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迷宮踏破の前に。(挿絵有り)  作者: サーモン
第5章 隣の国を救います。
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氷狼

 コーシェルは入口で強いモンスターを優先に戦闘を繰り返しているらしく、ギラーフとは海亀で別れた。

「ノルターニ、先にビエリアルをフローラたちの所に輸送してくれ。俺たちは走ってさっきの集合地点を目指す」

 囲まれれば、たとえギラーフだろうと攻撃を食らってしまうだろう。薬はたくさん置いてあるが、今は回復ができる人材が戦線の維持には大切だ。

「わかりました」

 バサッと翼を広げて羽ばたくと、ビエリアルの頭上でホバリングした。

 ビエリアルの手がノルターニの足を掴んだところで飛翔する。

 行きは滑空だったから良かったが、帰りは自力で上昇しなければならない。ノルターニのレベルが低かったら飛び立てなかったかもしれない。

 真っ直ぐ外壁に向かうのではなく、その場で円を描きながら高度を上げると、高所からゆっくり滑空するように外壁に移動を始めた。

「俺たちも移動するぞ」

 みんなで海亀がいたポイントに黙祷をしてから移動する。


 ビエリアルの次は俺が外壁に降り立つ。

「これは……」

 上から見ると、モンスターの目なのか、鱗なのかわからないが月の光を反射して光っている。

 左から右までうじゃうじゃだ……。

 城の入口からこちらに進路を変更したとしか思えない。俺がいなかった三〇分余りで状況がガラッと変わった。

「フローラはいるか?」

「はい!」

 フローラは全体が見える位置で氷壁に守られていた。浄化の魔法は補助はかけられても、戦う力ではない……。


 それにしても指揮が適切だ。フローラにこんな才能があったとは……。一体を複数人で戦えるように氷壁をうまく展開して、まるで凱旋門広場のように陣営を中心に放射状に敵が列を作っている。

「配置が俺みたいな戦術だ……」

「これです。これ!」

 フローラの手には、ご主人様人形が握られていた。

 俺の分身が身振り手振りで指示を出している……。それで俺のイメージ通りの配置になっていたのか。

「ということは、遊撃には誰かいるのか?」

「ナイラが……」

 フローラが右の方を指さした。

 意識を集中させると、少しだけ離れたところで闘いの音が聞こえる。きっとあの辺りだろう。

 俺もフローラと同じで、こういう集団戦では大して役に立たない。

 一番忙しそうなのは、最初に送り込んだビエリアルだ。

「お待たせしましたニャ」

 そして遠距離最強職の登場である。


 リズは空中でクルンッと一回転し、着地の際に腕を斜めに上げてポーズを決めた。今から『体操の床』をしても、君なら一年でオリンピック選手になれる気がする。

「でかいのを撃つニャ!」

 俺はやる気満々の猫さんを叩く。

「痛いニャ」

「落ち着け、俺が合図をしたら、火、土、風の合成だ」

「二属性までしかしたことニャいけど、やってみるニャ!」

 確かに、いつも二属性までだったな……。

 俺は狼の笛を吹いて近くにいないナイラに合図を送る。

「よし、ナイラがいない左の方向だ」

 俺は笛を口から外しながら指示を出す。

 リズが右を向いたので、俺は慌てて左を指さした。

「あっちだ!」

「じゃ、じゃ、じゃ、茶碗に向けて撃つニャ」

 リズは右と左を間違えて動揺をしている……。

 茶碗に撃ってどうする。茶碗を持つ手の左に向けてだ。

 そして偶然にもわかったことだが、同じ属性を混ぜないと威力が一気に跳ね上がらない。

 それでも合成魔法は合成魔法。熱せられた土が敵の上空を高温にしながら、広い範囲に降り注ぐ。

 地上に適応したとはいえ、高温で水分なしの地上では海中モンスターは持続的にHPを減らし始めた。


「敵多いですね」

 氷狼の姿でモンスターの中から登場したナイラ。

 山賊を捕らえた時よりも体のサイズも氷の爪も大きくなっている。

 すぐにビエリアルが傷ついているナイラのHPを回復させるが、集中力までは回復しない。

「ギラーフとコーシェルは入口に向かったから、ここには来ないぞ」

 きっとあの二人は俺たちの前衛の中でトップだが、敵はここだけではない。みんなもここまで敵の攻撃を凌いできて自信をつけたのか、援軍が来なくても士気は下がらなかった。

「ナイラが休憩している間は頑張りますか……」

 氷壁を作った後に休憩をしていたのか、今度はリアラが動き出す。

「まだ開発途中だったんですが……」

 リアラが左右の手でそれぞれ魔法を作り始めた。

 あれ? リズは平然とやっているのに、リアラはなんだか苦しそうだ。

 そして両手を合わせるとリアラのすぐ前で氷の塊が大きくなっていく。その塊は徐々に姿を変え、氷で作った狼が出来上がる。サイズは氷狼のナイラと同じぐらい。

「なんだか、いつもより楽に作れました」

 なるほど。魔法使いの称号は〈氷結術師〉にも効果があったようだ。

「これは動くのか?」

 オブジェだけ作ってそのままって事はないよね?

「操作するには集中しなくてはなりません。遠くまで離れると操作できなくなります」

 操作できる範囲を超えると動かなくなるそうだ。ラジコンみたいなものか……。

「もっとサイズを大きくするには、くっついていないといけないのか?」

「そうですね」

 なるほど、なるほど。ラジコンだ。

「この氷の狼に意思を持たせたらどうなんだ?」

 俺はフローラの肩の上で『俺に任せろ』と胸を叩いているご主人様人形を見る。俺の思考を持っているせいで、俺と同じ考えのようだ。

 人形の口から〈人形の魂〉を取り出して、氷の狼の口に入れる。

「わ、私の人形が……」

 両手で動かなくなったご主人様人形を抱えているフローラの悲痛の声は無視した。

 氷の狼は俺の頭脳を備えて動き出す。

「よし。動いた。リアラ! もっと大きいのを作ってもいいぞ」

「はい!」

 操作権を気にしなければ、氷の狼を作っているのと同じだ。

 合計一〇体の氷の狼が陣営を広げていく。

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