パーティーを滅茶苦茶にされないための防衛線
いち早く動いたのは、サナだった。
すっとしゃがみ込み、ブレスレットに触れ、白銀の弓を取り出し、光の矢を番えると。
――キィン!!
見事な腕で、出てきた妖魔を一撃で、頭部を撃ち貫き、消滅させた。
「咄嗟の時は……サナの方が上だね」
「そ、そんなことないよ……自然に体が動いただけ……」
弓をブレスレットにしまい、サナは恥ずかしそうに頬を染める。しかし、敵はあれだけではないようだ。
「サナ、確認していいかな? 裏庭に数体、妖魔が来てるよね?」
「うん、眷属が7体、普通の妖魔が、3体……それとすっごくヤバそうなのが1体……かな」
「そんなにか……こういう場にも来るなんて……少しムカつくな。とにかく、手早く倒さないと、また来るね……術式展開、結界!!」
まずは、この会場に守りの結界を張る。
「羅那くん?」
「それと……宵闇の帳!!」
「えっと、それって……?」
「現実世界に影響が出ないようにっていう、特別な結界だよ。少し結界を張ったら、ちょっと暗くなるのが難点だけどね。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「えっと、私の弓とかはいらない?」
「サナは、ここで結界を維持してて。すぐに終わらせるから」
いつの間にか、羅那の腰にはあの魔双剣カルディトゥスが備わっていて。
「あ、浅樹様!?」
スタッフが騒ぎを聞きつけて、やってきたようだ。
「ああ、大丈夫だから……これから、面白い余興をするから、眺めていて?」
「いやそれ、余興……ってもんじゃ……ないんじゃない?」
サナの言葉にくすっと羅那は笑って、割れた窓から眼下を見下ろす。
そこから、ホテルの裏庭が見えた。
『マスター、敵の位置を正確に把握しました』
「了解。そのままデータ流してくれる?」
小さく呟いて。
「それでは、少し楽しい奇術をお楽しみください」
そう告げて、割れた窓から……飛び降りた!
「術式展開……クリスタルランサー展開……ライオット・レイザー!!」
小手調べと言わんばかりに、ランサーから鋭いレーザーを出して、一撃で多数いた眷属を消滅させた。
「エアライド……」
飛び降りる途中で、新たな魔法陣を生み出し、そこを足場にして、落下をやわらげつつ、態勢を変える。腰についている二本の剣を引き抜き。
「ステルス……」
迷彩を使って、自身の姿を消して。
バリバリバリっと、雷鳴の音が響いた。恐らく、魔双剣に雷を纏わせたのだろう。
「ライトニング・スラッシュ!!」
ずしゃっと、妖魔の後ろに羅那の姿が現れる。と、同時に妖魔達の体が真っ二つになり、その体を消えさせていた。
「さて、ここまでは予定通りだけど……」
「流石だな……これがあの浅樹家の退魔師か?」
そこに現れたのは、青年の妖魔だった。
「グラビティチェイン!!」
「なにっ!?」
がしゃんと、その妖魔を重力で叩きつけた上に、黒いチェーンでその体を縛り上げる。
と、羅那が顔を上げる。そこにはようやく到着した父、翔の姿が見えた。
「とうさ……いえ、会長。彼から情報を取ることも可能ですが、どうしますか?」
それほど大きな声ではないが、きちんと翔に届いている所を見ると、恐らく、魔法を使って、声を届かせたのだろう。他の者には聞こえないように。
「ああ、そんなのはいらん。さっさと潰せ」
「了解。ということで、消えてもらえるか?」
そういう羅那に妖魔は怒り狂う。
「な、はいそうですかと従えるもの、か……!?」
「術式展開、一、二、三……」
その妖魔の頭の上に幾重にも魔法陣が重ねられる。
「はっ!?」
「……ふうん、お前、そんな魔術で焼かれたいのか。じゃあ、それでいいか」
「なっ!? 貴様、我の思考を読みとって……!?」
「煉獄の業火っ!!!」
上から来るのかと思ったら、下からごおっと、恐ろしい業火が妖魔を焼き尽くす。
「ぐあああああっ!!!」
そして、あっという間に、その妖魔を消滅させて。
「はい、終了っと」
役目を終えた魔双剣を消した後、そのまま徒歩で、会場へと戻っていく。
「ふう……さてっと、本番はこれから、か……」
少しだけ乱れた服を直して、羅那はゆっくりと、再び、パーティー会場へと入って行ったのであった。




