やってきた新しい会社はにぎやかです?
どんだけ賑やかなのかと、どきどきして入っていったら……。
意外と普通のオフィスだった。むしろ、無言でやってる方が多いかもしれない。
けれど……その人員が、かなり個性的だ。
というより、制服がないので、皆、ラフな格好で来ている様子。
「騒がしいのかなって思ってしまったけど、なんか、ちょっと違うね……」
「あー、うち、特殊っすからねー」
藤岡がそう、サナに説明する。
「まあ、実力主義だし、ほら、僕とか営業とかでない限りは、スーツはなくていいしね」
羅那もそう付け加えて。
「じゃあ、吉岡くん、サナのこと頼むね」
「了解ですっ!! あ、社長の仕事っぷり、見てきます?」
そう楽しそうに吉岡が言ってきたので。
「ぜひぜひ!!」
「あーもう……なんか、見られてると恥ずかしいんだけど」
と言いつつ、羅那は自分のデスクのパソコンを起動して、手早くメールチェック。すると、秘書が近づいてきた。
「社長、今日は午後14時に会議があります。他は特にありませんね。それと、会長から課題も送られています。既に転送されているかと思いますが……」
「この3件?」
「はい、左様です。そちらは明後日までに終わらせるようにと」
「了解。じゃあ、そっちから終わらせるか」
チェックを終えると、課題に取り組むのか、近くにあった電話に手を伸ばし、番号を入れて、何処かへと電話を始めた。羅那の口から出たのは。
「ねえ、吉岡君……羅那くんの今喋ってるの、どこの国の言葉かな?」
「あー、そういうの専門外なので、ぜんっぜんわからないっす! 秘書さんならわかるかもだけど……社長、なんか、6か国語喋れるって言ってたなー」
「えっ……マジで……!?」
羅那はそのまま、いくつか電話をして、どうやら、商談をまとめたようだ。
「ん、課題終了っと。けど、ギリギリまで連絡は後にするよ」
「後で怒られますよ。もう相手方から連絡来ると思いますから」
「うわあ……追加来るな、これ……めんどいーー」
と言いながら、商談が成立した報告をメールで入れる。その後、プログラムを作っている様子。
「……羅那くん、なんかすごい仕事、こなしてる……」
「これまだ、序の口ですよー、いつもはこの倍っす。ホント、なんであれだけやれるんだって、俺達見てますよ……マジで尊敬、リスペクトっす」
「そ、そうなんだ……じゃあ、もしかしたら……あの時の私に振られた仕事量って……」
「社長なら、難なく回しちゃいますね! あの場では言わなかったけど。言ったら、火に油を注ぐもんですからね! マジ空気読んでましたね、社長!! ……じゃあ、そろそろ、美咲のとこに連れてきますね」
流石にこれ以上は不味いと感じたのだろうか、吉岡はサナを案内始める。
「あ、ここじゃないんですね……」
「今は、まだここじゃないですね。そのうち、こっちに戻ってくると思うけど……こっちっす!」
吉岡が案内したのは、この会社の地下。資料室のような場所だった。
「美咲ーー!! サナっち連れてきたよーーー!!」
「あ、ヨシくん、お疲れーー!! どうだった、あの激ヤバ上司!!」
ひょこっと出てきたのは、パンツルックの美咲だった。サナの所に……ではなく、なぜか吉岡の側へとやってくる。その様子に、サナは、んん? と首を傾げた。
「いやあ、マジで激ヤバ上司だった!! 美咲の言う通りだったよ!! ヤバいのこれでもかと盛ったヤバい激ヤバパフェみたいに!!」
「何それ……けど面白い!!」
そう言って、美咲と吉岡が笑いあってると。
「んん……こほんこほんっ!!」
「あ、ごめん。サナ」
「ごめんじゃないよっ!! っていうか、何で、美咲ちゃんここに?」
話すと長くなるんだけどと、前置きして、美咲は今までのことを話してくれた。
「最初は、サナのことが心配で一緒にいたんだけどさ……なんか、厄介な事ばかり頼まれてきて、しかも、裏帳簿!! 私、捕まりたくないから、すっごく慎重につけてたの!! そしたら、それに目を付けたのか、たくさん帳簿つけるように言われちゃってさ、もう面倒くさくなっちゃって……けど、サナ、なかなかあの会社から出ていかなくて、正直、心配してたんだよ。サナ、会社の仕事、全部引き受けてたじゃん……みるみる顔色悪くなってくし……けど、羅那くんと出会って、持ち直してくれたし……けどやっぱりあそこの会社はダメだなって思ってたときに……羅那くんから、サナの情報を送るのを引き換えに、スカウトされました!!」
「あ、羅那くんにスカウトされたんだ……」
「あの帳簿は凄すぎるって……けど、そんなのに、君の才能を埋もれさせたくないって言ってくれてね。いやあ、あれは惚れちゃうよね」
「それはダメっ!!」
「ああ、大丈夫。あの顔は趣味じゃないから! むしろヨシくんの方が……んん、こほんこほん」
ちなみに、美咲のいう吉岡は、少し前にもう、自分の部署に戻っている。
「というわけで、私はここで資料整理してました!! いやあ、量が多くて、大変だったんだよね。その後は別の部署に配属されるみたいだけど、今は、ここで資料整理。サナも一緒だから安心してね!」
「じゃあ、私も美咲ちゃんと同じ部署なんだね」
「ううん、別みたいだよ。なんか、なんとか対策本部とか言ってたけど……それまでは、ここで資料整理しておいてねーって言われたの。こんな資料をばらっばらに置いとくなんて、羅那くんも怠慢だよね」
「あはは。じゃあ、私も手伝うから、美咲ちゃん、今までの状況教えてくれる? 私は何をすればいいかな?」
こうして、サナは美咲とも無事合流して、羅那の会社で働き始めたのであった。




