表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/62

切ない気持ちの理由は

 昼休みの社員食堂は、いつも通りのざわめきに包まれていた。

 サナはお弁当の箸を動かしながら、何度目か分からないため息を、そっと飲み込む。

「……ねえ、美咲ちゃん」

「んー?」

 スマートフォンを片手にしていた美咲が、顔だけこちらに向ける。

「最近さ、羅那くんが……ちょっと、よそよそしい気がして」

「ほう? これは何かありましたかな、サナさんや」

 美咲の眉が、面白そうに上がった。冗談めかして尋ねてみると。

「前はもっと、こう……近かったっていうか。触れるか触れないか、みたいな距離だったのに」

「うんうん、それで?」

「触れて来てくれないの。絶対に、一線越えない感じ」

 サナ自身、言葉にしてみて、改めて不思議に思う。

 冷たくなったわけじゃない。優しさも、気遣いも、変わらない。

 ただ――距離だけが、少し遠い。

「もしかして、喧嘩した?」

「してないよ」

「何か嫌われるようなこと、した?」

「それも……たぶん、ない」

「なら、浮気だっ!!」

「それも違うと思う」

 一通り聞いた後、美咲は首をかしげた。

「……と、なると……流石の美咲さんでも、理由を解析するのは難しいですなー」

 あるとしたら、もっと別の深い話になるだろうが……サナの話を聞いていると、そこまでは踏み込めていないらしいし。

 ――こりゃ、根深い案件だよ、サナ……。

「うーん、やっぱり、そうなっちゃうよね」

「まあとにかく、これ以上、距離を開けられないように、好感度を高めていくしかないよ。大丈夫、そんな酷いことにはならないだろうし!」

 そう美咲が言うと、サナはそうかもと、前向きにとらえることにした。

 明確な答えが出ないまま、その昼休みは終わりを告げる。

 その『分からなさ』だけが、サナの胸の奥に小さく引っかかり続けていたのだった。




 その日の帰り道。

 夕暮れの空は、ゆっくりと茜色に染まり始めていた。

 歩道橋の下を通りかかったとき、見覚えのある背中が視界に入る。

「……羅那くん?」

 呼びかけると、彼は少し驚いたように振り返り、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「サナ。偶然だね」

「うん。ちょっと、びっくりした」


 二人で歩道橋を上る。

 ここは、出会いの場所。

 何度も思い出してきた、特別な場所。


 並んで立つ距離は、いつもと同じ。

 会話も、他愛のないものだった。


「今日は会社どうだった?」

「いつもと同じ。ちょっと忙しいよ。羅那くんは?」

「そうだね。僕の方も、ちょっと立て込んでたね」


 こんなに近くにいるのに、優しい彼は触れてこない。

 一瞬だけ見せた、あの辛そうな表情が、きっと答えのような気がして。


 それに……ここは、何度も出会って、距離を縮めてくれた場所。

 だからこそ、サナはこの場所が好きだったし。


 期待、してた……?


 もうすぐ。

 もうすぐ、歩道橋が終わってしまう。


「サナ、どうかしたの? どこか、具合でも悪い?」

「ううん、何でもないの」

 にこっと、飛び切りの笑顔を見せる。それに羅那もつられて嬉しそうな笑みを見せてくれて。

 それが嬉しいはずなのに。

「それなら、良かった。今日は早く帰れるね。ゆっくり休んで、明日に備えて。またサナに倒れられたら困るから」

「もう、大丈夫だよ……」

 それにつられて、危うく自分の秘密も言いそうになったのを、なんとか堪えた。


 歩道橋の、最後の一段を降りて。

 顔を上げる。

 そこには羅那がいるけど、ほんの少しだけ先に行ってしまって。


 駅で別れて、一人で電車に乗り込んだときに、ようやくサナは気づいた。

 思わず、手すりの鉄パイプを掴みながら、ゆっくりとしゃがみ込んでしまう。


 どうして、今、気づいちゃったんだろう。

 胸を抑えて、涙が零れそうになった。


「好き」


 小さく呟いて。

 サナはようやく気付いた。


 ――私、羅那くんのことが……好き。


 もうここにはいない姿を探して、思わず涙がつうっと伝った。


 そして、改めて気づく。

 好きだからこそ、もっと近づきたいのだと……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ