魔双剣の呪いは、なおも放たれて
求めていたあの魔剣が目の前にあった。
二対の魔剣が並んで突き刺さっている。だから、魔双剣――
しかも、魔剣らしく、おどろおどろしいオーラを纏い、何とも言い難い圧みたいなものも感じられた。
もしかしたら、これが呪いの正体なのかもしれない。
「羅那くん……本当にあれを取りに行くの?」
気持ち悪そうに口元を抑えながら、サナは言う。
「もちろん。あれさえ、手に入れば……」
と、癒しを受け終えた羅那が取りに行こうと立ち上がったその時。
「そうはさせないよ、退魔師っ!!」
またあの影が襲ってきた。
「羅那くんっ!!」
「分かってる!!」
咄嗟にシールドを張ってみるが、やはり影は通り抜けて来る。ならばと今度は影を剣で受け止め、なんとか堪えることができた。
直接、受け止めた所為か、少し手に痺れが残る。
「物理なら、ギリ……抑えられる、か……」
そして、あの声と共に少年妖魔も姿を現した。
「へえ……面白そうな剣が刺さってるじゃないか。なら、ボクがもらってもいいよね?」
「!!!」
ダメだ。アイツに奪われたら、元も子もない。
「そんなこと、させ……ぐはっ!?」
注意が剣に向けられたその隙に、少年妖魔の影の攻撃が羅那を襲った。もろに食らって、また壁に強く打ち付けられる。
「羅那くんっ!!」
「来るなっ!!」
羅那の叫び声に気づいて、サナはその場に止まった。彼の叫んだ理由。それは、サナが幸いなことに影の範囲外だったということ。
だが、それと同時においそれと剣に近づくことができない範囲となっていた。
口に広がる血の味を吐き捨てながら、羅那は立ち上がる。
「まだ生きてたんだ。けど、残念だったね。その隙に、ボク、ここに来ちゃった。物凄い魔力を持ってるみたいだね。そうか……君達はこれを取りに来たのか、くくく」
楽しげに少年妖魔は、その二本の剣の柄に手を乗せた。
「でも、これ……ボクが貰うよ、残念でしたー!!」
そういって、ぐいっと引き抜こうとして。
――どくん。
「!!?」
少年妖魔が首を傾げた。うんともすんとも動かない。けれど、確かに何かを感じた。
心臓が、掴まれるような恐ろしい……何かを。
と、とたんに剣から黒いオーラが、少年妖魔へと囲い、そして。
「ぐ……ごぼ……げほっ!!」
吐き出したのは、黒い血だった。
「がは、ごほ……な、なるほど……こうやって……この剣は資格ないやつを……殺してるのか……」
これ以上は無理だと言わんばかりに、少年妖魔は剣から離れる。
「けど……お前はこれを手に入れられるのか? 妖魔のボクですら、血を吐くこんな剣を……」
血を吐きながらも、少年妖魔は哂う。
「どうせ、お前も同じだ。いや、お前は人間だから、この呪いにやられて死ぬだろう。それでも……お前はこの剣を抜くのか? だが、抜かせない。お前らはここで死ぬんだからな!!」
少年妖魔は、二人に向かって駆けだしながら、影を放つ。
その影が狙うのは、傷だらけの羅那。
「そんなこと……させないわっ!!」
ひゅんと放たれるは、サナの聖なる光を帯びた矢だった。
「うあっ!!!」
片腕を貫かれて、少年妖魔の足が止まった。
「行って羅那くんっ!! 私が矢を放ってる間にっ!! けど、気を付けて!! 信じてるけど、あの剣の呪いに負けないで!!」
そうだった。羅那は改めて気づいた。
今は一人ではない。
サナがいる。後ろで戦ってくれるサナが、居てくれる。
「アクセラレーション!!」
高速魔法を唱え、駆けだした。
「行かせはしない!!」
邪魔をする少年妖魔の頭の上を飛び越えて。
「なにっ!?」
「私だって行かせないわ!!」
今度は二本の矢で牽制するサナに少年妖魔は足止めされる。
その間に、羅那はようやく、剣の元にたどり着いた。
半端ない闇のオーラに羅那は思わず、息を呑む。
けれど、怖さは感じない。ただ、その剣から放たれる怒りだけを感じていた。




