魔双剣カルディトゥス
はぁ……と、息を吐いた。
改めて魔双剣を見る。魔剣と呼ばれるほどの力を秘めているのが、羅那の瞳でもわかった。
それに先ほどの少年妖魔の、引き抜こうとしてできなかったことを思い返す。
だからこそ、一瞬、躊躇ってしまった。
怖くないと言えば、嘘になる。
でも、なぜか、それ以上に。
――僕はこの剣を知っている。
しかも親しみを覚えていた。懐かしささえも。
だからこそ、その剣が放つ、『怒り』が少し理解できる。
「ごめん……迎えに来るのが遅くなった」
その羅那の言葉に、剣が反応したかのように見えた。
「覚悟はいいか? いや、これは……俺の方か」
正直、立っているのでさえ、やっとだ。けれど、ようやく、その剣が手に入る。
ぐっと、その剣の柄を握り締める。じゅううっと、手袋越しにその手を焼いていく……そんな魔力を感じた。
「怒ってるよね。当然だよ……僕は君を忘れてたんだからな。けど」
これだけでは、抜けないことを、羅那は心のどこかで感じていた。
だからこそ、この剣は『怒って』いたのだ。
両手で大量の魔力を注ぎ込む。一気に染め上げるように。そして。
「共に生きよう!! 魔双剣カルディトゥス!!!」
羅那と魔双剣が、羅那の持つ光の魔力で生み出された光の柱に飲み込まれた。
そして、その光は。
「羅那くんっ!!」
「な、なんだ、これはっ!!」
サナと少年妖魔にも及び。
「「!!!!!!」」
声にならない叫び声が響いて。そして……この一帯が閃光に包まれたのだった。
くんと、音もなく、魔双剣は羅那の手で引き抜かれた。
とたんに、羅那の脳裏に、様々な記憶がこれでもかと注がれていく。
「うあああああああ!!!!」
そして、欠けていた記憶もまた、鮮明に思い出される。
遠くで声が聞こえる。
『サテライトシステム作動。リンクを確認しました』
懐かしい、その機械的な、女性の声。
『マスターとの接続を確認、記憶の共有を行います』
正直言って、頭は割れそうだ。けれど、それの一つ一つを忘れてはならない。そのどれもが大切な記憶だから……。
『バイタル確認。このままでは耐え切れません。よって、自動回復を行います。……バイタル正常値に戻りました』
羅那の唇が動く。そんな面倒なチェック、要らないと。
『いいえ、確認は大事です。その上で正常に接続しないと、体が持ちません』
また唇が動いた。声にならない声が、相手に伝わる。
『あの方からも、そうしっかり厳命されておりますゆえ。それと頑固者だなんて、失礼です』
その言葉に、羅那は笑みを浮かべた。
『では……私が保持していた魔力をお返しします』
「ああ、よろしく頼むよ」
みるみる力が満ちていく。さっきまでぎりぎりだった魔力が正常値を通過し、更に満たされていく。
ようやく、欠けていたものが、戻ってきた……そんな気さえする。
『それにしても、遅いですよ、マスター。それに……いつもように呼んでください。あなたにそう言われるとむず痒いです』
聞きなれたその声に、羅那は満足げな笑みを浮かべて、こういった。
「ああ。そうだったね、『カリス』」
それを最後に、羅那はようやく瞳を見開いた。青と金の輝きを持つ、宝石のような鮮烈な輝きを持つ、その瞳を……。




