15日目
優しい男の人は今までに何人も見てきたが、彼ほど私の思い描くような恋人に近い存在もいないだろう。本当は男でも女でもないはずなのに、不思議と私の気持ちを惹きつける魅力があった。彼曰く、ソレイルの人々は基本的に温厚で賢く、知恵があることがその人の何よりもの宝物になるらしい。その言葉通り、彼はとても優しく、頼りになった。
彼は私が知らないことを多く知っていたのだ。それを教えてもらうかわりに、私も彼にこの旅で身に付けた様々な知識を彼に教えた。
彼は吸収が早く、私ですら覚えるのに時間のかかった技術をあっという間に習得してしまう。優しいだけではなく、しっかり自分の意見も言ってくれるため、これからどういう進路をとって旅をするかという相談もできた。
そして、私が無謀なことをしようとするときちんと止めて叱ってくれる。そんな彼を見て、私はこのまま彼とずっと旅ができたらいいなと思った。
ここまで書いて私は気が付いてしまった。ひょっとしたら、私は彼に恋をしてしまっているのかも知れない。でも彼には『恋愛』の知識はあっても、感情は存在しない。
つまり、彼が私のものになることは絶対にない。
なんて、残酷なことなんだろう。