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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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騒がしいファミレスでのひと時?

 会社の休憩室にて、サナと美咲は、お弁当を広げて昼休憩をしていた。

「ほほう……良きデートだったと」

 にやにやとサナのデートの報告を聞いている。美咲はこりゃ、楽しいことになって来たなぁと感じている。

「も、もう……変な台詞で言わないで……その、浅樹さん、とっても素敵だったから……その……」

「ほうほう、浅樹さん呼びですか、今度は名前呼び?」

「ま、まだ、そこまで行けないよっ!!」

 なにせ、相手は格好よすぎ。サナの理想が(以下略)なのだから、まだ無理という話なのだ。

「で、でも……いつかは……」

 うっとりするサナだったが、そんな夢心地の気分はあっという間に崩れ去る。

「あら、楽しそうな話をしているみたいね、柊さん?」

 麗子だ。しかもその後ろには、取り巻きの由紀と晴美の姿も見える。

「れ、麗子さん……!!」

「だって、あなた……つい最近まで、ヤクザな男と付き合ってなかったっけ?」

 麗子の言葉に由紀と晴美も続く。

「そうそう、その前は、役に立たないヒモで」

「結婚詐欺師にも貢ぎそうになってたわよね」

 ふふふと笑いあう三人に、サナは涙目だ。

「ちょっと!! そりゃ、サナは男運駄目だけど、今回は良い感じなんだから、邪魔しないでくれます!?」

「美咲ちゃん、何気に酷いこと言ってない?」

 サナの言葉を無視して、美咲は麗子達を睨みつける。

「なら、今、夢中になってる、柊さんの彼ぴっぴとやらを、見せなさいよ。今ここで見せれないのなら、呼びなさい」

「え、ええ……む、無理……あっ!!」

 手に持っていたサナの携帯は、不幸にも操作できる状態で。

「確か、羅那だったっけ? ああ、あった。『今日の夜、会いませんか』っと」

 勝手に麗子はメッセージを送ってしまった。

「あああっ!!」

「あら、すぐ返事が来たわよ? 近所の駅前ですって。じゃあ、私達、見に行くわね」

 麗子の言葉に美咲も負けじと。

「それなら、私も行くわ!! その為に呼ぶ予定だったんだから!!」

 バチバチに火花を散らしながら、一行は珍しく、早めに仕事を終わらせて見せたのだった。



 そして、仕事終わりの夜。

 大人数なサナ達は、待ち合わせ場所の駅前に来ていた。

「えっと……もう着いてるって言ってたけど……」

 サナが辺りを見渡して、そして、すぐにわかった。

「あっ……」

 黒髪に眼鏡、そして、落ち着いた佇まい。人混みの中でも、不思議と目を引くスーツ姿のその姿を。

「浅樹さん……」

「あ、サナ。こんばんは……って、サナ。後ろの人達は?」

「私はあなたを品定めしに来ました、藤崎美咲です!!」

 いち早く反応したのは、美咲。

「あなたったら、はしたないんじゃないのかしら? 初めまして、橋島麗子よ。こちらは、私のお友達の由紀と晴美ですわ」

 その二人の言葉で、羅那はすぐに察した。柔らかな笑みを絶やさずに。

「ああ、サナの。初めまして、浅樹羅那です。どうぞよろしく」

 そして、全員と軽く握手をしてみせる。

「立ち話もなんですから、近くのファミレス、行きませんか? その方が邪魔にならないと思うんで。こっちです」

 と、美咲が勝手に進めていく。

「ちょっと、美咲さん!! 勝手に決めるのはいかがかしら!!」

「ほら、置いてくわよ!!」

「み、美咲ちゃん、ちょっと待ってー」

 とぱたぱたと美咲の後を追うサナを、羅那はしっかりと見ながら、殿を務めつつ、後ろから眺めているのであった。


 そして、一行はファミレスに到着して。

 ガラス張りの店内は明るく、夕食前の時間帯でほどよく賑わっている。

 先に女性陣を座らせてから、羅那がゆっくりと残った椅子に座る。何気に気づけば、サナの隣に羅那が座っていた。

「それで……皆さん、僕に話があるんですよね? けど、その前に何か頼みませんか? 仕事終わりでお腹もすいていると思いますし」

 スマートに流れるように誘導するところは、まさに完璧と言わざるを得ない。

「そうですね。みんな、何を頼む? さっさと決めてね。で、サナは?」

「え、私? うーん、そうだな……今日は、このまぐろの漬けも乗っちゃったネギトロ丼にする」

 そのサナの言葉に、羅那は瞳を細める。興味深そうに静かに……まるでその言葉を刻み込むかのように見つめながら。

「じゃあ、僕はこのステーキセットにするよ。ライスは大盛で」

「なら、私は……」

 羅那に続いて、麗子達も美咲も、メニューを一通り言い合うと。

「あ、すみません。注文良いですか?」

 一語一句、間違えずに羅那が全て頼んで見せた。

「すごい……浅樹さん、あのメニュー、全部覚えちゃったんですか? 流石に私でも全部は無理……途中までは覚えてたけど……」

「途中まで覚えていられるのなら、それでも十分だと思うけど?」

 注文を終えて、羅那は持っていたメニューをさっと戻していく。

 実にやることがスマートだ。けれど、ここに羅那がいるというのが、若干違和感を感じるのは、きっと羅那に気品を兼ね備えた所作がそうさせているのかも知れない。すっと座って足を組むだけでも、様になっているのは、美形だからだけではなさそうに感じる。

「……サナ。こんな凄い人、どこで引っ掻けてきたの?」

「えっと、歩道橋?」

「もしかして、あの? あの歩道橋!?」

 信じられないといった表情で美咲は声をあげている。

「あ、そういえば、ここ、フリードリンクなんだよね? 自分で取りに行くって言ってたけど……」

 そう羅那が声をかけると。

「まあ、そんなことも知らないんですのね。あそこにあるドリンクバーで好きなのを選んで持ってくるんですわ」

 その麗子の言葉を聞いて、羅那がすっと立ち上がり。

「じゃあ、順番に欲しいドリンク言ってくれますか? 僕が取りに……」

「ああ、それは私がするから、その、浅樹さんは座ってて!!」

 がたっとすぐさま立ち上がって、サナが取りに行こうとして。

「サナ、待って。欲しいドリンク聞いてないよ」

「はわっ!! そ、そうだったっ!!」

 そのサナの様子に羅那の笑みは深まるばかり。それだけで堪らないといった雰囲気だ。

「それに全部覚えてられないって言ってなかったっけ?」

「はううう……」

 その羅那の指摘に、ちょっぴり涙目になってる。

「僕も一緒に行くよ。すみません、皆さん、欲しいドリンクがあれば僕達で取りに行くので、順番に言ってくれますか?」

 といった具合に、サナをフォローしつつ、甲斐甲斐しく世話している。

 もちろん、女性陣のフォローもしっかりこなしている。

 更に。

「浅樹さんは、どこにお務めですの?」

「この近くにあるライジング・コーポで……エンジニアをしています」

「どこにお住まいで?」

「あそこに建ってるタワーマンションですね」

 と、質問攻めになっているのにもかかわらず、羅那は嫌な顔せずに受け答えしている。


 ――ちょっと、嘘ついてる? これって、なんか胡散臭い気がするな。けど、この人の様子を見ていると、サナにべた惚れなんだよな……。


 美咲はそう見ていた。

 その所作を見るに、絶対にエンジニアではない。いや、実際にしているのだろうが、たぶん、違うこともしていると思う。

 何故なら、その気品あふれる気の使い方とかは、上流のそれのような気がするから。

「本当に極上な物件なんだよなー」

 サナに対しては害がないことを認識して、美咲はため息つつ、見守ることを決意する。


 ――サナになにかあったら、私、許しませんからね!!


 そう、じろっと睨みつけて。



 一方、麗子も驚きを通り越して。


 ――なんで、こんな底辺な女に、こんな良い男が寄ってきたのかしら!!


 苛立ちを覚えていた。麗子はサナの勤める会社の、社長令嬢であった。そんな麗子を差し置いて、こんな目の前にいる極上の羅那を見つけて彼氏にしているなんて、麗子のプライドが許さない。

 だが……ひとつ引っ掛かることがある。


 ――この方。どこかで見たような気がするのよね? 気のせいかしら?


 似ている人を思い浮かべて……即座に打ち消した。何故なら、『あの方』はこんなに表情を変える人ではないし、こんなに甘い声を出す方ではない。

 とにかく、この状況は許せない。今は何もできなくとも、その力とチャンスがあれば、そのときは……。

 手に持っているカトラリーを強く握りしめながら、麗子はわなわなと振るえるだけでその場を済ませたのだった。



 こうして、美咲の羅那のお披露目……が、麗子も付いてきたという、ファミレスのひと時(?)はあっという間に終わりを告げた。

 ちなみに、この場の料金は、羅那が全て支払っていた。いつの間にやら、である。

「なんか、真っ黒な怪しいカード差し出してたような気がするけど、気のせいかな?」

 目ざとく見ていた美咲が小さく呟いた。

 一方、皆を見送ったサナはと言うと。

「はううう……やっぱり羅那くん格好いいよう……」

 浅樹さん呼びから名前呼びしていて。

「あれ、サナ……浅樹さん呼びじゃなかったの?」

「い、いいでしょ? 羅那くん、ここにいないんだもん。今だけっ!!」

 こんなの見たら、きっとあの『浅樹さん』……悶絶するんじゃないかなと美咲は密かに思っていた。



 一方その頃。

 サナ達と分かれた羅那は。

「ああ、今日も可愛く慌てるサナを見ることが出来ちゃった。サナのお友達とも親しくなれたし、かなり好感度、稼げたんじゃないかな?」

 ふふふと、完璧な自分の行動に、ちょっと酔いしれていて。

 と、それを邪魔するかのように、胸元に入れていた携帯が震えた。

 取り出し、見るのは、父である翔の名前の着信。

「もしもし……」

 見るからに、先ほどの上機嫌はどこへやら、面倒くさそうが顔に出ていた。いつもは出さないのに。

「わかった、こっちでやっておくよ。それくらいの数なら『余裕だから』。だって、相手のランクEでしょ? 俺の相手にならないよ」

 そう電話を切って、羅那は遠くの方を見据え、睨みつけたのだった。



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