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ある朝の出来事

いつもと変わらないはずの朝。でも、今日は違ったらしい。


「ついに林檎にお世話役をつけることにしたぞ!」


そんな父の一言で今日の私の周りは慌しい。

私のお世話役とのご対面があるようで、めいっぱい着飾られるはめになった。

そうですよね。少しでもよく見せたいですよね。

なんて冷静に考えている自分がいた。どうやらまだ眠たいらしい。

鏡に映る私の姿はお世辞にも綺麗なんて言えない。

目の下のクマにおでこに出来たニキビ。夜更かしの勲章がそこにあった。


「お嬢様?世話役の者がいらっしゃったようですよ?」


優しく私に話しかけてくれる可愛いメイドさん。私と天と地の差だ。


「・・・え?あっはい。」


まだ眠たい目をこすり、自分の部屋を出る。

綺麗な白のワンピースに不健康な青白い私の肌。

まさに死人のようだなんて気分を下げてしまう。

スリッパをパタパタと鳴らし、カーペットの上を歩く。

目の前のメイドさんは背筋を伸ばしているのに対して、私は猫背。

寝起きで辛いんです。寒くてたまらないんです。なんて言い訳を心の中で唱える。


「旦那様。お嬢様をお連れいたしました。」


気がついたら応接室の前まで来ていた。そうとうぼーっとしていたみたいだ。

中から声が聞こえ、ドアが開けられる。


「林檎、彼がお世話役の・・・。」


父が立ち上がり、私に紹介をしようとする。が、私はそれどころではなかった。

くるりと体を後ろに向け、ドアを片手で閉める。

まるでブリキのおもちゃのように機械的な動きをする私は、メイドさんに尋ねる。


「わ、私のお世話役…ってメイドさんじゃないんですか!?」


久しぶりに大きな声を出したおかげで少し咳き込む。


「そう…みたいですね?」


困った笑みで私に微笑むメイドさんは本当に綺麗だった。

ちなみに彼女はこの家に来てから2年経っている。

しかし、まだ名前も知らないし親しい仲でもない。

つまりだ。私は人とコミュニケーションをとるのが下手糞なのだ。

そんな私に…。執事がお世話役なんて絶対無理だ。

その場から私の全体力を使って、自分の部屋に戻る。

普段から走ったりしない私からしたら地獄労働並だった。





部屋に戻り、ドアに鍵をかける。

心臓がバクバク煩く、息が上手く調節できない。

このもやしが!なんて思いながら、その場に座り込む。

肩を上下させながら、呼吸を整える。ここまでは良かった。

コンコンとノックの音が後ろから聞こえて、体が跳ね上がった。


「あの…お嬢様?いらっしゃいますよね?」


聞いたことのない男性の声。その声に一気に恐怖心が煽られた。



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