少年妖魔との戦闘と見つけたもの
羅那はそのまま、一気に距離を詰めた。
「羅那くん!?」
「クリスタルランサー展開! ライオット・レイ!!」
激しいレーザーが若い妖魔を襲う。それだけではない。
引き抜いた剣には、魔法陣が展開し、更に氷の魔力を帯びていく。
「アイス・ブレイドっ!!!」
隙も見せずに、一気に切り込んでいった。
「うわあああっ!!」
片腕が切り裂かれ、そこからぱきぱきと凍り付く。ざっと、身を翻し、羅那の周りにはまだ、あの光を宿すクリスタルランサーが漂っていた。
「心臓を狙ったつもりだったんだが……」
もう一度、羅那が身構えた、次の瞬間。
「そうはさせないよ……」
少年は、相変わらず動いていなかった。
だが、次の瞬間――。
羅那の背後の影が、歪んだ。
床に落ちていたはずの影が、意思を持ったように盛り上がり、黒い鞭のように跳ね上がる。
「羅那くん、後ろっ!!」
「しまっ……ぐはっ!!」
羅那は咄嗟にシールドを張ったが、その影はシールドをすり抜け、羅那の体を跳ね飛ばした。そのまま激しく壁にぶつかり、その壁ごと、破壊された。
「かはっ……」
二枚目の壁に激しく打ち付けられて、羅那は血を吐いて、そのまま、ずるりと地に落ちる。
「油断したね、退魔師? ボクを殺そうとしたの? でも、残念。ボク、君よりも強かったみたいだね?」
「ら、羅那く……きゃあああ!!」
サナが駆け寄ろうとした瞬間、その足元の影が、彼女の足首を掴んだ。
「きゃっ……!」
影は、腕へ、胴へと絡みつき、冷たい圧力となって、彼女の動きを奪っていく。
「な、なに……これ……」
「こっちの子は、さっきの退魔師よりも全然弱いね。さて、どうしようかな? 君、さっきの退魔師の大切な人でしょ? ふふふ、目の前で、ボクの影で体を壊しちゃったら、アイツ、狂っちゃうかな?」
サナをぐるぐるに巻き上げた影は、どうやら、少年妖魔が操っているようだ。
「こ、これって……あなた、の……?」
「そう、ボクの可愛い影だよ。このまま君を引きちぎってみせようか……?」
「ああああっ!!」
その影に引きちぎられそうな痛みで叫ぶサナの後ろで、少年妖魔が楽しげに哂う。
と、そこに静かに近づく者がいた。
「ヴァリアブル……スラッシュッ!!!!」
「うわ、まだ生きてたの!?」
更なる力の本流と閃光が走る。ずどんと、物凄い爆発音を轟かせ、妖魔は、もろにその攻撃を受けてしまった。
「ぐはっ……やったな、退魔師……って、まさか、さっきの攻撃は……」
目が慣れ、煙が消えた先には、影が切り裂かれ、サナの姿がそこになかった。もちろん、あの羅那の姿もない。
「追いかけっこの始まりだね……」
妖魔は血を吐き出すと、楽しそうに彼らの後を追い始めたのだった。
「はぁ……はぁ……ここまで来れば……いいか……くっ……!!」
洞窟の奥へと入り、羅那はようやく、そこで抱きかかえていたサナを下ろした。
「羅那くん……」
「ごめん……君にこんな思いをさせてしまって」
そういう羅那の口の端からは、血が零れていた。
「体、大丈夫?」
「んん、たぶん。今、痛覚を切ってるから……けど……それが解けたら、ちょっとヤバい。アイツ、僕よりも弱い魔力だったと思ったのに……」
「なんか、なんかそれ、変な感じしてたよ……」
「うわ、マジか……誤魔化されてたなんて……じゃなきゃ……ここまで追い込まれないか……」
「でも、羅那くん……本当に無理してない? 痛くない?」
「これくらいは平気。前の時と似たようなもんだよ。あのときもあばらの数本行っちゃったし」
「いやそれ、ヤバいんじゃ……」
よく見たら、目元を覆っていたミラーシェードが割れて、その瞳が見え隠れしていた。羅那は、乱暴にそれを外して捨てる。頭からも少し血が垂れているようだった。
「とにかく、今、癒すね!」
「……そうしてもらえると助かるよ」
とサナの治癒の力を受けている間に、羅那はそれを見つけることが出来た。
「……サナ……あれ見て。やっぱり、サナの感知能力は正しかったよ」
「えっ……」
羅那が指さす先にあったのは。
――禍々しいオーラを纏う、恐ろしい二本の魔剣が突き刺さっていた。
その場の空気が、重く沈んでいる。
まるで、その存在そのものが、怒りを吐き出しているかのように……。




