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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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29/83

美しい姫は華やかなステージで輝く

 会場では、様々な女子社員が着飾っていた。

 中には、おいおいと突っ込みたくなるほどの者もいたが、おおむね、普段よりも気合が入っていて、美しくなっていた。

「はあ……こんなんで勝てるのかしらねぇ」

 サナの同僚、美咲は、ごく普通なドレスを纏って、パーティーのビュッフェを楽しんでいる。

「ん、これ美味しい……後でサナにも教えないと……それにしても、サナ遅いわね?」

「きっと怖気ついたのよ」

「ねえ……」

 美咲の隣にその美貌を誇る、由紀と晴美が微笑んでいる。

「そうなのかなーただ、準備にかかってるだけかと思うんだけど……」

 美味しいローストビーフを味わいながら、美咲は興味なさそうに見つめていた。

 もうすぐ、パーティーのミスコンが始まってしまう。


 と、そのときだった。

 会場の入り口付近が、ちょっと騒がしくなってきたのは。気のせいだろうか。

「遅くなってごめん。連れてきたよ」

 鳳凰のブローチを付けた羅那と、もう一人。

「えっ……」

「うそ……」

「ま、まさか……!?」

 会場にざわめきが広がった。


 かつんとヒールの音を立てて現れたのは、美しい女性。

 いや、羅那が着飾ったサナだ。


 とんでもない店で用意した、気品あふれる艶やかなドレス。

 またとんでもない美容室でセットした、間違いないメイク。

 それが、サナを本当に姫に見せていた。

 いや、これが本来のサナの姿と言うべきか。


「お、遅くなりました……」

 ぺこりと丁寧に頭を下げれば、男性社員達がざわめいて。

 そんな様子を見ていた羅那は楽しげな笑みを浮かべていた。

 もっとも、彼女に触れる男がいれば、羅那は容赦しないつもりであったが。

「見違えるほど綺麗になったわね、サナ?」

 にまにまと嬉しそうに美咲が声をかけた。

「美咲ちゃんも綺麗にすればよかったのに……もったいないよ……」

「私はいいの。あんなにがっついていないし。あ、ここのローストビーフ美味しかったわよ? 後で食べたら?」

 その言葉に、サナの紫色の瞳が輝いた。

「うん、食べるわ!」

 その笑顔を見て、他の男達がノックアウトされているのに、サナは気づいていない。

「サナ……その恰好で、あんまり笑顔を振りまかないように」

 羅那がすかさず、そう告げるものの。

「え? いつも通りなだけなのだけど……」

 サナは気づいていないようだ。羅那はふうと、息を吐いて。

「笑う時は、僕だけに向けて。いいね?」

「えええっ!?」

 その二人のやり取りをにまにまと、美咲は生暖かく見守っていたのだった。


 ちなみに、ミスコンは……サナの優勝だったことも記しておく。


 サナが大きなトロフィーと副賞を宅急便で送り届ける手続きを行っている間に、もう一人の客がそこに姿を現した。

「……えっ、まさか、なんで?」

 その姿を見て、羅那の表情が強張る。そして、そそくさと隠れるように会場を後にした。

「な、なんで……なんで、父さんがここに……来てるんだ!?」

 ダメだ、今はサナを見せてはいけない。しかも、あんなに着飾ったサナを見せるのは……いけない。

 そのまま駆け出し、サナの元へと向かっていったのだった。



「おや、息子がここに来ていると聞いてきたのだが……いないようだな?」

 そう告げて、羅那の父、翔は、その青い瞳を細めた。その瞳を細める仕草は、羅那にそっくりであった。

「こ、これはこれは、浅樹会長。どうしてここに?」

「息子がこのパーティーに参加していると聞いたのでね。ちょっと話をしたかったのだが、もういないようだ」

 もう少しここにいても? と呟いて、ふと、ステージを見る。そこには特別ミスコンの文字が張られていた。

「ほう、ミスコン……面白いことをしていたようだな?」

 この会社の社長に翔は尋ねた。

「ええ、パーティーなのだから盛り上がったらどうかと……た、確かその息子さんが提案してくれたと聞いていますよ」

「ほう……うちの息子が…………で、優勝したのは誰なのかな?」

「うちの社員の、柊サナですね。まさか、あれほど化けるとは……」

「柊、サナ…………親友の忘れ形見の名前が、なぜ、ここで……?」

 不思議に思いながらも、翔は興味深そうに、また、その瞳を細めたのだった。



「えっと、その……羅那くん?」

 サナをそのままタクシーに乗せて、羅那は続ける。

「今日はそのまま、帰って。ちょっと面倒な客が来てね……サナを見せたくない」

「見せたくないって……」

「後で話すよ。お願いします」

 そういって、羅那はサナを乗せたタクシーを送り出す。少し離れたところで、見慣れたリムジンが見えた。それを見て、羅那は、はあっ……と、またため息をつく。

「バレないといいんだけど……何とか誤魔化すか……」

 緊張した面持ちで、会場へと戻っていき……。



「おお、羅那。どこに行ってたんだ?」

「ちょっと急な仕事が入ったもので……それよりも、どうして、あなたがここにいるんですか?」

 少々、棘のある声で、羅那は父に抗議する。

「お前がそのブローチをつけて、このパーティーに参加してると聞いてね」

「それだけですか? 僕はただ、取引先のパーティーに参加してただけですよ」

「ふうん……そうなのか?」

「それだけです。それにあなたも忙しいのではありませんか? 早く帰った方が良いのでは?」

 その羅那の言葉に、父である翔は立ち上がる。

「まあいい。邪魔したな……そろそろ仕事に戻るとしよう。お前も忙しいはずだが、大丈夫か?」

「問題ありません」

 その言葉を最後に、翔はあっという間に、パーティー会場を後にしたのだった。


「…………何とか、バレなかった……よな?」

 見送った後、羅那は思わず、そう呟いたのだった。

 



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