4 しれっとまた来ることに
1~3エピソードまで最後『っ』でしたが、そういう縛りではありません(むずかったのでやめました)。最初のうちはじわじわと距離を縮める感じにするつもりです(テンポ遅いかも、ということです)。
「んん!これ美味しい!!」
「それは良かった。」
10分ほどして運ばれてきたミックスフルーツパフェを陽川は美味しそうに頬張っている。その表情の輝き具合と、スプーンの進み具合から本当に美味しいことがよく伝わってきた。
(あの人こういう系のも作れるんだなー。・・・いや、提案したのは俺なんだけど。本当にできるとは思ってなかった。)
「・・・ん?阿江さんも食べますか?」
「え?」
「結構量多いですしいいですよ?」
隼人に全くそういうつもりはなく、ただ美味しそうに食べる陽川を眺めていただけだったのだが、陽川には隼人が物欲しそうにしているように見えたらしい。
そして、何故か先ほどまで使っていた自分のスプーンにパフェの一部をのせてこちらに向けている。
(・・・いや、なんでそうなる!?)
「ん?」
(ん?じゃなくてだな!?)
「食べないんですか?」
「いや、だってそれ・・・」
隼人はそのスプーンを指さした。
陽川はしばらく何を言っているのかわかっていないようだったが、ようやく自分がしようとしていることに気が付いたらしく、一気に顔を赤くした。
「あっ、やっ、そそ、そういうつもりじゃなかったんです!!」
「あはは・・・。」
「ご、ごめんなさい!あのはいこれ。」
そう言ってテーブルに常備してあるスプーンを取り出して渡してきた。
「ええと、そもそも食べたかったわけじゃないんだけど・・・」
「っ!!」
陽川はこれでさらに恥ずかしくなったようで、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
(・・・前にも思ったけど陽川って結構天然?)
さすがに少し可哀そうになったので陽川の手からスプーンを取って(もちろん新しいほう)、一口食べてみる。
「あっ。」
「あれだな。確かに美味しいけど俺には少し甘いな。」
「そ、そうですか。」
隼人にとってはやはり甘すぎたためスプーンを置いた。アイスティーで中和する。隼人が頼むアイスティーはストレートなのでちょうどいい。
「陽川さんは甘いものが好きなの?」
「はい!」
即答だった。
「どういうやつ?」
「んー、こういうパフェも好きだし、ケーキだったりクレープだったり・・・あっチョコレートが好きです!でもやっぱり・・・」
「やっぱり?」
「やっぱりマカロンかなぁ。外はサクッと中はしっとりしていて、甘さも甘すぎないところがいいです。めっちゃ甘いのもいいけど・・・。」
「へぇ~。」
「阿江さんはどういうのが好きなんですか?」
話題を変えることでだんだん落ち着いてきたようだ。
「俺は・・・そうだな。あんま甘いのは好きじゃなくて・・・んー。」
隼人は自分が過去に食べたことのあるスイーツを考えてみる。
「・・・スイーツ自体ほとんど食べないな。お菓子ものど飴とかラムネとかぐらいだし。それにチョコが一切食べられないからなぁ。」
「えっ。」
陽川が信じられないというような反応をしている。口をポカンと開け、わなわなしている。
チョコレート好きな人は多いが、隼人は全くだ。というか食べられない。別にアレルギーがあるわけではないが、においがダメで、物心つく前に一度食べて吐いたきり口にしていない。
「そんな驚くことか?別に男子だったらこういうやつ結構いると思うけど。」
「だって・・・人生の三分の一は損してると思います。」
(そこまでじゃないだろ・・・)
スイーツで人生の三分の一は言い過ぎだ、と隼人は思った。微妙に三分の一としているあたり、本気でそう思っていそうである。
「そもそも食べたことあるんですか?」
「・・・一般的なケーキなら。」
言われてみると、スイーツを食べた記憶はほとんどない。小さいころは誕生日ケーキぐらいは食べていたと思うが、中高生になってまで誕生日ケーキは買っていない。
自分から買うことは一切なく、ごくまれに妹が作ったお菓子のおこぼれに与ることぐらいだろう。
「それってほとんどないってことですよね?」
「まぁ、そうだな?」
「・・・分かりました。」
そう言ってスマホをいじりだした。少ししてこちらに画面を向けてきた。
「実は私、お菓子作りが趣味なんです!」
そこに映し出されていたのは数々のお菓子たち。どれもお洒落なお菓子であり、隼人が名前も知らないものもたくさんあった。
ただ・・・
「写真下手?」
「うぐっ・・・。」
どれも全体として暗い。これだけだと別に下手とまでは言わないが、ときどき、ぶれっぶれの写真が出て来る。なぜ消していないのか不思議だ。
「い、いいんですっ!味は大丈夫なので!」
「はぁ。」
「とにかく!また今度持ってくるので食べてみてください。絶対好きになりますから!」
「あ、ああ。分かった。」
(・・・ん?んん!?なんかこれも勢いで頷いたけど、しれっとまた来ることになってないか!?)
隼人としては、自分の正体がばれることはなかったし、思っていたより話していて苦ではなかったので別にまた来るのが嫌なわけではない。
ただ、どうして陽川がまた来ようと思ったのかが不思議だった。
それからしばらく他愛もない話をして、気が付くと六時を過ぎていた。今は六月で、かなり日は長くなってきているが、そろそろ帰るべきだろう。
「陽川さん。そろそろ帰ろうかと思うんだが・・・。」
「あー、確かに結構遅くなりましたね。あっ、そうだ。連絡先交換してもいいですか?」
「いいよ。」
この前は断ったが、それはあの時限りの関りだったからそうしたのであって、今なら断る理由はない。
隼人は一応クラスラインなるものには入っているが、今まで一度も発言したことはないので大丈夫なはずだ。名前も『隼人』だ。
そして連絡先を交換した後、言っていた通り陽川が全額払ってくれた。
「それではっ。」
「じゃあな。」
次回更新は3月8日?だと思います。




