀/良い/細工師/一七)

 鋼の斧/なし/鉄の鎧/護符

・石ザル(♂/普通/二〇)

 武器:なし


☆スオレ(イタチ族(アンゴラフェレット種)/♀/普通/大工(アンゴラフェレット)/一〇(一三))

 鋼のハンマー+二/なし/軽装の鎧/護符


☆リオーニス(イタチ族(アンゴラフェレット種)/♀/普通/大工(アンゴラフェレット)/一〇(一三))

 鋼のハンマー+二/なし/軽装の鎧/護符


☆ケーレル(マングース族(ミーアキャット種)/♀/普通/斥候(ミーアキャット)/一〇(一三))

 鋼の短刀+二/丸鋼の盾+二/軽装の鎧/護符


★ノルターニ(鳥族(コウノトリ種)/♀/普通/村人(コウノトリ)/一五(一五))

 短剣/木の盾/軽装の鎧/護符


★アキリーナ(王族/♀/良い/プリンセス/一〇)

 鋼の短刀+二と錫杖+二/なし/軽装の鎧/護符

・グレムリン(♀/普通/一五)

 武器:なし

・スケルトン(♀/普通/一五)

 武器:なし

――――――――――

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