表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/60

翔が仕組んだことと羅那の暴走

 いつものように、会社のデスクに座って、羅那は仕事のチェックをする。

「さてっと、今日もさっさと終わらせ……えっ」

 思わず、その手が止まった。

「待って、待てって……えっ」

 表も裏もこれでもかと仕事が大量に届いている。

 こんなこと、初めてだった。

 一瞬、パニックになりかけたが、すぐに理解した。

「社長、どうかなさいましたか?」

「杉崎、今日の予定を全てキャンセルしてくれないか。実家に戻る」

「わ、わかりました……」

 ひとつため息を零して、羅那は愛車のキーを手に、その席を立つ。

「だからといって、こんなに仕事を送る必要あるのかよ……」

 思わず素が出てしまう。いや、いえない。

 とにかく、父は……翔は羅那のことを呼び出していることが分かった。

 とてつもなく、嫌な予感がするのは気のせいだろうか。

 車に乗り込んでも、その心は落ち着きを取り戻すことはなかった。



 そして、実家の玄関を抜けると、そこで待ち受けていたのは。

「……ディー?」

「久しぶりね。それともおかえりなさいと言うべきかしら、羅那」

 くすっと微笑んで出迎えてくれたのは、ディーだった。

「ふふ、その美貌に磨きがかかったようだね。綺麗だよ。ディーそのアクセサリーも……えっ」

 首元に揺れるペンダントを見て、さあっと血の気が引いた。


 ――なぜ、サナに渡したペンダントが、ディーの首にあるんだ。


 そして、理解した。

 父が呼び出した理由。そして、ここにディーがいる理由を。

 ぱちんと、乱暴に無詠唱魔法で、そのペンダントを手にする。


「えっ……羅那?」

「これは、君に渡したものじゃない。これをどこで手に入れたんだ?」

 思わず声が低くなる。苛立ちが募っていく。

「あ、あなたのお父様、からよ……」

「父はどこにいる?」

「た、たぶん、奥の……書斎に……」

「ありがとう」

 そう短く告げて、羅那はそのまま、ペンダントを手にして向かう。

 父のいる書斎へと。

 残されたディーのことを無視してそのままに。



 ばたんと、激しい音を立てて、羅那はその書斎に入って来た。

「なんだ、騒々しい。もう少し静かに……」

「これは、どういうことですか?」

 ずかずかと、怒りを抑えきれない。たぶん、魔力が漏れている。そんな気がする。

「何のことだ?」

 どんと、ペンダントを叩きつけるように、翔の机に押し付けた。

「しらばくれるなよっ!! なんで、なんでここに、サナに渡したペンダントがあるんだっ!! これはディーに渡したものじゃない!!」

「ああ、そうだな」

 静かに告げる翔の言葉に、羅那はかちんと来た。

「サナに何を言った!! サナに何をしたっ!! このペンダントを奪って、何をしたんだよ、親父っ!! 答えろよ!!」

 珍しく声を荒げる羅那を見たような気がする。

 それでも翔は冷静だった。

「俺に威圧したって、無駄だぞ、羅那」

「いいから、答えろよっ!! それによっては……!!」

「俺を殺すつもりか?」

「…………!!!!!!!」

 ばんと、もう一度、机を叩いて、ギンっと睨み返す。

「もう、お前も気づいているんじゃないのか? あの子には、お前と別れろと言った。それだけだ」

「なんでっ!! なんで、断りもなく!!」

「お前に相応しいのは、ディーだと思ってな。婚約者として、ここに呼び寄せた」

「婚約なんて、しないって言ったはずだ!! 婚約する相手は、自分で見つけるって言ったっ!!」

「それが、柊サナなのか?」

「ああ、ああそうだよっ!!! サナだけだ!! 俺を……いや、俺が好きなのは、他の誰でもない、サナだけなんだっ!!!」

「サナはダメだ。あれは親友が残した唯一の忘れ形見だ。戦いに巻き込むわけにはいかない。災厄を退ける戦いに耐えられる器ではない。それに関しては、ディーも同じだが……だがあの子に戦う術がある。守る術がある。だが、サナにはそれがない。それが理由だ。お前も子供ではないだろう? お前の使命は、災厄を退け、この地を守ることだ」

 そして、翔は続ける。

「それに……お前はあまり認識していないようだが、アラスカでの戦いで、お前が戦っている間に、多くの犠牲が出たことは覚えているな?」

「な、なんで、今、そんなことっ!! あのときは俺だって、全力で、ギリギリの戦いでっ!!」


「その犠牲になったのが、サナの家族だとしても、か?」


「……えっ……今なんて……どういう、こと……だよ……?」

 その言葉に羅那は、酷いショックを受けた。

 それ以上、聞きたくない。


「お前がもっと早く、あの戦いを終わらせられたら、その犠牲はなかっただろう」

「そ、そんな……こと……!! あれは……でも……」

「そうだ、お前だって必死になって、なんとか退けられたものだったな。私もそれに加わっていたから、よくわかっている。だが……それでも思うのだよ。もっと良いやり方があったのではと」

「何を……言って……」

「あのとき、最初……お前は本気を出していなかったな?」

 その翔の指摘に羅那は狼狽する。そう、初めは弱すぎる敵だったから、さほど構えずに戦っていた。相手の出方を見るために。

「もしあのとき、お前が最初から本気でやってたら……ギリギリ、後方からきた敵とも戦えたのではないかと思うのだよ。違うか?」

 けれど、敵はだんだん強くなり、全力を出さなければ倒せなくなってきていた。

 しかも数が多かった。

 だから、途中で翔も参戦して、ようやく鎮圧出来た戦いだった。

 最初はそうだったかもしれない。けれど、本気は出した。でも……もし、あのとき、最初から本気で戦っていたら……。


 もし、間に合っていたら、サナの家族は……守れたのだろうか?


「そんなの、今はっ……関係ないだろっ!! 俺は……俺はっ…………!!!」

 羅那の胸が、どくんどくんと激しく波打つ。


「ちょっと、こっちまで聞こえてるわよ、翔。それに羅那の声まで…………翔、これはどういうことかしら?」

 そこに羅那の母、リィナが入って来る。羅那の様子がおかしいのに、いち早く気づいたのは、リィナであった。それに翔はまだ気づいていないように感じる。

「どうもこうもない。羅那が駄々をこねているだけだ」

「ちょっと、翔。本当にわかって……」


 更に間が悪いことが起きる。何故なら。

「か、会長……!! あの、お客様が来ておりまして……」

「あのっ!! やっぱり納得できなくて……っ!!」

 入ってきたのは、あのサナだった。

 どうやら、翔に直談判しに来たようだが…………。


「サナ……!?」

「あ、羅那くんっ!!」


 嬉しそうに笑顔を浮かべるサナに、羅那もまた思わず笑顔を向けようとして…………できなかった。



『あのとき、本気で戦っていれば……』

『お前がもっと早く、あの戦いを終わらせられたら、その犠牲はなかっただろう』



 苦しそうに、羅那の顔が歪む。

「え、羅那……くん……??」

「ごめん……全部……僕の、せい……だ…………」

 逃げることも、守ることも、何も選べなかった。

「え、どういう…………うぐっ!?」

 サナが話をしようと近付いたとたん、互いの何かが共鳴した。

「ああああああああああっーーーー!!!」

「きゃああああああああああっーーーーー!!!!」

 羅那とサナ、同時に…………暴走したのだ。

 この豪邸の中で、激しく周囲を巻き込んで。

 嵐が巻き起こるように、二人はそろって、内なる力を暴走させたのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ