楽しい回るお寿司屋さんにて
「で、何処に行こうか? 美味しいお寿司屋さんに行ってみる?」
そう運転しながら、羅那が尋ねると。
「それなら、私! 回るお寿司がいいですっ!!」
「えっと、それって、あの……回転寿司屋?」
「ふふふ、もう予約しちゃいました。あ、そこです。そこのお寿司屋さんでぜひ!!」
「なっ……は、はや……!! 今日は負けたよ……」
羅那はスマートにそのお寿司屋さんに入って……一部の客や店員を驚かせるのだが、それは別の話。
羅那とサナは、そろって楽しそうに店へと入って行ったのだった。
さほど待つこともなく、隣同士のカウンター席に入ることが出来た。
「あ、羅那くんは回転寿司屋さんって初めて?」
「そうだね、実は今日が初めてだよ。教えてくれる?」
そう答える羅那にサナはくすっと笑う。
「このディスプレイがタッチパネルになってるの。流れているのをそのまま取ってもいいけど、ここで注文した方が美味しいお寿司が食べられるよ」
「ああ、これで注文できるんだ。面白いね……」
しゅっしゅっとメニューを見て、羅那は楽しんでいる。
「じゃあ、私は……えっと、ゆず塩のイカさんとーーカツオ行くね! 羅那くんは?」
「あ、そっちにもあるんだ。うーん、どうしようかな、オーソドックスに大トロとサーモン行ってみるかな。2貫ずつっと」
「あ、サンマある!! これも頼んじゃおうかな?」
「どんどん頼んでいいよ。僕が出してあげるからさ。うにとかも好きなだけ食べると良いよ……って言っても、なんか格好つかないけど」
「ううん、嬉しいよ? 最後にデザートも頼んじゃうし!!」
「へえ……デザートも? ホントだ。いろいろあるね……あ、うどんとかもあるんだ。なんか、ファミレスみたいだね……いろいろあって、なんだか、楽しくなってくるよ」
と言っていたところで、注文した皿が届く。
「あ、注文したのは、別レーンで来るんだ」
「はい、羅那くんの」
「ん、ありがとう」
羅那もサナの皿を取って、渡して、にこっと微笑みあう。
「あ、羅那くん。この醤油差しはね、この上のボタンをこう押すと、上からかけることができるから、光物とかに便利だよ」
「ああ、これは知ってる。使ったことあるから大丈夫だよ。これ便利だよね……そういえば、家になかったな……買って来ようかな?」
「わざわざ買わなくてもいいような気がするよ?」
「いやこれ、便利っしょ?」
「だって、大きな醤油瓶でそういうのあるし、わざわざ買わなくても平気……」
「え、マジ……?」
と言いながら、さっそくお寿司を頂く。
「ふううんんん……!! これこれ、美味しいいーーー!!!」
「ん、美味しいね」
にこにこしているサナを見ながら、羅那も笑顔でぱくぱくっとお寿司を平らげていく。その間にもいくつか注文して、もぐもぐ食べていく。
「あっ!! ガリ貰おうっと。ここのお寿司屋さんのガリ、大根なんだよ」
「えっ、そうなの? どれどれ……んん、美味しいね、僕これ好きかも」
ひょいひょいと、小皿の上に乗せていく羅那にサナは笑みを浮かべて。
「あ、お皿は、ここに入れていくと回収してもらえるよ。ついでに5枚ごとに抽選してくれて、当たったら、ガチャが貰えます」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、二回できるね」
ぽんぽんと楽しそうに入れていく。そして、抽選が行われる。
「ああ、残念! 外れちゃったね。じゃあ、次いこー!!」
「ああ、5枚ごとにやるんだね」
またぽんぽんと楽しそうに皿を入れていく。
くるくるとまた、抽選が行われて……。
「ハズレか……なかなか渋い?」
「まあ、渋いのは仕方ないね。ガチャ欲しいのはお子様だし。お子様セット頼んだらそれだけで抽選権もらえ……注文しないでください。流石にそれは恥ずかしい」
「駄目か……残念」
「そ、そんなに欲しいの?」
「いや、何が貰えるのかなって思ったら、ちょっと気になって」
「あそこに張ってあるやつだよ」
指さす先に、ガチャの中身がなんなのかが写真付きで記載されていた。
「ああ、あれか……アニメの缶バッチなんだ」
「うん、今はあれとコラボしてるみたいだね。コラボメニューもあるよ」
「マジか……頼んでみよう」
「羅那くん、そのアニメ好きだったの?」
「ううん。今日知ったところ。でもコラボメニューなんて、食べた事ないから、せっかくだし、食べようかなって。こういうのワクワクしない?」
「じゃあ、私も……そのコラボメニュー美味しそうだし。アニメ知らないけど」
二人は顔を合わせて、ぷっと吹き出しつつ。
「じゃあ、二つ頼むよ。それでいい、サナ?」
「オッケー、よろしく。あ、私は今届いたのを回収しとくね」
楽しく食べて、ラスト間際で、なんとか缶バッチをゲットした。
「よかったね、羅那くん」
「とても楽しかったよ。回転寿司屋さんって、遊園地のアトラクションみたいだね」
「え、そうかな?」
「うん、面白かったよ。これなら、何度も行きたくなるからね。子供の頃だったら、絶対に父さんにせびってた」
「ぷっ……」
思わず、翔にわがまま放題言って、回転寿司屋に行こうと駄々をこねる子供の羅那を想像して、サナは吹き出した。
「さてと、そろそろ終わりかなーって思ってるんだけど、会計しちゃっていい?」
「あ、そうだね。デザートも食べたし…………あっ」
そこで、サナはイヤーな顔をした。
「サナ?」
「なんか、7時の方向にね、イヤーな気配を感じちゃった」
「何体かわかる?」
「んー。感じたのは3体。でも、それだけじゃない気がする」
「確か、あっちには林があったね……」
さっと、会計用のレシートを持って、羅那は立ち上がる。
「これ、機械に読ませて指示通りに支払い済ませばいいんだっけ。確かクレジットカード使えるよね?」
「うん、使える、はず……って、早」
手早く会計を済ませて、羅那はサナの方に手を差し伸べる。
「ちょっと面倒な相手だけど、どうする? サナも来る?」
「もちろん! なんか、楽しそう」
そんな答えを返すサナに羅那は思わず苦笑を浮かべた。
「今日は動きやすくないスーツだけど、まあ、なんとかしてみるよ。サナは後ろで様子見てて。危なくなったら、僕の車にすぐ乗ること。いいね?」
「えーーそんなつまんないよ。私も戦えたら戦うよ? 弓で!!」
「だーめ。それに……腹ごなしにはいいと思わない?」
「もう、すっごい瞳がギラギラしてるよ、羅那くん? 眼鏡で隠してるのに」
二人は店を出て……車に、ではなく、そのまま目の前の林の方へと歩いていったのであった。




