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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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27/62

そこまで言うなら勝負しよう

 翌朝。

 いつもより少しだけ早く目が覚めたサナは、胸元に残る妙な熱に、そっと手を当てた。

(昨日……羅那くんの手……)

 思い出すだけで、指先がじんわりと温かくなる。

 裏口へと導いたあの時間は、ほんの数分だったはずなのに、心に残る感覚だけは、やけに長く続いていた。



 そんな思いを胸に、サナはオフィスに入ると、いつもと少し空気が違う。

 視線が――多い。

 自分の席に着くと、何やらサナを見て、女性社員たちがひそひそと話していた。

「……?」

 足を止めた瞬間、横から声がかかる。美咲だ。

「おや……? サナ、私、ちょっと偵察しに行ってくるわ」

「え、美咲ちゃん?」

 軽い調子でそう言い残し、美咲はさくっとどこかへと去っていった。


「……行っちゃった……」

 取り残されたサナが、鞄を抱き直した、その時。

「ねえ、柊さん……」

 声をかけてきたのは、二人の同僚。

 ――由紀と晴美。

 かつて、麗子の傍に、いつもいた顔だ。

「あの人と……まだ、続いているのかしら?」

「まさか、もう別れているわよね?」

 胸の奥が、ひくりと強く鳴る。

「……まだ、続いています」

 ムッとした表情のまま、サナが答えると。


「廊下でキスして見せびらかした上に――誰も使っていないはずの休憩室に、二人で消えたって」


「え……?」

 サナは目を見開いた。

「確かに羅那くんとは一緒にいたけど、休憩室には……」

 羅那と手をつないで、そのまま裏口を出ただけだった。

 キスなんて、もう何日もしてない。

 これってもしかして……とんでもない噂が広がっているってこと!?

 そう思い至ったところで、由紀と晴美が出した答えが。

「そう。やっぱり、あんた――アバズレだったのね?」

 その言葉が、サナの胸の奥に、冷たい針のように突き刺さった。

「ち、違うわ!! あれは……!」

 声を上げてサナが否定した瞬間、周囲の空気がざわりと動く。


 気づけば、視線の数が増えていた。

「私たちのアイドルを独り占めにするなんて、許さないわ!!」

「あなたに、浅樹さんは相応しくない!!」

「きっと、お情けで付き合ってるのよ!!」

「いいから、別れなさい!!」

 次々に浴びせられる言葉に、サナの喉が詰まる。


 ――知らないくせに……!!

 私がどんな思いで、羅那くんと付き合っているのか……どんなに苦しいのか、知らないくせにっ!!

 いつの間にかサナの怒りは、頂点に達し。


「……もう、いい加減にしてよっ!!」


 気づけば、叫んでいた。


「なら、あなた達も羅那くんに告白とかすればいいじゃないっ!!」


 胸元で強く拳を握りながら、サナは強く言い放った。

 その瞬間――。


「だとしても、僕は君達を受け入れはしないけどね」


 低く、静かな声。

 はっとして振り向いた先に、腕を組み、冷ややかな眼差しで立つ羅那の姿があった。

 女性社員たちは、一斉に言葉を失い、気まずそうに視線を逸らす。

「まあ、いいよ」

 羅那は肩をすくめ、淡々としながら、サナの隣に寄り添う。

「確か、来週の月曜にホテルでパーティーがあるそうだね。君達の会社で」

 その羅那の発言に、ざわり、と空気が揺れる。

「それで――ミスコンでも開いて、勝負してみたら?」

 羅那は口元に、薄く笑みを浮かべて。

「きっと勝つのは、サナだろうけどね」

「ちょ……羅那くん!?」

 抗議しかけたサナをよそに、羅那は楽しげに言葉を重ねる。


「君達はやるの? 君達の誰かが勝ったら、その時は、付き合うことを考えてもいい――まあ、そんなことは起きないだろうけど」


 一瞬の沈黙。

 そして。


「やるわっ!!」

「私も!!」

「あたしも!!」

 次々と上がる声。


「ちょ、ちょっと!! 羅那くん、本気なの!?」

 慌てて袖を引くサナに、羅那は身を屈め、耳元で囁いた。

「大丈夫。サナが勝つよ」

 指先が、昨日と同じ温度で、そっとサナの手に触れる。

「僕に、いい考えがある」

 そう言って、悪戯っぽく微笑む羅那を見上げながら、サナは胸の奥が、静かに、でも確かに高鳴るのを感じていた。


(……戻れない、気がする)


 昨日、繋いだ手の続きを。

 そして今日、世界が試そうとしている――そんな予感を抱きながら。




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