ターゲットは子ヤギ
「じゃあ、今夜も涼貴君に頼んでおいたから後で来たときに開けてあげなさいよ」
「なんでいつもあいつに頼むのよ!」
「こら、愛!あいつなんて言わないの!いい子じゃない涼貴君。この前道で会ったときなんか『気にしないでください。愛ちゃんのことは怪我のないようにしっっかり僕が守りますから。おばさんは気にせずに楽しんで来て下さってかまいませんよ』ですって!どうしたらあんな出来た子に育つのかしら」
簡単に騙されんなあぁっ!!
ーーピンポーン
・・・来たっ!
ガチャッガチャッ
ふふん!人間には考える頭脳があるのよ!
今回はあらかじめ最初から鍵をかけておいたから大丈夫!
私は余裕しゃくしゃくでインターホンの電話をとった。
「あっ、涼貴?実は鍵が壊れちゃって、明日まで開かないの。だから今夜は帰っていいからね♪」
涼貴の返答を聞く前に私は受話器を置いた。
やったあぁ〜〜!今夜は久々の自由の日だ!
あのむかつく涼貴にひれ伏すこともなく、好き勝手にできる。
さあて、まずは夜通しゲームでも挑戦しますか!
私は早速テレビをつけた。
『今日は非常に冷え込む日ですね』
『今年一番の寒さですからねぇ』
『お出かけのさいには充分暖かくしてお出かけください』
「・・・・・・ゲーム、ゲーム」
私は自室にあるソフトを取りに二階へ行った。
部屋に入ると外から小さな音が・・・。
「・・・・・・雨」
・・・わ、私は、ただ、雨の様子を確かめようと窓のカーテンを開こうとしてるだけだからね!
あいつのことは関係ない!
「・・・っ!」
気付いたら玄関へ直行していた。
わたしの、ばか・・・!
「涼貴っ!あんた傘もささずに、何、やって・・・」
そこには全身ずぶ濡れの涼貴の姿・・・は、なく、多少濡れてはいるものの傘をさしてにこにこ顔の悪魔が…。
「・・・やっぱり可愛いね、愛ちゃんは♪」
「なぁっ・・・!」
「なんで濡れてるかって?愛ちゃんのことだから雨でも降ったら絶対に僕の様子を見にくると思って待ってみたんだ。そしたら本当に確認するんだもん。愛ちゃんが見に来た後にいい加減寒かったから傘をさしたんだけど、来るの早かったね。そんなに僕が心配だった?」
「そ、そんなわけないっ!」
「そう?…・・・それにしてもダメだなぁ、愛ちゃんは。僕は狼なんだよ?・・・簡単にドアを開けたりしちゃダメじゃないか♪」
「あ・・・」
呆気に取られすぎた。
気付いたら涼貴は家の中に…。
…鍵もきっちり閉められましたよ。
「お邪魔しま〜す♪」
自業自得なのはわかってる。
救いようのないマヌケなことも自覚してはいる。
だとしても願う・・・・・・・・・誰かこいつを追っ払ってえぇ…!
愛ちゃんって可愛いよね〜♪
あ、可愛いって同意した人は男であれ女であれぶん殴るから。
女は殴らない何て言う紳士でもないんで。
愛ちゃんを可愛いと思うのは僕だけで充分。
本当は僕のこと好きなくせに必死で隠そうとするんだから可愛い。いや、本当に気づいてないだけなのかな?
この前なんて学校で僕の周りをウザったくついてきた女がいた。
ずっと無視してたんだけどその女は一人で勝手に喋りながら後をついてくるから、正直かなりいらついていた。
そこをたまたま愛ちゃんが通り掛かったから試しにその女と話しているふりをしてみた。もちろんわざとだとばれないように。
そしたら愛ちゃんのその動揺っぷりったら可愛すぎてしょうがない。
今すぐに抱きしめたくなるくらいに!
調子にのった女を優し〜〜い威嚇で帰らせた後に、待ち伏せして愛ちゃんと(二人っきりで!)帰ったんだけど、その間愛ちゃんはずっと僕に聞きたくて聞きたくて仕方ない顔をしていたけど、あえて知らんぷり。
だって早くその気持ちに気付いてほしいから。
鈍感な愛ちゃんも確かに可愛いけど、でもやっぱりちゃんと自覚して僕に存分に甘えてほしいから。
ねえ、早く気付いて?
僕の気持ちに、自分の気持ちに気付いて、・・・早くそれを認めて?
3作品目あげましたー(^^*)