乗り越えられたことと次にすべきこと
真っ暗な世界……なのに、そこに恐怖はない。
いつも見てきた世界だと理解したからだ。
『久しいな、羅那』
「……アーク、だよね?」
確かめるように、羅那は目の前にいる神々しい青年に声をかけた。
『少しずつ、思い出してきているというところか』
「そうしてくれてるのは、アークの、お陰って理解していいのかな?」
その言葉にアークは僅かに笑みを浮かべた。
「たぶん、アークが知ってることの10分の1くらいしか、思い出していないと思うんだ」
『それでも、お前はここまで来た。それに……流石にこれは緊急事態だったからな』
「変なことに巻き込んじゃった?」
『お前が気にすることはない。全てはもう済んだことだ。後は自然に身を任せればいい』
「え? なんかいろいろと面倒なことになってたけど……」
『それより、私に聞きたいことがあるだろう? お前が一番、知りたいことだ』
「僕が一番、知りたいこと……? どうしたら、サナを手に入れられるとか?」
『……一発殴ろうか?』
「うそうそっ!! 冗談!! 流石に神様に殴られたら、僕でも生きていられないよ!! た、たぶんっ!!」
そう慌てる羅那にアークは、くっくっくっと悪者のように笑って見せて。
『暴走したくないのだろう。なら、『魔双剣カルディトゥス』を見つけて、引き抜けばいい。それでお前の暴走は止まる』
「え、魔双剣? それって、魔剣ってこと?」
『もう時間はない。後はお前の力と、周りを頼ることを知るんだな』
「ちょっと待って! まだ聞きたいことが……」
「あっ……!!」
瞳を開けると、そこには、心配そうに見つめる家族と、そして。
「羅那くんっ!!」
抱き着いてくるサナがいた。
「あ、あれ……ここって、僕の部屋……?」
正確に言うと、実家の羅那の部屋だった。
「全く、親にどれだけ心配かけさせるんだ」
「でも、目が覚めて本当によかったわ」
翔とリィナも安心したように微笑んでいる。
「えっと……もしかして、凄く寝てた?」
そういう羅那の言葉に答えたのはサナだった。
「羅那くん、3日間も寝てたんだよ! 私は翌日に起きたって言うのに、羅那くん、なかなか起きないから心配したんだから!」
と、ちゃりっとサナの首にあの、羅那の渡した鳳凰のペンダントが下がっているのが見えた。
「そのペンダント……」
「ディーが返してきた。あまりに荷が重すぎるってな。それにあの中に飛び込む覚悟もなかったとも」
「はわわ、あ、あのときは無我夢中で……それに多少傷ついても、私には治癒の力がありますから!」
そう微笑むサナを見て、驚いた。
「治癒の、力……?」
「ああー、他の人には言っちゃいけないって言われてて。けど、ようやくわかったの。どうして、私が妖魔を知ってたのか。どうして、こんな力を持っていたのか、思い出した……羅那くんのお陰だね」
「僕が君を巻き込んだのに?」
羅那の言葉にサナはもう一度、笑ってみせた。
「お陰で、本当のことを思い出せたから、忘れてた大事なことも思い出せたからいいの。結果オーライってことで!!」
前向き過ぎるサナの言葉に、羅那は目を丸くして、そして、笑いだした。
「サナには敵わないな。サナがいいなら……僕も良いことにする」
と、こほんと翔が咳を挟んだ。
「まあ、そういうことだ。ディーも家に戻ってしまったし。ディーとの婚約はなくなったから、本来の所有者に戻しただけだ。後は好きにしろ」
「うんもう、翔ったら。まあ、そういうことだから、羅那。あなたはサナちゃんをしっかり守りなさいね」
「えっ……い、いいの?」
思わず、素で尋ねてしまった。
「いいもなにも、お前達は成人しているだろう? 力ある者同士、これからどうするか悩め」
少しバツの悪そうに翔がそう告げていた。どうやら、少し強引に進めたことを翔なりに反省しているようだ。
「……え、えっとね。また羅那くんが暴走しちゃったら、私、また止めてあげるから。だから、怖がらないで欲しいの。側にいても、いい?」
サナがもじもじした様子で、羅那の方を見ている。
「断る理由なんてないよ。けど、本当にいいの? 言っておくけど、僕……たぶん、重いよ?」
「羅那くんじゃないと、嫌なの……だ、だって、羅那くんのこと、好きだから!!」
一瞬だけ、静かになった。
「……あ、あれ?」
首を傾げるサナが羅那を見る。
彼は口元を抑えて、頬を真っ赤に染めながら、照れたように、ようやく口を開いた。
「こ、こんなところで……そんなこというの……反則っ」
その様子に、んんん? と、翔とリィナが顔を見合わせた。
「そういうのは、もっとムードあるところで……言いたかったけど」
そのまま、サナを抱きしめて、耳元で告げた。
「僕も、だよ。初めて会ったあの時からずっと……君だけを見ている……怖くて、離れようとした時もあった。でも、それでも目を逸らせなかったんだ」
「羅那くんっ!!」
サナも抱き着いてきて。
「……もしかして、告白まだだったのかしら?」
「……あれを渡してるのに、か……?」
リィナと翔は、思わずそう呟いたのだった。




