楽しい遊園地デートで
休日の遊園地は、思っていた以上に人であふれていた。
子供達の楽しいはしゃぎ声。
色とりどりの風船に、甘いポップコーンの匂いが鼻に届く。そして、園内に流れる楽しげな音楽。
「今日はすっごく人が多いね……」
「迷子にならないようにね、サナ?」
そういって羅那は、慣れた手つきでサナの手を繋いで来て、サナはびっくりする。
「う、うん……」
そんなやり取りをしながら、二人が最初に向かったのは――ジェットコースターだった。
「本当に大丈夫?」
長い列に並びながら、思わず、羅那が尋ねる。
「私は大丈夫だけど……羅那くんは?」
「そうだね……今回が初めてかな」
それを聞いて、サナははわわと声を上げる。
「だ、大丈夫? 上とか下とか、ぐるぐるするけど……平気?」
「まあね、ほら、アクセラレイヤー使ってるし。あんな感じだよね?」
「そ、それって、物凄い魔法な気がする……」
猛スピードで飛んでいく魔法なのだが……まだ見たことないサナにとっては、それを思い浮かべるのは難しい。
と、順番が回ってきて。
「きゃあああああ……!!!」
「おおおお……!!」
ぎゅんぎゅんとコースターは突き進み、そして。
「ああ、楽しかったーー!!」
「うん、楽しかったよ」
サナと羅那は、意外と叫んでいたが、しっかりと楽しんだようだ。
「サナはこういうの好き?」
「結構ね。これ言うと、友達に驚かれるの。美咲ちゃんとかにね。よくお兄ちゃんと妹達と乗ってたの。だから、好き」
思わず、亡くなった家族のことを口に出してしまった。
「そっか……でも、これからは僕が付き合ってあげるよ。僕も気に入ったし」
「ありがとう、羅那くん」
ほんわかと暖かい気持ちになって……。
次に乗ったのは、長閑なメリーゴーラウンドだった。
「一緒に乗らなくていいの?」
「ひ、一人で大丈夫ですっ!! 子供じゃあるまいし」
羅那にそんなことを言われたけど、まじまじと乗っている羅那の方を見る。ただ、馬に乗ってるだけなのに、なんでこう、様になるのだろうか? もしかして、乗馬の経験もあったりするのだろうか?
ばちっと目が合って、サナは思わず、視線を外した。それを見て、楽しそうに羅那は笑う。
「ねえねえ、あの……クレープ食べてもいい?」
ちょっとだけ、避けられたときのことを思い出して、サナは確かめるように尋ねてしまった。
「いいよ。いちごショートのやつでいい?」
「う、うん……羅那くんはどれにするの?」
サナに尋ねられて、うーんと考えつつ。
「今日は抹茶にしようかな。あの味好きだし……そこで待ってて。すぐに買ってくるよ」
そういって、羅那は買って来てくれる。ここまではオッケーとサナは思う。
問題はこの後だ。あの時、触っただけで避けられてしまった。
けど、今は……違う、ハズ。
「お待たせ、はいどうぞ。零さないよう気を付けて」
「あ、ありがと……」
にこっと笑みを浮かべながら、クレープを渡してくれる。手が触れても、もう離れない。それが嬉しくなってしまう。
「サナ、凄く良い笑顔してる。そんなにそのクレープ食べたかったの?」
「そ、そんなんじゃないもんっ!!」
元に戻ったのが、こうして、一緒にいられるのが嬉しくてたまらない。
もう避けられないのが、こんなに幸せだなんて、彼には内緒。
その後、ティーカップのぐるぐる回る遊具で、一緒に目を回して。
小さなゲーセンみたいな場所で、ぬいぐるみを取ってもらって。
いつの間にか、観覧車へと乗っていた。
「あのさ……昔……これ乗れなかったんだ」
「え、そうなの?」
羅那がぽつりと呟いた。
「怖いからじゃないよ。ほら……僕の力が安定しなくて、よく暴走してたから……こんなところで暴走させたら目も当てられないし」
父さんもやめとけって言ってたしねと、少しだけ寂しそうに告げた。
そうだった、今までは……その有り余る力の所為でやりたいことも満足にできなかった羅那。
羅那の中にどれだけの寂しさと悲しさがあるのだろう。
そう思うと、手を伸ばそうとして、できなかった。
支えたい。今は……そんなことはないから……。
そんな言葉が出なくて。
「でもね……今は違うよ」
ふと、サナの方を見て、くすっと笑った。
「もう力も安定してるし、こうして、サナを触っても平気」
伸ばそうとしていたその手を、なんとなく羅那は手に取って。
「だから、嬉しいんだ。サナと一緒にこうして乗っていられるのが嬉しい」
「そ、それなら……」
サナは続ける。
「私と羅那くんの子供が出来たら、一緒に乗れるね」
その言葉に、羅那が目をぱちぱちと瞬かせて。
「うん、そうだね。あっと、そのためにも……父さんに魔導具の作り方教えてもらわないと」
「え、そうなるの?」
サナの言葉に当然と言わんばかりに続ける。
「だって、僕とサナの子だよ。きっと必然的に力強くなるから、力を抑える魔導具はしっかり覚えておかないとね」
そんな言葉を言ってくれる羅那のことが嬉しくて。
でも……。
こんなに幸せなのに、ほんの少しだけ不安になるのは……。
じわりと少しだけ何かが滲んだ。
前よりも大きくはないが、それでも感じてしまった。
そして、自覚してしまう。
――私の中に、厄災はいる。
「サナ、どうかした?」
「ううん、何でもないよ。私も魔導具の作り方、覚えようかなー?」
「流石にサナには作れないんじゃないかな? 魔法使えないと難しいから」
「えええ、それって、ズルいよー、私も使えるようになりたいっ!!」
その言葉に、ちょっと困りながら、羅那は続ける。
「まあ、完全に使えないことはないけど……結構、難しいよ。それでもいい?」
「もちろんっ!! 癒しなら得意だもの!!」
そんな風に胸を叩くサナに、羅那は柔らかな笑みを送る。
遊園地のイルミネーションが灯り始める、その煌びやかで賑やかな場所で……。




