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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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サナが見た真実は

 元々、羅那の力は不安定なものだった。

 成長するにしたがって、その暴走する頻度は下がっていったが、ゼロにはまだ至っていない。

 しかし、ここ最近は目を見張るほど、安定していた。

 だからこそ、父である翔は、その加減を見誤り。

 そして、二人の同時暴走へと繋がってしまった。

「翔!! 二人が暴走している!! このまま放っておいたら……!!」

 羅那の母、リィナが叫ぶ。辺りは二人の力の暴走により、家具は倒れ、部屋は見る影もない。

 その物音を聞きつけて、ディーも駆け付けてくれたが、目の前の初めて見る暴走に、何もできずにただただ、茫然としている。

「リィナは、サナのことを頼む! 俺は羅那を抑える!! 任せたぞ!!」

「わかったわ!! こっちは私に任せて!!」

 リィナは理解している。恐らく、面倒なのは力の強い羅那の方だ。

 サナはそれほど強くはない。だからこそ……リィナはすぐにでも抑えられると思っていた。

 リィナはサナの状態を見る。

 空中に横たわるように、サナは気を失っていた。しかし、周りから発せられる力は、何者を寄せ付けない力を持っていた。

「これは、私も全力でいかないとダメね…………契約に基づき、精霊王よ、その力をお貸しください!!」

 リィナの周りに精霊王の力が満ちる。そのまま、リィナは詠唱し、唱える。

「……戒めの檻!!」

 がしゃんという音と共に、サナを覆う無機質な檻が現れた。とたんに、サナを覆っていた力が、ふっと消え失せる。それと同時に、ばたりとサナが宙から落ちてきた。

「……まずは、第一段階、突破ね。次は……サナ。見せたくないだろうけど、あなたの深層を見せてもらうわ。たぶん……その所為でこうなったと思うから……千里眼!!」

 魔法でサナと繋がり、そして、サナの深層に眠る記憶を辿っていく。

「えっ……まさか、サナが……!!?」

 その事実を知ったリィナは、思わず驚愕するのだった。



 サナの耳に懐かしい声が聞こえた。

『そろそろ、あなたも思い出したらどうかしら? 彼の……心を救うためにも……』

「その声……お母さん……?」

 暖かい手のぬくもりが、そっとサナの頬に触れる。なんだか、優しく笑っているようにも感じた。

『さあ、サナ。思い出して。悲しく辛い思い出かもしれないけれど……もう思い出す時間よ』

 そんな声と共に、サナの目に飛び込んできたのは……あの飛行機事故の……いや、本当は……。



 私がまだ16歳の頃の記憶。

「いや……いやよ……私も戦うっ!!!」

 サナは泣きじゃくっていた。わかっていた。それはできないということも。そして……心のどこかで、この悲劇は避けられないということも、感じていた。

「サナ……」

 サナの父、流斗は、黒い髪を揺らしながら困ったような顔を浮かべていた。彼は屈強な剣士でもあった。

「んもう、サナ姉、往生際が悪いよっ!!」

「そうよそうよ、サナ姉は、私達の希望の星なの」

 双子の妹、星流(せいる)美風(ミカゼ)も、ふわりとした金髪を揺らして、銀色のナイフを持って、戦いに向かおうとしていた。外には数えきれない妖魔が現れ、多くの戦士達が戦っていた。正直言って劣勢だ。

「父さん、先に行くよ……流輝(リュウキ)、行こう。流石にこれ以上は待てない」

「ああ、そうだな、流加(ルカ)兄。俺達がなんとか食い止めて置く」

 二人の兄達もまた、大きな銀の剣を持って、外に飛び出した。流加は、銀髪であったが、流輝は父に似た黒い髪を長くして一つに纏めていた。もちろん、この兄達も流斗の血を受け継ぎ、立派な剣士となって、この地を守り続けている。流斗と並び立つほどに。

 その二人の加勢によって、徐々に妖魔達を追い詰めていっている。

「私達も行くね! お兄ちゃん達ばっかりに良い格好させたくないもの!」

「後で、合流、待ってるから」

 星流と美風も同じ形のナイフを持って、外に出る。この二人は主にサポートを行う。星流は、他者に付与を与え、強化する力を持っていた。美風は、母親程の力をもってはいないが、それでも治癒の力を持っているし、彼女の持つ守りの盾はかなり強力だ。怪我した仲間達を癒しながら、仲間達に盾を付与していく。あれほど劣勢であった状況が四人の加勢により、徐々に持ち直していた。

「それなら、私も、私も連れてってよ!! 私も戦えるし、みんなを一気に……」

 サナはそう叫ぶが、それを母親であるシイスが止める。柔らかな、ふわりと波打つ金髪をその背に流して。

「それはダメよ、サナ。あなたは私達、竜族の希望の星なの。あなたは黄金竜に次ぐ、『白銀竜』なのだから。私の白竜でも、流斗の暗黒竜でもない……お告げにあった、『世界を救う白銀竜の巫女』なのよ」

 巫女……特に竜族の中で、治癒に長けた者につけられるもの。それは、以前、母が持っていたものだった。かなりの力を持っていた母であり、巫女でもあったシイス。しかし、その力は年々衰えているらしく、その力を行使する回数も少なくなっていた。

「でも……でも……みんなが戦っているのに、私だけ……戦ってない……私だって戦えるのに……」

 それに、サナは特殊でもあった。巫女だというのに、魔法のような力を持ち合わせていたのだ。その威力はさほど強くはないが、それでも数多くの妖魔を一掃できるほどに。しかし、それよりも特筆すべきは、彼女の持つ治癒力にあった。年々とその力をつけていくサナの力。今では腕を切られても、それがなかった事にできるほどに、高度な力をも持っていたのだ。シイスの力を上回るのではないかと言われるほどに。

「だからこそ、よ……これから起きる『第七の災厄』。それを乗り越えるには、きっとあなたの力が必要になる」

 そのシイスの言葉を流斗が続けた。

「サナ……お前にはここに残っていて欲しいんだ。皆の為に……これからの未来の為に……だから、堪えてくれ。そして、生き延びて欲しい」

「ひっく……ひっく……やだよ、お父さん……」

 サナの紫の瞳から、ぽろぽろと涙が零れる。

「あの子達も言ってたけど、あなたは私達の希望なの。白銀竜なんて、滅多に生まれなかったのに、あなたがその竜として生まれた。私、嬉しかったのよ。あなたがこうして、生まれて来てくれて。私の代わりに、たくさんの人達を癒してあげて」

「いやだよ、いやだぁ……お母さん……置いていかないで……」

 泣きじゃくるサナを、父と母は強く抱きしめた。両親は気づいていたのかもしれない。これが今生の別れになるかもしれないことに。

「それに、今、あなたを外に出すことはできないの。私達、竜族の会議で決まったことだから」

「妖魔は一目見たことを、他の仲間に瞬時に情報として伝達していく……どういうメカニズムなのか分からないが……白銀竜の巫女がいることを知られては……せめて、第七の災厄が来るまでは、お前には生き延びて欲しいんだ」

「いやだ……いやだよ……私も、行く…………」

 このままでは、サナが飛び出してしまう。そうすれば、外に出て、その力を使えば、確実にサナのことを妖魔は認知するだろう。

「シイス。これを使う。まさか、こんな時に使うとは思わなかったが……」

「そうね……」

「お父さん……お母さん……何を、するの……?」

 二人は小さなアタッチメントを取り出した。銃……というより、電気ショック銃と言うべき『それ』。

「大丈夫。怖がることはないわ。少し、ちくっとはするけど、それだけ……」

 と、流斗が外を見て、顔を歪めた。

「シイス。後は任せる。……どうやら、妖魔は更に数を増やしたようだ」

「……そう。わかったわ。私もすぐに行くから」

 二人はそっとキスを交わすと、流斗はそのまま、そこを出た。その手には、黒い巨大な剣を携えて。

 外では激しい戦いが繰り広げられていた。流石は破壊神とも言われていた流斗だ。すぐに戦いは優勢へと覆していく。

「お父さん……お母さん……」

「サナ……あなただけを残すことを……許して。でもきっと……あなたを守ってくれる人がいるわ。私の流斗がそうであったように、あなたにも、あなただけの大切な人ができるはず……だから……」

 そっと抱きしめて、サナのその首筋に『それ』を撃ち込んだ。

「おか……あさ……」

 だんだんと、意識が遠のいていく。

「幸せに……なって……」

 優しいシイスの言葉と共に、ぷつりと、そこでとうとう暗転して。


 ああと思った。

 飛行機事故だと聞いて、そうだと思ってしまったのは、きっと私にされた『あれ』の所為。

 本当は……本当は、羅那くんのせいじゃない。


「わたしの……せい、だ……」

 そう呟いて、サナはゆっくりとその、紫の瞳を開いた。

 僅かにその手を震わせながら。




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